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第十七話 情報分析とDGに潜む宇宙警察のスパイ

 伯爵たちの活躍により巨大魔猪「ヴァンオーヘイン」は討伐され、町は歓喜に沸いていた。そして機士国王や使い魔たちからの手紙を見て、ハーネイトは彼自身にしかできない電撃的解決手段を考えた。そして八紋堀の案内のもと、誘拐事件に関与したボーガスと話をするが、そこで驚愕の事実が明かされる。

 

ハーネイトは城の部屋の中に入ると、すぐに座り大の字になってあおむけに寝そべった。


「帰って来て早々寝るとはな。」

「まあ寝かせておこう。」

「ふう、しかしあんなのとよく戦えますよねハーネイト師匠に伯爵は。」


 リシェルは師匠の寝姿を見ながらそう言い、さっそく使用した銃の手入れをしていた。


「果敢に挑むな、彼らは。」

「あのくらい、単純に倒すだけならわけないが。ただ倒すにも方法が別にあるとはな。思い知らされた。」

「その辺り、ハーネイト殿は本当に詳しい。後でいろいろ聞いてみるといいだろう。」


 伯爵は先ほどの戦いを思い出し、一筋縄にはいかない魔獣退治について話をする。それに八紋堀が伯爵に助言を出した。


「そうだな。しかしみんな思ったよりやるじゃねえか。」

「そりゃあねえ。ハーネイトが認めた人たちですもの。私たちも小型の魔獣退治手伝っていたわ。」

「みんな、歴戦の勇士って感じ。」


 伯爵は全員の戦いぶりを認めつつ、ミカエルやルシエルもそれについて言葉を重ねる。


「こうも人が多いと、誰が誰だか少しわからなくなってきた。」

「そもそも初めて見る人たちもいるし、ここで一応みんなに自己紹介でもしてもらおうかしら。」


 ルズイークの言葉に、アンジェルがそう提案をする。


「そうだな。」

「それじゃあ、皆!こうしてともに戦う人たちが集まったのはいいけれど、ここで軽く自己紹介しない?」


 アンジェルの呼びかけに寝ているハーネイト以外が反応した。


「ああ、それもそうだな。俺の紹介もドタバタのせいでほとんどできなかったしな。」

「それはいいですな、アンジェル殿。」


 彼女の言葉にみんなが集まり名乗りを上げることになった。


「私はエレクトリール・フリッド・フラッガです。元軍の総合司令官です。メイドさんたちとは初めての顔合わせですね。ハーネイトさんにいろいろ助けられました。いいご主人に仕えることができるのはうらやましいですね。」

「俺はリシェル。リシェル・トラヴァコス・アーテンアイフェルト。後方支援が主の仕事でハーネイト師匠に解決屋としてのイロハを教えてもらっています。」


 エレクトリールとリシェルが一番先に自己紹介をした。


「エレクトリールに、リシェルか。」

「流石ハーネイト様ですね。しかし足手まといになるような真似だけは慎んでくださいね。」

「了解ですよ、メイドさんたち。」

「では次は私が。」


 全員の自己紹介が一通り終わるのに1時間以上もかかっていた。そして話が盛り上がる中ハーネイトが目を覚ました。


「ふあああ、よく寝たぜ。アレクサンドレアル王に、お、お前らいつの間に。」

「どうしたじゃないぜ。機士国のミリムと言う男から召喚符を使われてな、急ぎの手紙だとよ。」

「こっちはバンギラスと言う男からだ。」

「私からもエージェントや部下たちを駆使して情報を集めてみた」


 使い魔であるウェンドリットとワニム・フニムが彼の目の前で持っていた手紙をハーネイトに渡した。

「もしかすると、面白い情報が描かれているかもな。」


 ニャルゴも部屋の窓から部屋に入り、ハーネイトに早く手紙を見るように催促する。


「わかったよ。どれどれ。……ククク、クハハハハハ!」

「ど、どうしたのだ?」

「何かわかったことでもあるようだなハーネイト。」

「やはりそうか、ジュラルミンは魔法使いに洗脳されていた。そして防衛警戒網は沈黙している状態だ。つまり、強硬手段に出てもいいということだ。」


 ワニムから渡された手紙には、かつて機士国で世話になったミリムとガルドランドからジュラルミンについての情報、そして一枚の写真が入っていた。写真を見たハーネイトは、それに写っている特有の魔法反応から高度の催眠系魔法がジュラルミンにかけられていることをすぐに理解した。そしておかしくなった時期にある黒髪で長身の男がそばにいたという。このことを踏まえ、ジュラルミンはDG、もしくはそれに関係する組織に操られていると見立てた。


 ハーネイトはジュラルミンの内面を知っていたため、最初からその言動に違和感を覚えていたが、予想が的中し納得していた。


「あやつが洗脳、だと?」

「ですね、しかもかなり強力です。並みの魔法使いでは解除もままならない。」

「それが解ければ、そのジュラルミンという男も元に戻るのですか?」

「おそらくな。」


 アレクサンドレアルとリシェルがそれについて尋ねつつ、考え込んでいた。正直言えばアレクサンドレアルは父の代からいるジュラルミンを煙たがっていた。自身の政策に合わないところがあったためどうにかしようとしていたのである。しかしハーネイトは彼がそのような行動に至る理由を知っており、うまく利用すれば優秀な人材であることを見抜いていた。このままジュラルミンを謀殺しようと考えていたが、ハーネイトの説明に困惑していたのである。


「そしてこれが、警戒網解除成功か。しかしあいつら魔法通信のやり方教えたはずなのにな。」

「あいつらとは?」

「かつて機士国で暴れまわった死鬼隊という12人の暴走族たちだ。事前に手紙を出してな、ある施設の制圧を依頼していたのさ。」


 ハーネイトの発言に機士国サイドの人間の表情が一瞬固まる。ハーネイトが機士国にいた際に鎮圧したはずの暴走族集団をなぜは以下に収めているのか、だれも理解できなかったからだ。実はその時にボスのバンギラスと一騎打ちをし、謎の友情が芽生えたという。というかハーネイトの固有能力で完全に従えた状態にしてしまったらしい。そのことを初めて聞いたアレクサンドレアルはまた大笑いをしながら彼の人を見る目の恐ろしさと異端さを実感していた。


「本当に、お主の利用術は意表をいつも突かせてくれる。大胆かつ繊細、そして無駄があるようで無駄がない。人材の幅が広すぎるのが若干不安ではあるが。」

「わ、私は合理的に、総合的な判断をしたうえでそうしているだけですので。」


 アレクサンドレアルの言葉に少し言葉を詰まらせつつもそういった。そして眠たそうに欠伸をする。



「なんでそんな人材まで使うのですかね。」

「いや、たまたま施設と彼らの拠点が近かったからな。あと機動力については右に出る者はいない。なに、昔ほど凶悪ではない。」


 リシェルがハーネイトの発言と国王の言葉を気にしてそう質問する。実際彼らの乗るカスタムバイク、いやハーレーは恐るべきスピードを誇り、荒野や草地でも暴れまわれるように調整しているため攪乱やおとりにはもってこいの集団であった。今回もその機動力と突破力、そして地理的関係も含め彼らに連絡を取ったのである。その考えは的中し、指示通りに制圧してくれた模様であった。


「むちゃくちゃとしか言いようがないな。」

「しかしこれで敵に気づかれず攻め込むこともできるわね。」

「多くのものに手紙を出した甲斐はあったな。それでどうするつもりだ?」



 「少し悩んではいるのだが、どうしても大規模な部隊の運用にリアルタイムGISが欠かせない。それにはボルナレロの回収が必要だし、ほかの技術者たちも一か所にまとめておきたい。カイザルがほかの研究者の救出に成功したと聞いたが、それは道中でできそうだしここは、いっそ大胆に合理的に。機士国とDGの関係を断ち切りながら奴らを追い詰めよう。」



 ハーネイトは残りに必要な作戦の要素を話しながら、後ろ盾のあったDGを孤立させ、弱体化させつつとどめを刺す方法を提案しようとしていた。



「つまりそれは?」

「機士国に単騎で乗り込んでジュラルミンを助けて、そこから直接敵のボスをぶっ倒すのだ。そして残りの残存兵力を全員で包囲しながら殲滅し、北大陸の端まで追い込む算段だ。どうも敵に関する資料があるみたいだし、これがDGをまとめているという男のいる場所か。ミリムもガルドランドもよくやる。」


 エレクトリールの質問にそう答えつつ、ハーネイトは資料に目を通しながら、早期解決について方策を巡らしていた。しかしどうしても研究者たちを救出し、敵の研究を止めなければ培養された魔獣やキメラなどの猛攻を止めることが困難ではないかとも考えていた。



「これまた大胆な作戦だな。しかしいくら機士国の兵たちが機能していないとはいえ、これ以上泥沼化させると後が怖い。今のうちに電撃的奇襲を仕掛けるのは悪くない。」

「ああ。これだけピースがそろえば奇襲は問題ない。後は、包囲殲滅作戦に必要な技術をボルナレロが持っている。しかし居所がよく分からない。できれば先に回収して、必要なものを作らせている間にDGを早く孤立させたい。」

「うむ、敵の兵力の中心は機械兵と培養した魔獣、キメラがほとんどらしいな。ガルバルサスから報告が来ていた。それと機士国の兵たちは全員彼の管理下にある。いつでもハーネイトの指示を聞き動ける状態にあるとな。」


夜之一の発言に対し、奇襲はいつでもいけるがほかに必要なものがあるという。さらにアレクサンドレアルは持っていた手紙をハーネイトに見せながら敵の兵力などについて確認をさせた。


「となると、今起きていることは多くの人はほとんど気づいていない可能性もある。それにDGも一つの組織のくせに、統率がまるでなっていない。人材不足なのかもしれないが、この動き方、何かを探しているように動いている。彼ら、占領よりも別に何かを狙っているように感じる。」


 敵が動かせる兵力から見て、多くの国では魔獣が急増したり機械兵が突然街を襲ったりする事件扱いとして処理されている可能性が大であると見込みつつ、ガルバルサスのまとめた敵の動きについて疑問を抱いていた。


「事態が思ったよりややこしくなってきましたね。私もDGについてはあの尋問で得た情報しかなくてどのような組織運用をしているのかはよくわからないです。しかし占領活動を行うにしては兵力や幹部の配置など、割合のわりに点在している感じです。」


 エレクトリールは敵の拠点の地図と兵力の関係からそのように考えていた。


「なぜそのように動くか分かればいいんだけどね。」

「あてになるかわからない魔獣まで使っているなんて不思議ね。」


 ハーネイトたちの話を聞いて、離れたところで話をしていたミカエルとルシエルも話に加わる。


「確かに。しかし他にも気になることがたくさんある。そうだな、まずはボルナレロだ。そして兵力の確認後私が機士国まで霧の龍に乗って、道中でカイザルたちを見つけ転送。そして上空から侵入する。アリス、聞きたいことがある。この顔の男に見覚えがあるか?」


ハーネイトはダグニスに手帳に挟んでいたボルナレロの写真を見せる。



「えーと、この人に似た人をガンダス城の方で見た仲間がいますね。顔や髪形の特徴も送ってくれたのと一致しています。あそことっくの前に廃墟なのですがね。」

「ほう、それは興味深い話だ。何があってもおかしくないかもな。決めた。ガンダス城にまずは向かおう。そしてその道中にある古代人の巨大都市ミスティルトシティで拠点を建てよう。昔使っていた事務所やホテルもあるしみんなも羽を広げて休める。」


 ハーネイトの方針をその場にいる人全員が聞き、了承した。


「了解しました、ハーネイト様。」

「ではそこまでの移動はベイリックスで行きましょう。ここから飛ばせば11時間ほどで着きます。」


 そしてミロクとシャムロックがそう提案し、ハーネイトは任せると命を出す。


「ああ、ハーネイトよ、別件で依頼がある。」

「どうした八紋堀。」


 八紋堀が深刻そうな顔をしてハーネイトに話しかける。


「ああ、実は日之国の管轄下にある小さな町で住民たちが失踪しているという連絡が届いてな。ミスティルトの道中にある街だ。何があったか調べてくれるとありがたい。まさかとは言いたいがDGが絡んでいるなんてことが分かれば大問題だ。」

「了解した。報告書は使い魔に運ばせる。そういやプロッポーがいないな。ワニム、ウェンドリット。」


 八紋堀の話を聞き了承しつつ、使い魔の一匹であるプロッポーの姿を見掛けず気にしていたハーネイトはほかの使い魔たちに確認をする。


「あいつは事務所を守るってさ。」

「確かにあいつは戦闘用だホ。伝達の方はわしらに任せれくれホ。」

「確かにそうだな、事務所の方の守りも必要だ。わかった、ありがとう。」


 プロッポーが事務所にいることを把握し、ひとまずほっとした。


「しかしあまり時間がない。ミスティルトは720、ガンダスはそれから80先にある。明日の朝6時過ぎに日之国を発つ。夜之一、色々と世話になった。」

「いやいや、ハーネイトがいなければ危なかった。さて、アレクサンドレアル機士国王。しばらくここにいますか?」


 夜之一はハーネイトに深くお礼をし、アレクサンドレアルの方を向く。そして彼もハーネイトと夜之一の顔を見ながら考えていることを述べる。


「そうだな。ハーネイトよ、機士国側の人間は今回同行ができない。ここでさらに情報収集に当たる。それとエージェントの数人と連絡が取れないのだ。ギリアムにロシュー、ヴェルド。特殊諜報隊のメンバーだがもし見つけたら加えてやってくれ。それとカイザルと研究者たちをどの拠点に向かわせればよいか?」


 アレクサンドレアルの言葉にハーネイトは少し悩みつつどこに研究者をまとめておくか考えた。


「ミスティルトでお願いします。」

「分かった。アル、カイザルのもとへ向かい研究者たちをミスティルトまで護衛してくれ。」

「了解しました。ではすぐに向かいます。リシェルよ、お前は遠慮なく思う存分戦え。」

「はい、アル爺さん。」


 アルの言葉にリシェルは敬礼しながらそう言い、ピシッと姿勢を正す。


「私たちも準備しましょうか。」

「そうですね、ではそうしましょう。」


 ミカエルと風魔はそう言い手持ちの道具などを確認し始めた。


「では明日の朝6時半に城門前に集まってほしい。」

「了解しました。ハーネイト様。」

「ええ、わかったわ。伯爵、町の方見ていかない?」

「そうだな、んじゃ見てみるかリリー。」


 ハーネイトの言葉を聞き、伯爵とリリーは早速城を飛び出し城下町の方に出かけて行った。


「さてと、八紋堀。例の男のいる牢屋まで案内してくれ。」

「了解した。では向かおう。ついてきてくれ。」


 ハーネイトと八紋堀は部屋を出て、ボーガスが捕らわれている牢屋のある建物に向かう。そしてボーガスの牢屋の前に来る。


「あんたがあの男か、少し顔つきが変わったか?」

「それはどうだかな。しかしよくもこの国をめちゃくちゃにしてくれようとしたな?」

「ああ、そうだな。しかしもうそんなやる気でねえよ。」


 ボーガスはあの後治療を受け、八紋堀や郷田らに連行されこの牢獄に入っていたのである。


「ふん、口だけなら何とでもだ。お前も宇宙人か何かなのか?」

「まあな。しかし本当にお宅は強いな。」

「別に。」

「謙遜はよした方がいいと思うがな。俺も好きでDGに入ったわけじゃない。」


 ボーガスもまた、宇宙警察というDGを追う者の集団に属するものであり、スパイであった。各星で悪行を重ねる非道な連中に対抗するため結成されたものであるという。なぜ今回あの事件を起こしたのかについては、存在を怪しまれており調査が困難になるのを恐れてあくまで組織の一員であることを示すために行ったものであると述べた。それを聞き半信半疑する二人だが、所持していた資料などから否定することができないという判断に至った。


「しかしなあ、他にやり方があっただろうが。DGを駆逐するものとして歓迎はするが、一応反省してもらう。この星にはこの星のルールがあるのでな。」

「仕方ない、覚悟はしていたがな。」

「とにかくDGにはもう戻れないだろう。どちらにしてもそうはさせないがな。」


「どちらにしろある存在のせいでDGの壊滅は目前だ。そしてあなたたちのおかげで奴らの喉笛を搔き切れそうだ。」

「しかしそうしても余波がな……。」


 ハーネイトはDGを倒した後も起こりうる弊害や問題について考えながらため息をついていた。


「何も一人でやらなくてもいいんじゃないのか?」

「分かってはいるんだけどねえ、体が勝手に動くのさ。ああ、それと例のカードの影響はどうなのだ?」

「ああ、あれか。もう何ともないが二度と使いたくないね。あれは危険だ。訓練された兵士でも魔獣に意識をすべて奪われるだろう。ましてや一般市民に使われれば、ぞっとするな。」


 ハーネイトはデモライズカードの後遺症はないかと質問しボーガスはそう言葉を返した。しかし双方、危険なアイテムであることは理解できた。



「はあ、宇宙人が利益のためだけにめちゃくちゃなことをしている。そういやあのでかい化け物、よく倒したな。俺の故郷であんなのが出たら倒すのは誰もできなかった。」


 ボーガスは故郷の星で起きたことを思い出しながら、ハーネイトのような存在がいればよかったなと二人にそう言った。


「お主のいたところにも、あのような巨大魔獣が現れるのか。」

「そうだ。この星だけじゃないさ、あんな化け物。よかったら、ハーネイト。ぜひとも宇宙警察に迎え入れたいほどだ。」

「一体どういう組織なんですかねそれ。こっちもこの星のことで手いっぱいでね。休暇をDGにつぶされて私は怒っている。


 ハーネイトは顔に力を入れ早く休みが欲しいと叫びたいところをぐっとこらえていた。


「ハハハ、なかなか面白いな。ああ、そうだ。この姿はこの星になじむための偽のものだ。本当の姿を見せてやろう。」


 そういうと、ボーガスの体が突然光だし、二人は目を守るため手ですかさず目を覆う。そして次の瞬間、目の前には先ほどとは全く別人の人間がそこにいた。姿形は人ではあるが、腕の部分がきれいなうろこのようなもので覆われていた。後ろに逆立つきれいな紅の髪、首には赤いマフラー、機動性のある衣装に身を包んだ若者であった。


「紹介が遅れた、私の本名はアポロネス・フェニキシア・プレガナード。DG殲滅を目標に結成された宇宙警察の特務諜報員だ。あのようなことを引き起こして反省している。その罪滅ぼしは、DGとの戦いで償おう。ようやく偽りの仮面を外すことができた。」


 変身し声が若返るアポロニアに二人は目を点にしつつ、協力関係にはあるのだと認識はする。しかし突然の事態に頭が若干追いついていなかった二人はただただアポロニアを見つめていた。


「宇宙人は珍しいか?そうは言いつつ、あの金髪のボディスーツを着込んだ奴も宇宙人であるだろうが、エレクトリール、なぜここに。」

「なんだと、エレクトリールのことを知っているのか?」


 アポロニアがエレクトリールのことを口に出し、ハーネイトは冷静に問いかける。


「ああ。あいつと私は同じ軍学校にいたからな。テコリトル星人とフェニキア星人は協力関係にあってな。仲は良かったが、ある事件を境にあいつは変わってしまった。それで狂ったようにあいつは力を求め、テコリトル星の軍の司令官になったと風のうわさで聞いていたが。」


 アポロニアはエレクトリールと顔なじみであり、友人でもあった。互いに切磋琢磨していたのだが、ある日突然次元ルフループが発生し、異世界から来た侵略魔の集団にエレクトリールは友人を奪われ、大切な友を救えなかったのだ。それから彼女はひたすら力を追い求め、親とも別れひたすら上を目指したという。アポロニアはそれについて以前から悪名高いDGの仕業ではないかと考え、その当時募集していたDG討伐隊に入ることになった。互いに違う道を進みつつも、こうして別の星で顔を見ることになるとは彼は思ってもいなかったという。


「エレクトリールにそういう過去があったのか。だから好戦的で、相手に容赦しない性格なのか。納得がいった。」

「よくあいつを迎え入れたな。」

「DGからあるアイテムを守るために、この星にきて大けがをしていたのを助けただけだ。」


 ハーネイトはアポロニアの質問に事実を話した。彼の行動にアポロニアは笑顔を見せ、一礼した。


「エレクトリールを助けてくださり、ありがとうございました。私の友人を治して面倒を見ていただいているとは。」

「まあ成り行きだからな。そのせいで休暇つぶれて本音はグレたいところだけどな。」

「本当に変わった人だな。」


 アポロニアの言葉にやれやれだというジェスチャーを見せながらそう言うハーネイト。


「すまんな、この男は断れない男でな。いつも仕事を引き受けすぎて全部解決している変人だ。」

「変人とは心外だな八紋堀。」


 八紋堀の言葉に少し顔をムッとしながら目を閉じてため息をつく。


「さて、これからどうしようか。宇宙にいる連中は白い謎の男の影響で弱っていたDGの大拠点と残りの工場をすべて破壊しているし、本当に最後の正念場だ。戦いたいがどうするか。」

「こっちは今から作戦に必要な研究者の確保を先に行わなければならない。アポロネスはどうしようか迷うな。八紋堀、こちらの要請があるまでここに置いといてくれるか。」


 ハーネイトは八紋堀に頼みを入れる。


「別に構わんが。」

「必要な時はウェンドリッドで手紙を送る。そういうことだ。研究者の回収後に来てもらうことにする。それでよいか?」

「異存はない。」

「分かった。では私は温泉に入ってから早めに寝よう。」


 ハーネイトはそう言い牢屋を後にする。そのときアポロネスが一言話しかけた。


「エレクトリールのことをよろしく頼む。あいつは精神が不安定な時がある。貴方の存在が支えになっているだろう。」

「ああ。アポロネスも気をつけてな。」



 そういい、ハーネイトは城の本棟に戻ると温泉に一人入って考え事にふけっていた。彼が部屋に戻ると、南雲や風魔たちにまた話をしてあげつつ、ひたすら資料に目を通していた。彼がもっとも今気にしていたのは、ガルバルサスとアポロネスの言っていた白い男についてであった。


 翌日の早朝、先にメイドたちがベイリックスに乗り込みチェックを行っていた。


「依頼の件、よろしく頼んだぞ。」

「了解した。」

「必要に応じ兵や物資の支援を行う。いつでも連絡を。早く終わらせて、念願の休暇を楽しもうじゃないか。」

「はは、そうですね。では、行ってきます。それと色々お世話になりました。」


 夜之一の言葉に対し感謝の意を述べつつ彼は深く礼をした。


「武運を祈るぞ、ハーネイト、遊撃隊の皆さん。」


 こうして、シャムロックの運転するベイリックスにハーネイトやリシェルたちが乗り込み、ミスティストシティに向かうのであった。

 



 ジュラルミンが敵の魔法使いに洗脳されたり、宇宙警察やDGに潜入しているスパイ、エレクトリールの過去などについて触れられる回です。

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