帝国の手前にて
俺たちは、サイタマ帝国の首都、カワゴエにほど近いとある町まで到着した。今日はここに泊まり、明日の朝出発して、明後日にはカワゴエに着くことが出来るだろう。
食費もだいぶ節約できたので、今日は宿に泊まろうということで、いま、その宿の一階、食堂のテーブルで俺は今ひと休みしているところだ。
「じゃ、先に休んどくからナ、ユータロー」
「では、私も。お先に失礼しますよ」
さっきまで一緒にいたべミオンとディオスも、もう休むというので2階の部屋に上がって行った。べミオン、言葉の発音が大分上手くなってるな。
宿は、男女で別々に部屋をとった訳だが、バッツさんとリッカさんは、別料金を払って、二人だけで泊まる。もう二人は……何と言うか、大人の付き合いをしてるらしいよ。
さっき見てたけど、「まあ、貴方がそう言うなら……」と言って頬を赤らめていた、あのリッカさんの顔は、普段の凛とした感じじゃなくて、何というか……女の顔だったね。
そして今、テーブルには俺だけが一人残って座っている。遠くのテーブルで話をしている人たちが数人いるが、離れてるので何を言ってるのかは分からないくらいだ。
さて、俺もそろそろ寝ないとな……と思っていた時、誰かが2階の階段から降りてくるのが見えた。……エレンだ。
エレンは俺を見つけると、ニコッと微笑み、俺のいるテーブルにやって来て、俺の横に座った。俺も、エレンに笑いかける。
少し間を開けて、先に話しだしたのはエレンだった。
「ねえ、ユータロー」
「うん、どうした? 何かあった?」
「いや、そんなんじゃないんだけどね……」
エレンは少し考えて、また口を開いた。
「あの……私たちっての今の状態って、どうなのかな」
む……これは……何か、気をつけて話さなければいけないやつか? 変なことを言うとまずいな……よく考えて物を言わないと……
「え……それは……つまり……」
「私達って、何なんだろう……ねえ、ユータロー、あなたは今どう思ってるの?」
「仲のいいお友達、ってところかな……」
この答えでどうだ……? 付き合ってる、って言ったほうが良かったか? いや、やめとこう……
エレンは、軽くため息をつく。……俺の答えでは不満だったのだろうか……
「まあ、そうね。私達は仲のいい友達だと思うわ。……初めて会ってから、もう3ヶ月くらいになるよね」
「うん……そうだな。何か、もっと長い付き合いのような気がするな、俺は」
ここまで答えて、俺は少し心配になる。……もしかして、俺と一緒に居てもつまらないのかな……
「エレン……俺と一緒にいても、その……あんまり楽しくないかな?」
えっ? みたいな顔になって、エレンは首を横に激しく振った。
「いやいや、なんでそっちになるの? そんな事無いから! ユータロー、あなた、もっと自分に自信持ったほうがいいわよ!」
「ああ、なら良かった。何だか、そんな感じがしてね」
まあ確かに、俺はエレンに釣り合ってる自信は無いなぁ……
まじまじとエレンの顔を見てみる。……うん、美人だ。どう見ても美人だ。
小麦色の、日本人が軽く日に焼けた感じの肌の色。
長いまつげ。ポリネシア系にありがちなハッキリとした二重まぶた。茶色の瞳。
ちょつと小さめのかわいい鼻。ちょつと厚めの唇。
頭の中央で分けて、首の下あたりまで伸びた茶色の髪は、細かいウェーブがかかっていて、首筋に髪がいたずらっぽく流れている。
くっ……非の打ち所がない。惚れてるからそう見えるだけなのかな……いや、これは俺が惚れてるからではない。エレンは美人。これは大宇宙の真理と言っても、過言ではあるまい。
俺の目線を、少し下に落とす。
今、エレンは鎧を外しているので、寝る前の比較的楽な感じの服装だ。なので、普段は鎧で隠れているが、今のエレンは身体のラインが分かりやすくなってる。
この人……(鎧を)脱いだら、凄いんです……。
胸は結構大きいし、何より腰のあたりから太ももの辺りのムチムチ感……鍛えた体の締まった腰の感じとのアンバランスさが……ああ、凄いです……
うん、完璧です。上から下まで、全く非の打ち所が有りません。きっと、エレンは神の作った最高傑作に違いない。
「ちょっと……どこ見てるの? こっちは真面目に話してるのに……」
そんな俺に、はぁ……と呆れた顔をするエレンであった。




