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【お褒めのことば、ありがとうございます】


 これだけでは寂しいでしょうか?

 チーフに見せられたご意見用紙の画像を思い出す。デコ……。

 無理ですね。せめて、絵でも描いておきましょうか?

 こういうときは、えっと、そう。誰が見てもわかりやすく、不快な思いをさせにくい猫にしましょう。

 おしまい。

 ……それにしても、面白いこと、私書いてないんですけど?なぜ、面白いと褒められたのでしょう?

 大学への申し送りは必要ないですね。


 終わりです、終わりました!結構時間がかかってしまった。時計を見ると、残業時間31分。

 あー、サービス残業ですね。

 猫の絵をかくのが余分だったようです。私の判断ミスです。

 さて。

 食堂の掲示板は大きい。昨日張った用紙の隣に今日の分を張り付けていきます。

 それから、学校の申し送りを、学生相談室へ出しておしまいです。

 ……ノックすると、今日も留守。

「もしかして、相談室は食堂と営業時間かぶってるのでしょうか?あ、相談室は営業とは言わない?」

 どちらにしても、下手に顔を合わせて会話するよりも、箱に用紙を入れるだけで済むのでありがたいです。

 けど、学生には不便ですよね?

「授業終わってから相談したい人はどうするんでしょう?」

 首を傾げる。


 あとは、職員用出入り口でタイムカードを押しておしまい。

「あ、昨日の!」

 へ?

 呼び止められて振り返ると、髪の毛の茶色くてくりんくりんの女学生さんがいました。

「ああ、昨日はありがとうございます」

「ちょうどよかった、これから暇?」

 ちょうどいい?

「暇といえば、暇ですが……」

 仕事は今終わりました。今日はタイムセールもありません。

 帰って夕飯を作って食べて風呂入って寝るだけですから。

「じゃぁ、ちょっと付き合ってくれない?メンバーが一人足りなくて……急に一人いけなくなっちゃったんだけど、代わりの子が誰も捕まらなくて……」

「メンバー?」

 そういえば、昨日サークルのチラシをもらった。

 よく見ずにそのまま折りたたんで、チラシで作れる水切り用の生ごみ箱を作ってしまいました。

 ほ、ほら、私、学生じゃないですからね……。仕方がないと思うのです。

 サークルのメンバーが足りないということでしょうか?

「あの、私は学生じゃなくて、この大学で働いているので、ごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げる。

 昨日道案内してもらった恩はあるけれど、大学生の代わりは務まらない。

「え?あ、そうなの?」

 女学生さんが髪をさらりと落としながら、頭を横に傾け、私の姿を足先から頭の上まで眺めた。

「えーっと、もしかして年上なのかな?それとも同じくらい?あ、私、大学院の1年生だから、23歳って言いたいところだけど、留学で1年休んでるからもう24歳なんだ。と、話してる暇もないや。別に学生限定ってわけじゃないから全然大丈夫、時間があるなら、頼めないかな?」

 24歳ですか。

 そうか。院生もいるから、そういう子もいますね。あ、時々留年をギリギリまで繰り返している学生さんもいるようですから、同じ年くらいの学生さんもいたはずですね。

 でも、目の前の女学生さんよりは、私のほうがずいぶん上なのですが、そう見えないのでしょうか?

 ノーメイクだから?よく見れば眼尻の皺も、肌のハリも……。

「何を、ですか?」

「あ、そっか。言ってなかったね。飲み会なんだけど、メンバーが足りなくて」

 飲み会?

「もしかして、合コンですか?」

 今日の私もいつも通り仕事スタイルです。

 ノーメイクに、髪の毛はひっつめていて、黒ぶち眼鏡。それにジーパンにTシャツに黒のでっかいリュック。

 男受けから目いっぱい遠い恰好だっていう自覚はあります。

 なんで来たの?って言われるレベルです。

 引き立て役として連れていきたいのでしょうか?

 女学生さんは、とてもきちんとオシャレをしています。

 茶色の髪はゆるふわカールで毛先が揺れていてかわいい。

 大きな目をより大きく見せるアイラインにもにじみがなくきれいです。

 眉もしっかり整えてあるし、赤すぎない赤い口紅は艶があります。

 もともときれいな顔立ちに、さらに化粧で何ランクもきれいになってるという感じ。女の私から見てもかわいいです。

 引き立て役なんていなくたって、十分だと思うのですが……?

「そうなの!相手は社会人でえっと、飲食代は持ってくれるから、座っていてくれるだけでも助かるの!」

 飲食代タダ?

「もともと男5人女4人と人数に差があったのに、さらに減って、女性3人とかじゃさ、さすがになんていうか……」

「わかりました。昨日案内していただきましたし、いいですよ。時間もありますし」

 1食分、食費が浮く!

 ラッキーです!

「ほ、本当?やった!名前なんていうの?私は菜々子。菜々って呼んで!」

「菜々さん……ですか。私の名前は」

 白井です。

 が、この場合は下の名前で自己紹介するほうがよさそうですね。

「結梨絵です」

「結梨絵ちゃんね!じゃぁ、さっそく準備しようか」

「準備?」


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