この世界にはどんなやつがいるのか
何はともあれ、目的であったユニコーンを無事確保出来たので、俺たち三人と新たに加わった一頭で、再び出発地点の町外れまで戻ることになった。
エレンはそこから王都へ向かうらしい。
「町外れまで戻ったら、そこで解散にしましょう。報酬もそこで払うわ。とにかく、早く見つかって良かった。これなら食料も買い足さなくて大丈夫ね」
ユニコーンが見つかって上機嫌のエレンの話だと、サカタの町から王都までは、歩いて2、3日位で、馬やユニコーンなら1日で行けるらしい。
俺達はとりあえず、今日はここでユニコーンと時間をかけて信頼関係を作り、明日の朝から森を出ることにした。
ユニコーンの頭や背中を撫でるエレンと、機嫌良さそうに撫でられているユニコーンは、なんだか見てると絵になり、背景の森もいい感じだ。
「君の名前は何にしようかなー、明日までに考えとこっと。これからよろしくね! ユニコーンさん!」
そうエレンから言われて、「ブルッ」と答えるユニコーン。どうも気のせいか、このユニコーン、ドヤ顔をしているように見える。……気のせいだろうな。うん。
「ナラ、ココデ野営の準備ダナ。木の枝デモ集めテコヨウ」
そう言ってふわふわと低空飛行で木の枝を拾いに行くべミオン。俺も別方向に枝拾いに行く。
森の中と言う事もあって、焚き火をするのに良い木の枝を簡単に集める事ができ、日が暮れる前には、焚き火を囲んでのんびり輪になって、ゆっくり休む事が出来るようになった。エレンの新しい相棒ユニコーンも、近くで休んでいる。
さて、夜になって、魔力が多少回復したので、チョコを出そうとした時、べミオンから提案があった。
「ナア、ユータロー、ココアがダセタんナラ、冷タイチョコもダセルンジャナイカ? ヤッテミヨウゼ」
べミオンは実験大好きだな。好奇心旺盛と言っても良いかも知れない。そうだな、やってみよう。
「分かった、やってみよう。じゃ、行くぞ」
そう言って俺は、手に精神を集中させる。イメージは冷たいチョコレートだ。そして、手から出て来たチョコは……冷たかった。成功だ。
「オッ、出来たカ。ドレドレ、見せてクレ」
べミオンに冷たいチョコを渡すと、べミオンはソレを口に放り込んで食べてしまった。食うのかよべミオン。
「オオ、冷たイ……チョット凍っテイルな。冷たいチョコトイウノモオイシイナ!」
そりゃあ良かったな、おい。そんなべミオンを尻目に、もう一度冷たいチョコを出してみる。……うん、冷たい。温度を調整出来るという事がこれで分かった。
もう一回出したチョコは、エレンにも試食してもらった。エレンも、「あっ、冷たい! いいねこれ!」とか言ってる。かわいいなエレン。早く友達からステップアップしたいです、はい。
その夜、皆が寝てる時を見計らって、アドンを呼び出していくつか質問してみた。
「なあ、アドン」と小さな声で呼びかけると、ポン! とアドンが出てくる。
「どうしやした? 旦那」
「俺みたいに異世界から来た奴って、この世界に何人くらいいるの?」
「そうでゲスね……あまりヒントになる事は言えないでゲスが、まあそのくらいの質問なら問題無いでゲスかね……ま、5人はいない、とだけ申し上げておくでゲス」
そうか……他にもいるんだ。どんな奴なんだろう。
「そいつらは、やっぱり何か凄い特別な力みたいなのがあるのか?」
「はい。そうでゲス。どんな力かまでは教えられないでゲスよ。ヒントになってしまうでゲスからね」
「ああ、そうだな。わかった。会った時のお楽しみってことだな」
「……旦那。味方として会うか、敵として会うのか、わからないでゲスからね? 敵なら要注意でゲスからね?」
「うん、分かった。気を付けとく。じゃあな、アドン」
「また何かあれば、いつでもお呼び下せえ」
そう言うと、アドンは現れた時と同じように、ポン! と消えていなくなった。
どんな力の持ち主なのかな……他の奴らって。会うのが楽しみだ。出来れば味方として会いたいな。
そんな事を思いながら、俺は目を閉じて休んだのであった。




