南のサイタマ帝国を目指す
ここ、大陸の北の端にあるヤマガタ……いや、ニイガタ王国からは、大陸の南にあるサイタマ帝国まで距離にして約2,000キロ、歩いて2ヶ月はかかる距離だが、途中には町もあり、補給は問題ない。お金も傭兵での報酬があり、もともとリッカさんとエレンさんは貯金もあったので、そこまでの移動は十分可能だ。
モゲロさんの家族と、リチャードの奥さん――つい最近、結婚したばかりの彼女ね――の問題があったが、モゲロさんの家族は、とりあえずサカタの町で待つことにしたらしい。モゲロさんがサイタマ帝国で無事士官できたら、引っ越してくるんだって。
で、リチャードの奥さんは、リチャードに付いてくるんだって。まあ、遠くまでの移動だから、また会うまでだいぶかかるし、新婚だからね。
と言うわけで、目の前にいるのが、ミカさん。リチャードの奥さんだ。
「今回は、一緒にお世話になります。よろしくお願いします」
そう言うミカさんに、リッカさんが答える。
「こちらこそ、よろしく頼む。貴女にも遠くまで旅をさせる事になってしまって、こちらこそ申し訳ないくらいだ」
これで、移動はリチャードの奥さんのミカさんも入れて、9人になるな。ミカさんと会うのは、リチャードとの結婚式以来だ。可愛い感じの、茶色というか、栗色というか、そんな感じの髪の、優しそうな人だ。笑顔が、どことなくふんわりとしている。
俺も、早くエレンとこういう関係……嫁とダンナになりたいです。はい。
そして、数日後には、出発の準備が一応整った。
リッカさんとエレンのユニコーンに並んで、クラスチェンジしたバッツさんが馬に乗っている。バッツさんは、「リッカが馬なのに俺が歩きだと格好がつかない」という理由で、レベルが上がった際に、騎士にクラスチェンジしてしまった。
ふわふわと飛んでいるべミオン、そしてゴーレムの肩に乗っているディオス、そしてもう一方の肩に乗せてもらっているモゲロさん。ちなみに、モゲロさんは弓を鍛えると言う事で、アーチャーにクラスチェンジした。
リチャードはバッツさんの馬に、そしてミカさんはリッカさんのユニコーン、そして俺は……エレンのユニコーンに乗せてもらえたら良いんだろうけど、このロッキー2世のやつ、エレン以外は誰も乗せたくないらしい。
リッカさんのロブ君は聞き分けが良くて、ミカさんを乗せてくれるのにな。
「ユニコーンに乗せてもらうのは初めてです!」とかミカさんも言ってるな。嬉しそうだな。俺も乗りたいな、くそっ。
「すいませんね、私がもう一体ゴーレムを出せたらいいんでしょうけど、ゴーレムマスターになってまだ経験が浅くって」
ディオスも、そんな感じで申し訳なさそうにしてる。
仕方ないので、誰か一人歩くことにして、俺とモゲロさん、リチャードで時々交代しながら行くことにした。
そんなこんなで、なるべく経費を抑え、食料はなるべく現地調達を心がけつつも、行く先々で補給する、そんなスタイルでの移動が始まった。
町から町へは、歩いて2日、あるいは3日ほどかかることが殆どだ。だが、食料に余裕のあるときには町には寄らず、そのまま次の町へと向かう。というのも……
「ユータロー、今日もチョコ出してくれる?」
エレンから言われて、ハイハイとチョコを出す俺。そして、皆に今出したそれを渡す。
そう、俺がチョコを出せるので、毎日ひとりあたり板チョコ一枚位は食べることが出来るのだ。おかげで、うちの隊は食料的には大分金を節約できている。
まあ、チョコだけ食べて行く事はちょつときついけどね。でも、糖分は減らしたりして、出来るだけ栄養バランスを考えている。その気になれば、戦争時には俺たちの隊はチョコだけでしばらく戦い続けることも出来るんじゃないかな?
それに、いざとなればココアも出せる。水分を取ることも可能なのだ。うちの部隊は、遭難とかしても餓死というのはほぼ無いだろう。
そしてさらに、俺の魔力は日々少しずつ多くなっている。この旅の間にも、かなり出せるチョコは増えていくだろう。先が楽しみではある。
こうして俺たち8人とミカさんは、チョコを頬張りながら南へと旅を続けた。




