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悲報

 マハールから生き埋めにされて、しばらく経った頃。と言っても、二ヶ月はもう過ぎたのだが、ちょうどそんな時。


 俺たち三人と一頭は、またサカタの町に帰って来ていた。


 カワゴエにいたミカさんには、ディオスがリチャードの事を伝えに行った。


 そのままの姿だと怪しまれる事もあるかも知れないので、変装の為にチョコレートを肌に塗って欲しいと言い出したのはディオスだったが、やって見ると凄く効果的だった。


 いい感じに肌の色が誤魔化せて、ディオスは完全に別の人になってた。チョコって、こんな事にも使えるんだなと感心した。


 ミカさんには、いつか必ず復讐しに来る、だからそれまでここに留まり、情報収集をして力を貸して欲しいと頼んだ。


 ミカさんは、協力すると約束してくれた。俺達の復讐を少しでも手伝うんだ、自分には力が無いけど、代わりに貴方達に復讐してもらうんだ、って。


 ミカさんには、こんな所に住むのは嫌かもしれないけど、我慢してもらう事になった。


 彼女には、首都での動き等を連絡して貰う事になっている。


 そして、今サカタの町に俺達が来た理由は、死んだ仲間の遺族に報告するためだ。


 俺達は、死んだ仲間の家族の家を回った。と言っても、分かっているのはモゲロさんの奥さんと子供、あとはエレンの親だけなんだけれど……


 モゲロさんの奥さんと子供に、まず三人で報告しに行った。


 子供の名前は忘れてしまったけど、奥さんの名前は確かナイア、と言ったはず。


 町の通りから一本入った路地の住宅街に入り、小さな一軒家の前で俺がドアをノックすると、そのナイアさんが出てきた。ナイアさんは年齢およそ三十位の、年上のおかみさんといった雰囲気の人で、金髪、白人。訪問時は髪を後ろに束ね、エプロン姿という格好だった。


 聞くと、子供はちょうど昼寝をしているところらしい。


「ユータロー、あんた達だけがここに来ているって事は、何か良くない話……って事だね? うちの旦那に何かあったのかい?」


「……ここでは何ですから、中でお話します」


 俺達は、三人とも中に入り、テーブルに座って話をした。


 俺達が話をしている部屋の隣にある寝室では、子供が寝ている。


 説明の上手なディオスが、ナイアさんに説明した。


 モゲロさんが死んだ事、士官しようとしたサイタマ帝国から殺された事を、ディオスは簡単に説明した。


 そしてさらに、俺達がこれからサイタマ帝国に復讐しようとしている事も伝えた。


 ナイアさんは、話の間、ずっと下を向いていた。


「傭兵稼業だ、こんな事もあるかも知れないって、覚悟だけはするようにしてたよ……でも、いざそうなるとね……ううっ……」


 ナイアさんは、静かに泣いた。


「いつか、必ず帝国の奴らに復讐し、仇を取ってみせます」


 俺がそう言うと、ナイアさんは顔を上げて手で目をこすったあと、俺達に答えた。


「そのサイタマ帝国っていうのは、大陸の南半分くらいを持ってるんだろ? あんた達まで、復讐なんて危ない事をして死の危険に遭うことは無いんだよ?」


「危険は、覚悟しております」


 軍服を脱いで今は黒のローブ姿のディオスが、それに答えた。


「それに、我々とて無謀な戦いをするつもりはありません……勝算あっての事です。今すぐには勝てませんが、時間はかかっても必ず勝ちます」


「……そうかい……。くれぐれも体には気をつけて……私達の事なら、まだ私の両親も健在だから、何とかなるよ。負けないように頑張っておくれ……」


「私達は、しばらくここを離れる予定にしている。貴女にお会いする事はしばらくの間叶わないが、また必ず戻ってくる。その時、またお会いしよう」


 リッカさんがそう言って、俺達は家を出た。


 次はエレンの実家だが、ここは元々友人であったリッカさんが一人で訪問し、俺は少し離れた物陰から見ているだけ、という事になった。


 リッカさんが家のドアをノックすると、中からエレンの母親らしい、50才くらいの女の人が出てきた。


 リッカさんの話では、エレンには両親と兄が二人居たが、父親と兄のうち一人は戦死、残った兄一人は、家を出て今何処にいるか分からないとの事。


 出てきたエレンの母親らしき人にリッカさんが何か告げると、その人は立ったまま顔を手で覆い、しばらくの間、そのままだった。


 物陰から見ている俺の胸が、ぐっと締め付けられる気がした。


 その後、リッカさんが何かを話し、彼女は顔を手で覆ったまま、わずかに頭を下げて頷いた様子だった。


「……行こう」


 俺の所まで戻って来たリッカさんは、そう言って俺の先を歩き始めた。


 こうして、俺達は仲間の家族に悲報を伝え、このサカタの町も立ち去ったのであった。

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