終結、昇格の決定
「――うええ、きもちわるっ」
目に光が入り込んで、ものすごい吐き気がこみ上げてきた。
ああ、気持ち悪い――
「……おい、大丈夫か。おい、おーい」
なんだかうるさい声に起こされた。
顔を上げて周りを見ると、そこはベッドの置いてある部屋で、リネが心配そうな顔で、俺の顔を見ていた。
「よかったあ。もう、目を開かないんじゃないかって、私思ってた」
「そんな心配しなくてもいいって。それで、今どうなってるんですか? ゴブリンは?」
「ああ、そうだな。ゴブリンは、討伐隊が結成されて、群れは潰されてる最中だ。お前が倒れた後、リネが必死に俺らに事の次第を伝えてくれてな」
「ふっふーん、私がんばったんだよ」
ああ、終わったのか。よかった、本当に。
俺はベッドから出ようとしたけれど、体が動かなかった。
「だっ、大丈夫?」
「ああうん。体が動かなくて。たぶん、魔力が枯渇したせいだと思う」
「おいおい、そんなんでいいのか? 上級冒険者になれねえぞー?」
「仕方ないじゃないですか。命からがら逃げ帰ってきたんですから」
「ま、俺もお前くらいの頃にそんな状況になってたら死んでたろうしな。ああ、もう出てかないといけないから安静にしてろよー」
ヴァイスさんはそう言うと、すぐに部屋から出て行った。
「ヴァイスさん、出てっちゃったね。私たちが落ち着いて話せるように、出て行ってくれたのかな」
「まさか。あの人は性格悪いんだよ? そんなはずないって。たぶんギルドに報告に行ったんじゃないかな。あとは討伐隊に戻ったとか」
「たしかにそーだね。……そういえばね、私たち上級冒険者に昇格だって!」
「えっ? どうして?」
俺たちは、クエストを達成できずに、逃げ帰ってきたはずなのに。
「なんでもね、このクエストは最上級、もしくはギルド級クエストに匹敵するレベルの難易度だったらしいの。それでその難易度の場所から戻ってこれた私たちは、上級相当の能力がある、って判断されたの!」
「やった! 念願の上級冒険者だね!」
「あっ、でも、このことを報告した功績による報酬は別にもらえるって!」
「本当?何がもらえるのかなー」
二人で喜びを分かち合って、時間は過ぎていった。
「ありがとうございましたー」
「まだ完全に治ったのかわからないから、気を付けてね」
魔力が回復し、動けるようになった。
受付の人に見送られながら冒険者ギルドから出て、家へと続く道を進む。
少し前までは明るかった空は、暗くなっていた。それに浮かぶ星が、俺たちを照らすように、輝いていた気がした。
俺たちは、今日という日を生き抜くことができた。
時を戻す能力を使わずして、生き抜くことができたんだ。
たとえ逃げ帰ってきたとしても。たとえどんなに不格好でも。帰って、これたんだ。
「これからも、ずっと一緒に、冒険をできたらいいなあ」
「私も、そう思う。きっと、私たちはいつまでも一緒だよ」
どんな危険があっても、どんな困難があっても。
成長して、挫折して。
それでも俺たちは、この先をずっと一緒に、歩んでいくんだろう。
そうして約束を、した。