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 申し送りなのに質問形式になってしまいました。

 時計を見る。

「あ、時間が!もうこれでいいとします!」

 掲示板に掲示して、学生相談室に向かう。

 ノックしても今日も反応なしです。

 紙をいつものように箱に入れて、さあ帰りますよ。

 渡り廊下を歩いていると、向こう側からあの男が歩いてきたました。

 イケメンいけ好かない男です。

 見えてない。

 見えてない。

 まっすぐ前を見て、男の顔を見ないように歩きます。いや、視界の端にはどうしても入っちゃうんですけど。

 男とはそのまま渡り廊下の真ん中あたりですれ違いました。。

 ほっ。今日は何も言われずに済みました。


 タイムカードを押したころ、ラインの通知が。

「珍しい、誰からだろう?」

 菜々さんだ。

 かわいい絵文字でヤッホー。

「来週か再来週で夜開いている日ある?」

 そうか。飲み会をすると言っていたやつですよね?

「今のところ特に予定がある日はありません」

 いつも友達との約束は前日とか前々日と急なことが多いのです。

 なんせ、みんな忙しく働いているため、何日も先の予定が立てにくいのです。

 私のようにほぼ残業ゼロって仕事をしている子は少ないから。

 あ、最近は残業し始めたけど。それもほんの少しですし、融通もききますしね。

「3日前までに教えてもらえれば大丈夫だと思います」

 と、言葉を添えて送信。

「オッケー。また決まったら連絡する」

 了解ですと返信しようとして、ふと気になっていたことを質問する。

「学生相談室はスクールカウンセラーみたいなものなのですか?」

 すると、すぐにライン電話が鳴る。

 菜々さんからです。

「ちょっ、もしかして、学生相談室行った?会った?」

 え?

「会ったって?学生相談室って、いつも留守みたいだから気になっただけで、利用する予定はないですよ」

「あー。うん。びっくりした。そうか。えっと、会ってないのね?えっと、学生相談室はカウンセラーというよりは大学生活で困ったことや不便なことを聞いて改善するというとこだけど、現状全くダメだね」

「ダメというのは、改善してもらえないってこと?」

「本気になれば改善できるだけの権力……あー、権限はあるんだけど、どうにもなんていうかねぇ……。期待されてないというか、相談事に偏りがあるというか……」

 期待されてない?

 それは実績が伴ってないってことかな?

 相談事に偏りがあるっていうのはどういうことなんでしょう?

「悩み相談も時には学生相談室に持ち込まれることもあるみたいだけど、そちらは保健室に常駐しているカウンセラーに回すから、結局、まぁえーっと」

 ああ、カウンセラーは保健室勤務なんですね。そうでしたか。

「結梨絵ちゃん、何か相談したいことがあったら、話を聞くよ?力になれるかもしれないから」

 前にも菜々さんはそういっていました。

「うん、ありがとう。特に悩みはないですよ。あ、そうだ、職員のこともよくわかってないんですけど、すごく顔の良い男の人がいるでしょう?」

 菜々さんが電話の先でうっと小さな声を出した。

「もしかして、前髪あげて、眼鏡かけて、背の高い……人のこと?」

 あ、やっぱり有名なんですね。

「……学生相談室の近くで会った……とか?」

「そうそう、そうなんです!合コンのときに前に座っていた人と声が似ていたので、思わず顔を見てしまいました。そうしたら、にらまれてしまって……」

「え?睨んだ?声が似てる?……結梨絵ちゃん、顔は似てるとか、思わなかったの?」

「あー、合コンのときは眼鏡はずしていましたから、顔がよく見えてなかっんです。だから似てるかどうかわからなくて。かろうじて、髪型や眼鏡をかけていたかどうかなど、相違点がわかる程度です。えっと、でも、それで、ついじーっと見てしまって、不快な思いをさせてしまったようで……」

 だからと言って、ちょっとイケメンの態度もね。あれだったんですけれどね。

「そ、そう。はは……いや、まさか、そんなことに……。これは、うん、結梨絵ちゃんもあいつも……ああ、そうなの……」

「あいつ?」

「ううん、何でもない。えっと、顔は似てないような少しは似てるような……あ、ごめん電車が来るからまたね」

 あははと乾いた笑いを漏らして、菜々さんは電話を切った。

 えーっと。

 何の電話をしたんでしたっけ?

 そうそう、学生相談室に寄せられる相談事には偏りがあるとはどういうことでしょう?

 大学改善にあまり役立たない?えっと……権限はあるけど、大学改善につながらない?寄せられる相談事がよほど無理なことばかりなのでしょうか。

 図書館に漫画を置いてくれのような……?


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