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「ディナー?ですか?」

「そうそう。コースが2人からしか予約できなくて、どうしても食べたいんだけど、付き合ってもらえないかと」

 ああ、ありますよね。

 コースメニューって、時々2人から予約可みたいなもの。

 でも、なぜ私を誘ったのでしょう?

 菜々さんでしたら、他にお友達……あ、もしかして学生さんのお友達は誘いにくいお値段なのでしょうか?

 2000円くらいまでのコースであればいいでしょうが、5000円レベルになると誘いにくいですよね。その店、私は社会人です。

 ……でも、5000円はいいですが、万単位のコースになると、私もちょっと厳しいのです……。

「カジュアルなコース料理でしたらいいですよ」

 ここで値段をずばりと聞くべきかどうか少し悩んで、言葉を選びました。

 カジュアルで万単位はない……と、信じたいです。そもそも菜々さんも、院生とはいえ学生なのです。そんなに高いコース料理を食べたいと思うわけありませんよね?

「本当?いいの?じゃぁ、金曜日に、さっそく予約……するね!また仕事終わったらあそこで待ってる!」

「はい、わかりました」

 と、ラインを送ってから数分後に菜々さんから返信が来ました。

「あ、ごめん、言い忘れてた。付き合ってもらえないかと、和臣が言っているんっていうの……」

 は?

 そ、それ……、どういう……?

「私はその日予定があるから、結梨絵ちゃんに聞いてみるって言ったの、ごめん、言い忘れてた」

 言い忘れって、言い忘れって!

 私、和臣さんとはもう、会いたくないって、言いましたよね!

 ……いえ、言ってません。言ってませんけれど……。

 もし、和臣さんとだって知ってたら断っていました。あの、今から断るのは……。

「予約取れたって。お店はココだよ」

 菜々さんからのライン。

 もう、予約してしまったのですね……。

 はぁー。

 店のウエブサイトを確認する。

「あ、素敵……」

 思わず声が漏れた。

 壁一面の巨大なモニターが水族館になっているんだ。魚たちが泳いでいる。明かりの落とされた店内は、青くてまるで海の底のよう。

 海の底で食事をしているような気持ちになれるお店……。

 ディナータイムは2名からのコースメニューしかないお店なのですね。

 ウェブサイトに表示された食事はおいしそうです。価格帯は2000円~4000円で大丈夫そうです。

「素敵なお店ですね。楽しみになりました」

 せっかく食べに行くのだ。腹をくくる。

 楽しんできます。

 そうです、今度こそコンタクトを持っていきます。

 和臣さんの顔を見ましょう。もし、その目がとても優し気で、引かれてしまったらどうしよましょう……。

 顔、知らないほうがいいでしょうか。


ご意見

【白井さんしりとり弱すぎて草】

【インスタント味噌汁と来たか!さぁ、東海勢よ、どうする?】

【揚げだし豆腐うまいよな!白井さんの権限で食堂にも置けないのか?】

【ちょ、だれだよ、豆腐が柔らかいって書いたの!新たな問題を投げ込むな!白井さんが困るだろ!】

【弟子にしてください】

【白井さんが弟子を取ろうとしている……ご意見係が変わるのか?】

【アルバイトはもう決まりましたか?】


「おはようございます、チーフ」

「白井ちゃん、なんか、また呼び出しだよ」

 出勤すると、チーフが苦笑いしています。

「まさか……学生相談室、ですか?」

 チーフがうなづいた。きっと、私の顔も今苦笑いになっているに違いない。

「白井ちゃん、またいつもの時間までに戻ってきてくれればいいけれど、明日と明後日は田中さんが休みだから呼び出しには応じられないって伝えといてもらえるかい?」

「はい。わかりました」

 ……。学食は、業務委託という形ではなく、大学が直接人を雇って営業している。

 食物栄養学部という学部があり、年に数回、食物栄養学部食堂になったり、食物栄養学部の学生が考案したメニューを提供したりするのに便利だからだと聞いたことがある。

 つまり、学食のスタッフは大学に直接雇用されているわけで、大学の仕事であれば、呼び出されれば行く必要があるというわけで……。

「ちょうどいいので、コインランドリー用ご意見用紙を作ってもらうように頼みましょう……」

 紙の色を変えてもらうか、別に箱を用意してもらうか、分かりやすくしてもらいましょう。


 学生相談室のドアをノックすると、すぐに扉が開きました。

「師匠!おはようございます!」

「部屋を間違えたみたいです、失礼いたします」

 師匠と呼ばれたので、踵を返した。

「ああ、待ってください、白井さんっ!おはようございます、白井さんっ!」

 グイっと腕をつかんで引っ張られたため、ふらついて後ろに倒れ……。

 黒崎さんの胸元に頭をぶつけてしまいました。

「ああ、すいません、すいませんっ」

 ふんわりと甘い匂いが立つ。

 ……あれ?この香り……どこかで?

 記憶の糸をたどろうと思わず見上げてしまい、匂い立つようなイケメンの顔を真下から除きこんでしまいました。

 は、破壊力、すごいっ!


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