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Different-eyes  作者: 八藤
7/11

第五話 憎しみに染まる亜眼

「あれ、岸野じゃん。」

病院を後にした来矢に犬を連れた一人の女が話しかける。

「お前は…ああ。今村か。」


今村詩音いまむらしおん

来矢や真島が通っている"普通"の大学、弥斗みと大学の同級生だ。

特に喋る訳でもなく、仲もそんなに良いわけではなく、お互いに好意もない。

"普通"の関係である。


どちらにせよ、詩音には沢見哲さわみさとしという彼氏がいるのだ。

…いや、先日までいたのだ。


「どうしたの?ケガでもした?」

「ちょっとな。転んだんだ。」

「まじで?岸野って意外とドジだな~」

つい数分前にも同じ言葉を言われた。

完全にドジキャラが定着してしまったようである。



…その二人の会話を…

一人木の後ろから覗いている男がいた。



「おい…誰かがこちらを見ている。」

来矢にはすぐに気がついた。

男は見られていることに気づき、すぐに去っていった。


いや違う。『消えた。』


「え?どこ?」

詩音が見た頃には、もうすでに男は消えていた。


「気のせいじゃない?

目に隈ができてるし…寝不足なんだよ。」

来矢は昨晩から今朝まで、つきっきりで一睡もせずに真島の看病をしていた。

隈ができるのも無理はない。



「…アイツは沢見哲さわみさとしだ。しっかり見えていなかったが…確かにそうだった。」


来矢にはその一瞬ですぐに分かった。

その男が、沢見哲であるということに。


その男の右眼が、緑色に輝いていたのことに。


「え?沢見くん?

沢見くんとなら昨日別れたけど…

そんな覗くなんてことしないと思う。

沢見くんそんなキャラじゃないし…」


間違いない。これは亜眼あがんが絡んでいる。


「おい、沢見には気を付けろ。

絶対にだ。」


強い口調で警告する。


「え…?岸野?やっぱりおかしいよ…?」

なかなか信じてもらえない。当然だ。

来矢は普段はこんな感じではない。


「絶対だぞ!分かっているな?」

そう一言伝えると、来矢は歩いて帰っていった。



「ただいま。」

来矢は一人でちょっとしたマンションに暮らしている。

家には誰もいないのに、ただいまと言ってしまうのが癖になっている。


冷蔵庫をあけると、食材をいくつか取りだし、料

理を始める。


実は、この男…

料理が上手いのである。


慣れた手つきで料理が進み、美味しい香りが漂う。

本日の朝食はスクランブルエッグ、レタスとキュウリのサラダ、かつおの振りかけをかけたご飯

だ。


「いただきます」と一人で呟き、ゆっくり口を動かす。音も立てず、静かに食べていく。

「ごちそうさま」と箸を置くと、風呂に直行し、衣服を脱いで入浴を始める。

来矢は、朝晩二回も入浴をするが、亜能力の問題

もあるため、なかなか外では風呂に入らない。


入浴中、来矢は先程の男の事を考えていた。



沢見哲さわみさとし

彼はまじめで、人望も厚く、性格もいい。評判の高い男だった。

だが、最近は様子がおかしく、大学にもあまり来ていなかった。


その事と亜眼、何かしらの関係があるということは間違いないであろうと、来矢はふんでいた。



風呂からでると、服を替えて、歯を磨いた後、そのままベッドで眠りについた。


目覚まし時計の設定時間は午後6時。現在の時間は午前10時。

この男、朝から夕方までずっと寝ているつもりだ…



その頃、詩音は来矢の言葉など忘れ、家でゆっくりとくつろいでいた。

「ははは!面白すぎ!!こんなの笑っちゃうよ~」

その後ろから、悪夢の足音が迫る。

大音量で動画サイトを見ていた彼女は、全く気がつかなかった。


「さーて、次何見よっかな~」


「詩音…」


「え?沢見くん?…気のせいか。誰もいない…」



「詩…音…」


「……沢見くん…いるの?」



「いるさ………


お前の後ろにな…」



「…沢見くん!?どうしてこ…こ……あっ…」



血塗られたナイフが、詩音の背中をかき切る。

そして、追い討ちをかける様にメッタ刺しにする。


詩音は来矢の言葉を思い出した。


「「沢見には気を付けろ」」


まだ僅かに意識が残っている詩音は、最後の力を振り絞り、来矢の携帯電話にメッセージを送る。


「とめて」

その一言だけを送り、詩音は力尽きた。



「…これで憎かった奴がまた一人消えた…ヒヒヒヒッ…こいつはすごい…本当に気づかれないなんてな…」




沢見は、名前のかかれたリストを取り出すと、「今村詩音」の名前を黒く塗り潰した。


そのリストには、「真島淳」の名前も含まれていた。

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