チョコ魔法を見せる
よし、俺のチョコ魔法、サイタマ帝国の皆に見せてやろう。
「私のチョコ魔法は、手からチョコを出す事が出来ます。味も調整することが出来まして、凍ったチョコを出すことすらも可能です!」
「……」
うん? 俺の言葉に……特に何の反応もないな……
少ししてから、ケンイチが口を開いた。
「……うむ、で、それは食べる以外に何か使い道はあるか? 例えば戦争で、戦いの役に立つような使い方は出来るか、と言うことだが……非常時の食料の代わりになる事の有用性は、余も十分承知しておる」
「はい! この魔法で敵を攻撃することも可能です!」
張り切って答える俺。
「ほう……出来るか? ならば、試しにその鎧を攻撃してみてくれ」
ケンイチは、部屋の壁のそばに立たせて飾ってある、鎧を指さした。
よし、俺のチョコ攻撃魔法を見てもらおう。
「分かりました」
俺はそう言うと、右手の人差し指で狙いを付けた。
そして、軽く集中すると……人差し指の先から、チョコの弾が、的である鎧に向かって飛び出した。
これが、俺の攻撃魔法。豆鉄砲ならぬ、チョコ鉄砲だ。実はこの魔法を「黒い稲妻――ブラック・サンダー」と名付けているのは、みんなには内緒だ。
ちなみに、チョコは凍らせて固くしてある。
俺が撃ち出したチョコ弾は、鎧の頭部に当たり、ガァン! と大きな音を立てて、倒れてしまった。
「ふむ……見てみよ」
ケンイチが言うと、近くの近衛兵が走り寄り、倒れた鎧の頭部、つまり俺の攻撃が当たった箇所をチェックした。
鎧の頭部は、弾の当たったところが、一センチほどへこんでいた。
近衛兵が、ケンイチに答える。
「……銃よりも多少、威力があるかと。兜をつけていても、衝撃で怪我を負わせる程の攻撃力はあると思われます」
ふっ、俺のチョコは鉄砲よりも強いぜ! お褒めの言葉を期待しつつ、自慢げに腕を組んで立つ俺。
「ふむ……」
ケンイチは、全く表情を変えない。
「なるほどな……二人とも、近う」
そう言うと、ケンイチは立っていた二人、マハールとメイファを呼び、三人でヒソヒソ……と話し始めた。
何だろう……この反応。
俺の横にいるアドンも、黙って事の成り行きを見守っている。
少し話すと、マハールとメイファは、また元の位置に戻った。
そして、またケンイチが口を開く。
「お前の力については、だいたい分かった。次に、二人のユニコーンナイトとは、そこに居る女二人で間違いないな?」
「はっ、私共でございます。」
リッカさんが、ケンイチの問いかけに答える。
「ふむ……なるほど、ユニコーンナイトは、魔法もある程度使え、戦いもこなすと聞いておる。どうだ? 間違いは無いか?」
「はい、そう自負しております。簡単ではありますが、攻撃魔法、回復魔法を使えます」
「なるほどなるほど、有能だな……後は、魔族と、騎士、アーチャー、ソルジャー、それと……ふむ、男の魔術師か」
男の魔術師って言われてるのは、多分ディオスだな。
「はい。ゴーレムマスターで御座います。私は魔力が多いため、このような職についております。」
ディオスが、胸に手を当て、直立不動の礼儀正しい感じで答えた。
「ふむ……なる程、分かった。お前たちの事については、今から協議する。夜には担当の者から回答させる事になるであろう。まずは、ご苦労であった。ひとまず下がり、返事を待て」
皇帝・ケンイチのその言葉で、横の近衛兵が動き、近くの扉を開ける。退場を促されているのだ。
「かしこまりました。これにて失礼致します」
リッカさんが礼をして、謁見の部屋から立ち去るのに合わせて、俺達も同じようにまねをしてから、ぎこちなくリッカさんについて行って部屋を出た。
隣の控室に戻り、ひとまず皆一息つく。
「ふう……感触はどんな感じかな? リッカさん、どう思う?」
ずっと黙っていたリチャードが、ようやく話せたと言わんばかりに口を開いた。
「そうだな……まあ、ここでは何だから、また後で話そう」
近くに人もいるしな。ここであまり話さないほうがいいとのリッカさんの判断だろう。
さて、そんな話をしているうちに、お城の人が俺達八人に近づいて来た。何か用があるみたいだ。
「みなさん、謁見お疲れ様でございました。暫くしましたら連絡したいので、どなたか一人、城内でお待ち頂けますか? 残りの方は、ご一緒に待って頂いても結構ですし、城外に出られても構いません」
「ならば、私が残ろう。皆はどうする?」
リッカさんが、まず答えた。続いて、バッツさんも答える。
「俺も一緒に残ろう。皆は宿で待っててくれ」
と言う事で、俺たち一行は、リッカさんとバッツさんのコンビを残し、一旦城の外に出て、宿屋で二人の帰りを待つことにした。




