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強国・サイタマ帝国

 傭兵団を設立してから、はや一ヶ月が過ぎた。


 傭兵団の名前は、いまだにリッカ団(仮)のままだ。もしかすると、このままずっとこの名前で通すのかも知れない。


 この間、俺達は近隣の国で起こっている小さな戦に参加して、一度戦いに出たが、みんな無事で帰って来た。あの負け戦に比べたら、全然大したことはない戦だった。


 それでも、敵との戦いはそれなりにあったので、ソルジャーのレベルは6に上がっている。


 レベルが上がると、全体的にパラメーターが少し上がるようだ。魔力も上がっているのが、チョコを出す量の変化で分かる。今の俺は、板チョコにすると多分10枚以上はチョコを出せるようになっている。ココアなら……だいたい1リットルくらいは出せるんじゃないかな。


 魔力は、使い切ると上がっていくので、チョコはどんどん出すようにして、わざと魔力を使い切ってしまうようにしている。


 さて、今日は休みのはずなのに、何故か昼からリッカさんに呼び出され、みんな酒場に集まっているところだ。最初から酒場で飲んでいたバッツさんと、俺達より前に酒場に集合したディオス、べミオン、そしてさっきやって来た俺とエレンが、いま酒場で皆が来るのを待っているところだ。


 今日、俺とエレンは一緒に買い物に行く約束をしていたので、俺は少し残念だ。買い物に行くのを予定変更して、酒場に二人で来たけど、やっぱり買い物したかったなあ……


 そんな俺に、エレンは「よしよし、また今度一緒に行こ? ね?」と、肩を叩いて慰めてくれている。


 俺とエレンは、結構仲良くなっている……と思う。けど、あの二人ほどじゃあ無いよな……


 そんな俺の横で、ディオスとべミオンは、二人で何やら魔法関係の話をしている。実験大好きべミオンと、研究大好きディオスの二人はどうもウマが合うようで、会えばよく魔法の事を話している。俺のチョコ魔法の事も、この二人は興味深くいつも観察している感じだな。


 横の二人を見ながらそんな事を思っていると、リッカさん、そしてリチャードとモゲロさんが、何やら相談しながら酒場に入ってきた。


 既に酒が入っているバッツさんが、リッカさんを見つけて、機嫌良さそうに手を上げた。


「おう、こっちだ、こっち。遅かったからもう先に飲んじまってるぞ?」


 これはある意味嘘だ。バッツさんは、もうだいぶ前から飲んでたからな。リッカさん達は確かに少し遅れたが、仮に遅れてなくてもバッツさんは酒を飲んでいただろう。


 そんなバッツさんに、リッカさんはしょうがないなと言う感じで少し笑って答える。


「全く……昼から飲むなと言ってるのに……」


 そう、実はこの二人、付き合い始めたのである。しかも何故か超ラブラブらしい。何故、クラスの学級委員みたいな性格のリッカさんと、ちょいワルおやじみたいなバッツさんが合うのか、よく分からない。わからないけど、実際二人は最近付き合い始めている。


 後から入ってきた三人も席に着き、これで八人、全員集合だ。


 エレンが、リッカに尋ねる。


「何か急に大事な話があるって言ってたけど、どうしたの? 士官したい先でも決まった?」


 俺たちは、どこかいい王に仕えたいと言うリッカさんの志を尊重し、支持している。なので、この町に知り合いの多いリチャードやモゲロさんが、いろいろな国の王の事を人から聞いたりして、情報を集めているところなのだ。そして、いい王がいたら、皆でそこに士官に行く事にしているのだ。


「その件で皆に相談しようと思って、今日は集まってもらった。大陸の南、サイタマ帝国についてだ」


 サイタマ帝国か。


 何でも、アドンからの話も合わせて聞くと、南の方でかなり勢力を拡大している国らしい。すでに近隣のいくつかの国を攻め落とし、強大な軍事力を誇るんだとか。


「サイタマ帝国の王・ケンイチは、何やら物凄い力を持つ男らしい。そして、その配下にも、特別な力を持った将軍が居て、向かう所敵無しとの話だ。


 また、強い者や、特別な力、知識などを持つ者は、積極的に取り立てているとの情報を得た。私も一度会ってみたいと思っていた所だったのだが、この度、リチャードの知り合いがサイタマ帝国の兵士として働いている事が分かり、その者の紹介で士官の話が来た。我等8人に……特に、我らユニコーンナイトと、ユータローに興味があるらしい」


「こっちからの情報も、似たような感じだ」


 あくまでもダンディな声で、モゲロさんも話す。


「ケンイチとか言う王は、身分や出自などにこだわらず、役に立つ者、有能な者を好むらしい。実力主義って事なんだろうな」


 そして、またリッカさんが口を開いた。


「私としては、まだ不確定な情報が多いが、まずはサイタマ帝国に行ってみようと思う……みな、どう思う?」


「異議なシ」


 べミオンがそう言うと、残りの者達も同じ気持ちなのであろう、黙ってリッカさんを見て、うなずいた。


 こうして、俺たちは南の方、サイタマ帝国へと向かう事になったのであった。

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