ロリコンストーカーが婚約者な件
※一部ポケモン(バトル)風。
衝動的に気持ち悪い婚約者が書きたくなった結果。主人公の口がかなり悪いです(元スケバン)。
思い付きネタ文。
正直に言おう。今初めて、変態に感謝した。
私はチェルシー・オーランド。オーランド侯爵の末の娘で、十八歳。今年成人式を経て、現在の婚約者と婚姻を結ぶことが可能となった。
その現在の婚約者というのが、傍から見れば超優良物件の王弟殿下、ガルシア・クレスタ・バレンタイン…………私を生まれた頃からストーキングしている、生粋の変態である。
変態なのだが、超有能。裏から国王陛下を支える、情報収集のスペシャリスト。美形と言うほどではないが、線の細い、柔和な顔立ちが密かに人気だ。しかし、騙されてはいけない。もう一度言う。私を、生まれた頃から、ストーキング、しているのだ。ロリコンに加えてストーカーとか手に負えない。誰かここに病院を建てて。
そんな王弟殿下の婚約者になったのは、私が十二歳の時。彼が三十歳の時だ。それまで直接接点はなかったため、父に王弟殿下との婚約が決まったと聞いた時には、びっくりしすぎてめちゃくちゃ叫んだ。なぜ私を婚約者に?と当然頭の中に大量のはてなが浮かぶ。そこで父に、「弱みを握られていて、デビュタントを迎える十二歳になったら婚約を了承しろ、と脅された」と聞いた。今度は開いた口が塞がらなかった。父の弱みってなんだ、と現実逃避にそんなことを考えた。そしてさらに、私をストーキングしていることも聞いたのだ。そうなるともう、ね?反発したくもなるだろ?例え相手が王族でも、やっていいことと悪いことがあるんだって、言いたくもなるだろ?だから私は、挨拶を兼ねたお茶会で文句を言ってやった。するとどうだ。王弟殿下はとろけた笑顔で私の頬を撫で、あまりの手つきのやらしさに驚いて固まっている隙に口付けてきやがった。当然突き放そうとするだろ?できないんだよそれが!私は子ども、相手は大人。力で敵うわけねえだろ!……コホン。失礼、兄たちの口が悪くてね。
そんなことされたら、余計に婚約解消できないわけで。だってキズモノにされたし。マジふざけんな。相手が王家だからさらに余計だよ!
まあ、なんだかんだで変態に貞操の危機を覚えながらも、日々侯爵令嬢として、王弟殿下の婚約者として、勉強とかいろいろ頑張ってたわけですよ。
そうしたら、なんということでしょう。王太子殿下に婚約者と勘違いされていて、しかも王太子殿下のお気に入り令嬢に暴言を吐き、あまつさえ殺そうとしたと言われるではありませんか!現在、王家主催の建国式典の真っただ中。私、王太子殿下と会話したこと、片手で数えられるくらいしかしてない。被害に遭ったとか言う令嬢なんて、名前も知らないし顔すら今初めて知った。いろいろ現状が理解できず、陛下の御前であるにも関わらず、溜息をついて頭を抱えた。陛下も王妃殿下も宰相も近衛隊大隊長も、揃って頭を抱えている。バカだと噂は聞いていたし、実際話してプライド高いばっかりでオツムはあまりよくないガキだなと思ってはいたけど、まさかここまでとは。ほら、来賓の方々なんて蔑む目で王太子を見てるよ。陛下も王妃殿下も素晴らしいお方なのに、その第一子である王太子がこれってなんだろね。
「これだけ罪を暴かれて謝罪の一つも口にせぬとは、我が婚約者ながらここまで愚かだとは思わなかったぞ!」
私もここまであんたが愚かだとは思わなかったよ。呆れすぎて言葉も出ない。ねえ殿下。私が生暖かい目で見てるの気付いてる?気付いてないよねバカだもの。
またまた溜息をつくと、(認めたくないが)我が婚約者殿がニコニコ笑顔で私の前に出てきて王太子殿下が視界に入らないようにした。そうしてくれるくらいなら、いい加減ネグリジェ、枕、その他諸々返して。あ、やっぱいらない。汚れてるだろうし。
「我が甥。彼女、チェルシー・オーランドは私の婚約者であって君の婚約者ではないよ」
ガルシアの じじつをたたきつける こうげき!
しかし おうたいしには こうかはいまひとつだ!
「叔父上。私は確かに侍従に聞きました。チェルシー・オーランドは王太子たる私の婚約者だと!」
ここで思わぬ攻撃が王太子殿下に襲う。
じじゅうの はんろん !
じじゅうは なかまをよんだ! こうかはばつぐんだ!
「いいえ、王太子殿下。私は王弟殿下と申し上げました。その場には王妃殿下もいらっしゃいました」
「ええ、わたくしもいたわ。確かに彼は、王弟殿下の婚約者と答えていたわよ。我が息子ながら、王弟と王太子を聞き間違えたの?どこをどうすれば聞き間違えるのかしらね?」
王太子殿下は、顔を真っ青にして固まった。王妃殿下の笑顔、綺麗なんだけどめちゃくちゃ怖いです。
「それにね、そこのご令嬢が暴言を吐かれたという日、チェルシーは領地に戻って実務をやりながら経営学を学んでいたよ」
「え」
「馬車で牽かれそうになったという日も、城に来てマナーレッスンをしていたね。レッスン後は私とお茶をしていたから、君の言った時間に馬車には乗れないし、その日オーランド家の馬車が通行したのはオーランド侯爵邸と王城を結ぶ交易路及び優先路のみで、歓楽街へ至る生活路は通っていないよ」
「な」
「あと、階段から突き落とされたという日は、その二日前に隣国に行っていて、戻ってきたのはその三日後だ。私もついて行っていたから、魔法が使えない限りは不可能だよ」
ぺらぺらと、変態は私のアリバイを証明していった。これもストーキングの成果とパパラッチよろしく私に張り付いていた結果だ。おかげで私は、周囲から同情と憐みの目で見られた。
ハハッ、そんなに羨ましいかいそこのご婦人?なんならあげるよこの変態。
私を汚物を見るが如く睨みつけていたご婦人に、そう目で言ったら逸らされた。あなた未亡人でしょ?玉の輿狙ってたでしょ?四六時中監視or接触されてもいいくらいこれがいいならどうぞ。てか持ってけドロボー!
私とご婦人の攻防をよそに、王太子殿下は陛下に廃嫡を宣告された。お気に入り令嬢も両親から絶縁状を叩きつけられた。そして私と変態の結婚の日程が発表された。王太子殿下とそのお気に入り令嬢が衛兵にずーるずーる引き摺られていくのを「ドナドナ?」と思いながら見ていたら、「褒めて褒めて」と笑顔で抱き締めてくれやがった変態にべろちゅーされた。タンスの角に小指ぶつけて一生寝たきりになっちまえ!例えお前が前世の旦那だとしても、やっていいことと悪いことがあるんだからな!あ、やっぱ寝たきりなし。お世話させられるのが目に見える。…なんでこんなのに惚れちゃったんだろね?スケバンよろしく、近所のチンピラをシメてただけなのに。いろいろあって付き合うことになってさー。
変態の実家に年始の挨拶行った帰りに高速道路で二人揃って事故って死んで、気が付いたらこうなってたとか。人生どうなるかわかったもんじゃねえや。
だけど、これだけは言わせてくれ。中身が"あたし"でも、ロリコンは、ねえわ…
(百歩譲ってストーキングと軟禁は許す)
チェルシー・オーランド
もしかして…と思ったのは頬に触れられた時。触り方が前世の旦那に似ててつい固まった。「例えこいつが前世の旦那でもロリコンはねえよ」って思って他人に押し付ける機会を狙っている。ガルシアのことは嫌いではないが、ロリコンは遠慮したい。ストーキングと軟禁は前世の頃からの慣れか、嫌ではない。同性に対しては姉御肌。野郎?悪ガキならシメる。前世も今世も兄たちの口が悪いため、素は令嬢らしからぬ男らしい口調。「なんでこうなっちまったんだろうな?あ、いや、説明すんのはやめてくれ。絶対理解できねえ」
ガルシア・クレスタ・バレンタイン
本人曰くチェルシーコンプレックスの腹黒鬼畜眼鏡なストーカー。転生したそもそもの原因。夫婦を揃ってうっかりで殺した運命の女神に毒舌発揮して、夫婦揃って転生させた。しかし、これまた女神がうっかりやらかして時間差付き。女神をシメて誰に転生させたか吐かせたため、前世の嫁がチェルシーだと知る。魔法の存在しない中世に似た異世界だが、うっかり屋女神を下僕にして摩訶不思議な力(という名の神の権能)を行使する。「チェルシーのためなら世界を壊すことも厭わないよ!」
王太子とお気に入り令嬢
脳内お花畑なざまぁ枠。平民に下ったけど愛は本物なので、生活の仕方さえ分かれば多分なんとかなる。二人とも二十歳。
陛下と王妃殿下
おバカな長男を王太子にせざるを得なかった現行の法律を変えたい。現在ガルシアが王位継承権第一位だが、本人が権利返上したがっているため、この後子作りに励む。二人とも三十八歳。
運命の女神
出番なし。うっかりやらかすドジっ子属性持ち女神。加えてケモ耳属性にワンコ属性持ち。前任から仕事を引き継いで間もない。今では立派なガルシアの下僕。