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 和臣さん、それはどういう意味なのですか。

 誤解しそうです。やめてください。

「世界中が段差だらけなら、私は眼鏡をはずしたりしませんよ……」

 お腹でクロスされている和臣さんの手の上に、手を重ねる。

「助けてくれて、ありがとうございます……」

 そっと和臣さんの手を握り、持ち上げて、私の体から離す。

「帰ります。さようなら……」

「あ、うん、気を付けて」

 和臣さんの小さな声。

 もう一度頭を下げ、今度は慌てずゆっくり歩いて駅に向かいます。


 土曜日、学生時代の友達4人集まって飲みに行きました。

 久しぶりにコンタクトをはめて、自分で化粧をします。……いつものメイク。いいえ、いつもと少し違うメイク。

 28歳の女子会。

 彼氏がいるのは二人。

 彼氏がいないのは二人。

 普通です。私、別に普通です。彼氏がいないなんて変ではありません。

「あれ?結梨絵、化粧変えた?」

 長い付き合いの友達にはわかるようです。

 何度か菜々さんにメイクしてもらったので、勉強になりました。もともとのメイクに、少しだけ菜々さんの技法を取り入れています。

「なんかかわいくなったじゃん。好きな人でもできた?」

 長い付き合いの友達です。隠し事はできません。

「彼女がいるっぽいので、ブレーキかけました」

「え~!結梨絵は昔から真面目だもんなぁ。彼女がいたって、片思いするのは別にいいじゃん」

「いやいや、片思いとかすすめないの!別の人、誰か紹介しようか?」

「あ、二人で婚活パーティーとか行ってみたら?」

 彼氏のいない二人。28歳の二人。友達が真剣に提案しています。

「そうですよね……」

 女子高生じゃないんですもん。片思いをずるずるしていられるような年齢でもありません。

「まー、飲もう、飲もうよ!」

「うん、飲む!」

 

 日曜日は二日酔いでダウンしていました。

 おかげで、うだうだと考えるよりも苦痛からのがれることに意識がいっていたので助かりました。


 月曜になりました。

 ラインが届いています。

 菜々さんです。

「どうだった?」

「素敵な店でした。食事もおいしかったです」

 返信を返すとすぐに既読になります。

「あいつ、失礼なことしなかった?」

 ……菜々さんからのメッセージ。

 失礼なことってなんでしょう?

 なぜ、そんな聞き方をするのでしょう?

 他の女性に悪さしたかどうか探りを入れているのでしょうか?

 ……菜々さんはそんな人じゃない。和臣さんもそんな人じゃない。……わかってるのに、分かってるのに……。

 マイナスの方向にしか頭が働きません。

「いいえ、今回もごちそうになってしまいました。申し訳ないです」

「あー、気にしない、気にしない、あいつが行きたいって言った店に、付き合ってあげたんだからって考えればいいんだよ」

「いえ、でも……私も楽しみましたし」

「そっか、楽しかったんだ。よかった!」

 ……。

「今度は菜々さんが和臣さんと行けるといいですね」

 と、メッセージを送って、すぐにラインを閉じます。

 通知音が鳴るけれど、読まずにスマホをカバンの中に入れました。

 準備をして仕事に行かなければいけません。


ご意見

【白井さんのしりとりが、食べ物ばかりな件……】

【ちょっ!白井さん、俺、東海勢じゃないけどわかるよ。なんで白井さんは分かんないのだろう】

【赤だしって、違う、違う、東海勢の味噌って、そっちじゃない】

【白井さんに権限がないだとぉ?】

【アルバイト誰か応募してやれよー。白井さん困ってるだろ】

【白井さんの返信見ないと寂しいな。なんかweb小説の更新待ちしてるみたいな気持ち】

【忙しくて返信書けないなんて、早くだれかアルバイト応募してやれよ!】

【まさか、白井さん、しりとりの修行にも出たんじゃ……】

【豆腐、甘納豆、味噌……白井さん、豆に振り回されてるな】


「おはよう、白井ちゃん。掲示板の横見てごらんよ」

 出勤すると、チーフに声をかけられました。

「掲示板に何かあったんですか?」

 急いで着替えて掲示板を確認する。

 隣には、大きなシールを貼る方式のアンケート用紙が貼られていました。

「クリーニングのやつだろう、あれ。学生相談室も、かなり本気で学生の意見を取り入れて計画するみたいだね」

「そうですね」

 もう、作ったんですね。

 黒崎さん、本気のようです。

 ……なんて、私が黒崎さんのことを考えていたのが悪いのか……。


ありがとうございます。

明日より2話更新します。

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