表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/63

44

返信の続き

【食堂ではポットでお湯をご用意しております。インスタント味噌汁の持ち込みも可能ですので、必要であればお椀をご用意させていただきます。お気軽にお声かけください】


 これでいいんじゃないかな?

 うん。お椀の用意は、給湯器のコップと同じような位置づけですよね。食堂のサービスの一つです。とりわけるための皿と同じです。問題はないはずですが、念のため明日チーフに確認しようと思います。


大学への申し送り

【食堂に、学生が自由に使える食器類を置くと便利かもしれません】


 味噌汁にだけお椀を貸し出すとすると、カップスープ派から、スープ用のカップも置いてくれという話が出るかもしれません。

 と、最近なんとなくわかってきたのです。できる範囲のサービスを先取りして考えるというのもありなのではと。食器をそろえる段階で多少経費が掛かります。

 そこから先は、洗う食器が増える手間はありますが、毎日毎日大量に消費されるものではありません。

 ……まぁ、持ち帰るような学生が出てきてしまえば、話は違ってきますが。今のところ、ティーサーバーのコップの紛失が多発しているようなことはありません。


ご意見

【師匠!これからもよろしくお願いします!】


 ……。

 やはり、ライバル君は、黒崎さんでしたか。

 ……。

 師匠って呼ぶなと言ったの、もしかして伝わっていませんでしょうか?

 思わずご意見用紙を握りつぶしてゴミ箱に捨ててしまいたい衝動にかられました。

 そこで、チーフの言葉を思い出します。

 首になるようなことはないとは思うけど……というあれです。

 ゴミ箱に捨てたのがわかったら、まずいでしょうか?

「はぁー」

 大きなため息がでます。


返信

【どなたかとお間違えではないでしょうか。私には弟子はいません。師匠と呼ばれる人間ではありません】


 と、ごくごく普通の答えを書き込みます。

 大学への申し送り……は、必要ないですね。


 はい、今日も終わりました。これを張り出して、申し送りを学生相談室に出しに行ったらおしまいです。

 時計の針は29分。

 タイムカードを押すころには30分をだいぶ過ぎそうですね。まぁいいでしょう。誤差の範囲です。


 荷物を持って学生相談室へと向かいながら、神様に祈ります。

 どうか、黒崎さんと会いませんように……。

 今日は、ドアをノックせずに用紙を相談ボックスに入れましょう。今までだってそうしてたのですから、構わないですよね?

 渡り廊下に差し掛かると、渡った先に人影が見えました。

 思わず身を隠します。

 あれは、黒崎さんと菜々さんだ。

 ……そういえば、前も二人が一緒にいるところを見ました。

 ちらりと顔を出して二人の様子を見ます。

 菜々さんがスマホを取り出して何やら見ています。それを、黒崎さんがのぞき込もうとして、菜々さんがすっとスマホを胸元に持っていきました。

 その様子をアフレコすると、きっとこんな感じです。

「見せて」「だめ!これはないしょなの」「いいだろ、見せてくれって」「もー、仕方ないなぁ……うーん、でもやっぱりだめ!」「なんだよ、ケチ、ちょっとだけな?」「だめなものはだめ!」

 うーん。なんとうのでしょうか。

 距離感が近い感じがします。

 大学職員と学生という感じではなくて……。

 あれ?もしかして、二人は、その、前に邪推してしまったような、特別な関係なのでしょうか?

 えっと……。

 菜々さんは和臣さんと付き合っているわけでは……ないのでしょうか?

 前カレだったかもしれないけれど、今カレである可能性は、ないということなのでしょうか……?

 もう一度だけ、そっと二人の様子を見てみようと、渡り廊下の向こうに視線を向けると、黒崎さんが両手を合わせて菜々さんを拝んでいました。

 菜々さんの様子にアテレコするなら「しょうがないなー」という感じでしょうか。

 ……。

 いつまでも見ていても仕方がありません。2人を避けるコースで学生相談室に向かいそっと相談箱に紙を入れて、さっさと立ち去ります。

 職員通用口でタイムカードを押すと、スマホが鳴りました。

 あ、ライン。

 菜々さんからです。

 もう、黒崎さんとは会ってないのでしょうか?

「結梨絵ちゃん、金曜の夜って、暇かなぁ?」

 金曜の夜?

「また、飲み会ですか?」

 特に用事はないのですが、おごられ続けることは正直あまりうれしくありません。

 ……というよりも……。

 和臣さんに、あまり、会いたくないです。

「飲み会じゃなくて、ディナーなんだけど……」

 これ以上、好きになりたくないです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ