表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/60

ゲットした

 俺達の住んでいた、というか駐留していたサカタの町から南に一日歩いた位のところに、そのユニコーンの住む森はあった。エレンの話では、他にもいくつかユニコーンの住む森は国内にあるが、町から一番近い森はここだとの事。


「さ、ここから先は私がユニコーンを見つけないとね。二人はとりあえず、近くでのんびり過ごしてて。やることは無いから」


 とエレンから言われたので、べミオンと一緒に近くに座って、のんびりエレンを見守る。


 森の方に目を向けると、あ……いた。ユニコーンだ。普通に歩いてるな……


 うじゃうじゃいる、と言うほどでは無いけど、それなりに森の中をユニコーンが歩いてる。これは、あれだな。奈良に修学旅行で行ったとき、鹿が道を歩いていたので少し驚いた、あの感じだ。


「あの中から、私と相性のあう子を探すのよ。ここからが少し時間掛かるけど、二人とも待っててね」


 そう言うとエレンは、近くを通るユニコーンを観察する。相性のいいユニコーンがいると、向こうから近づいてくるらしい。で、お互いに良いと思ったら、めでたくコンビ成立、というところか。なるほど。


 待ってる間、こっちも暇なので、べミオンと話をする。大声だとユニコーンが嫌がるので、声の大きさには注意だ。


「なあ、べミオン、人間と魔族って、結婚したりするのか? 子供って出来るのか?」


 俺は、昨日から疑問に思ってた事をべミオンに聞いてみた。どうやらべミオンは、人間の女に恋愛感情が無いみたいだったからな。確認だ。


「子供ハ出来る。出来るガ、魔族ガ人間を好キニナルコトハマズ無い。別ノ種族ダカラナ? 俺はアリエナイ」


 あ、そうなのか。でも、俺みたいな人間の男が、魔族の女の人を好きになる事は有るのでは……と思ってると、


「ダガ、人間ハ魔族ヲ好キニナルコトが有る。全ク、人間ハ節操ガ無イと言ウカ、変態とイウカ……殆どドンナ種族デモ、必ズ好きニナルヤツガイル。人間と魔族デ子供ガ出来たラ、間違いナク人間ガ魔族ニホレテ、魔族ガ押シニ負ケテ……トイウ組合セダ」


 なるほど……分かる。俺も人間は正直、変態だと思う。


 俺達が話をしながら待っていると、一頭のユニコーンがエレンの近くにやって来た。


 おっ……いい感じなんだろうか……? エレンは、両手を軽く広げて敵意が無いことをアピールしつつ、ユニコーンが近くまで来るのを待ち構えている。


 そして……ユニコーンは、エレンの近くまで、もうすぐ手が届くくらいまでの距離に近づいて来て……一声、ブルルッと言った後、プイと向きを変えて行ってしまった。


「ああ〜だめかぁ。角を触らせてくれたらOKのしるしなんだけどな〜」


 そう言ってエレンが悔しがる。


 なるほど、こんな感じで、基本的には相手から近づいて来てくれるのを待つんだな。


 その後、しばらく待っていたが、エレンにちょっと近付いてくるやつはいても、角を触らせてくれるやつはいなかった。まあ、相性の良いユニコーン探しと言うのは、こういうものらしい。


 俺もべミオンも退屈してしまい、近くの木の下で座り込んでぼんやりしていた時、それは起こった。


 一頭のユニコーンが、エレンに近づいて来て、そこから逃げない。


 いけそうなのか? これはいい感じなのか? 


 エレンも、「よーし、いい子、いい子……」とか言いながら、そーっとユニコーンに近づいて、手を前に出す。エレンが近づいてもユニコーンは逃げない。ユニコーンの方も、角を前に出す。


 おお、これは……


 そう思った瞬間であった。


「ブルルルッ!」と叫んだものがあった。


 慌ててそっちに目を向けると、そこにはもう一頭のユニコーン。ちょっと興奮気味なのかな? 前足で地面を蹴る仕草をしている。


「ブルルッ、ブルッ、ブルルルン!」


 なんか言ってるのかよく分からんが、何かを主張して、そのユニコーンは、エレンの近くにやって来た。そして……エレンの前までやって来ると、頭を下げて角を突き出したのだ。


「えっ? え? これって? なに? 2頭同時?」


 おおっ? これは……あれか? あのあとから来たユニコーンは、あの感じか? ちょっと待ったぁ! 的な感じで来たのか?


 まるで二人の男から同時に告白されたかのような雰囲気で戸惑うエレン。そして、目の前には同じような姿勢で、お願いします! と言わんばかりに角を前に出す2頭のユニコーン。


「ええっ……どうしよう。私選べないよ……どうしようユータロー!」


 これは、あれか? 俺もあそこに並ぶべきなのか? 俺も、お願いします! って言いに行くべきなのか? 


 俺がそのような事を考えていると、べミオンが冷静にエレンにアドバイスを送る。


「チャント選べ。ヨクミテ決メろ。ソレがアンタノ責任だ」


 そ……そうだった。俺は一体何を動揺していたんだ……


「ええっ……そんな事言われても……」と、同じく動揺しているエレン。だよな、こんな事、超珍しいんだろうな。


 しかし、このままでは駄目だとエレンも理解はしており、一生懸命考え始める。そして……


「強くて、たくましいほうが良いけどな……」と、エレンがボソリとつぶやいたのを、2頭のユニコーンは聞き逃さなかった。


 キラッ! と目を光らせるユニコーン。そして向かい合うと、2頭は激しく戦い始めた。


「ああっ、待って! ちがうから! そういう意味じゃないから!」


 エレンの叫びも虚しく、2頭は激しく戦い続ける。


「やめて! お願い! 私のために争わないで!」


 くっ……そのセリフ、女なら一度は言ってみたいセリフだろうな……やるな、エレン……


 そんな事をふと考えてしまった俺だが、そんなうちに決着は着いたようだ。どうやら、後からちょっ待ったコールで来た方が勝ったみたいだな。もう一頭は走って逃げてしまった。


「え……じゃあ、えーと……お願いします」


 そう言ってエレンが角を手に取ると、そのユニコーンは、嬉しそうに「ブルルルゥ!」とか言いながら、喜んでいる様子だ。


 とにかく、色々あったが、幸いにも初日の昼過ぎには、ユニコーンをエレンはゲット出来たのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ