第四話 亜眼の謎
「真島…目が覚めたか。おはよう。」
気がつくと、真島はぐるぐるに包帯を巻き、ベッドの上にいた。
「え?何だここ…?もしかして病院か?」
「そうだ。」
「ってことは……もしや……そういうことか……!?」
真島は自らのおかれている状況に気づくと、悔しそうな顔をした。
「安心しろ。井藤ならもう大丈夫だ。」
来矢はテレビのチャンネルを変える。
『昨晩、谷田市弥斗町にて逃走をし、警察官8人を殺害した井藤和人死刑囚が、無事に確保されました。』
「……そうか…ならよかった…」
一瞬安心そうな顔に変わるが、すぐに暗い表情に変わる。
「お前、昨日道端で血だらけで倒れてたんだってな…
偶然通りかかった人が病院に連絡してくれたらしい…
井藤和人の名前を聞いて飛び出してったきり、戻ってこなかったから心配だったぞ…
一体、何があったんだ?」
と、昨日の出来事を隠し、わざとらしく聞く。
すると真島は、ゆっくり口を動かし出した。
「実は…俺、昨日井藤と戦ったんだ…
誰にも…言ってないんだけどよ…
俺の家族…事故じゃなくて、奴に殺されて死んだ
んだ。
あいつが…憎くて、憎くて…ずっと忘れなかった…
いや…忘れられなかった。
悔しい…俺はあいつに負けたんだ…
あいつに…殺されかけたんだ……
クソッ!」
そう言い放つと、真島はベットから立ち上がろうとするが、ケガで立ち上がれなかった。
「があ…いてぇ…」
「おい、大丈夫か?…無理はするんじゃない。」
「あ…ありがとよ…」
「辛かったんだろうな…。
でもよ、安心しろよ。
俺も同じだ。」
岸野来矢には両親がいない。
彼は両親の顔を知らないのだ。
所謂『捨て子』だった。
たまたま彼を見つけた老夫婦が、育ての親となり、幼い彼を育てた…
「っておい!岸野…お前の腕…傷だらけじゃないか!何があったんだ!
井藤にやられたのか!?」
真島はふと来矢の腕に、いくつか貼られているガーゼに気づいた。
「いや…違う。思い切り転んで手をすっただけだ。」
上手く誤魔化したが、本当は和人との戦いで付いた傷だ。
真島を助けるために…
「なんだよ、お前もおっちょこちょいだな~!」
「ハハハハ…そうだな。」
来矢は、昨日の出来事について考えていた。
和人は自分と同じ様に亜眼を持っていた。
だが、それには何か"違和感"があった。
何かが自分とは違っていた。
来矢は、過去にも自分と同じく亜眼を持つ者と遭遇した事があったが、その時は違和感は感じなかった。
しかも、和人の亜眼は、和人が倒れた時には普通の眼に変わっていた。
「「【鉄鎖】の能力を手に入れた」」
と彼は言っていた。
手に入れた…
つまり、"何者か"がその亜能力を、その亜眼を与えた、ということだろうか。
だが、そのようなことはできるのだろうか。
もし万が一できる者がいるとしたらーー
奴は間違いなく、「超亜人」
だろう。
そんなことを考えていた矢先だった。来矢の耳に衝撃のニュースが飛び込んできた。
『ここで緊急ニュースが入りました。昨晩逃走をした井藤和人死刑囚が、獄中で白骨化し、亡くなっていたのが発見されました。』
「な…なんだって…嘘だろ!?」
「何だと…!」
冷静な来矢も思わず動揺をする。
…和人の死と亜眼。
一体どの様な繋がりがあるのだろうか。
…一刻も早く、亜眼を与えた者を見つけ、食い止めなければならない。
これ以上大切な人を失いたくない。
来矢は拳を力強く握った。
「ちくしょう!!
何も!かもが!クソすぎる…!!!
ダメだ…こんな世の中…腐ってやがる…
消えちまえばいいのによ…!!」
「力が欲しいか…?」
「!?誰だ!誰だよ!?」
「亜能力が……欲しいか?」
紫の禍々しい亜眼が、怪しく動く。