第二話 鉄鎖の悪魔
『緊急速報です。弥斗町の刑務所に収容されていた、井藤和人死刑囚が脱獄し、弥斗町谷田市にて逃走中です。現在警察が追跡中です。市民の皆様は注意してください。』
夜の町に、アナウンスが流れる。
真島は、それを聞き、凍りついた。
「井藤…和人…イトウ……カズト……だと…」
「真島、知っているのか?」
来矢の方を少しだけ見ると、
「ちょっと行ってくる」
と一言放ち、闇に駆けていった。
その眼は、怒りに震えていた。
「なんだ?その程度かクソゴミ…」
「ひぃ…なんだこいつ…銃弾が当たらな…ぐああっ、ガハッ…」
「死ね…【鉄鎖】!!」
掌から放たれた無数の鎖が腹を貫く。
立ち向かう警察官が、次々と倒れていく。
「ハハハハ!もの足りねえな、クソゴミども…まだ8人…もっと殺してぇ!!」
井藤和人。5年前、ひょんな事から人を殺めてしまい、殺人に快楽を覚え、連続殺人鬼となった。長い逃亡の末、確保され、死刑判決を下された。
本日が死刑執行日であったが、脱獄をし、逃走をした。
亜眼を手に入れて。
「さぁ~て…次はどうしようかなぁ…?もっと殺してえなあ…」
「おい…待て。」
「誰ぁ…お前?」
声の主は、なんと真島だった。
「お前は覚えてないよな?俺を。
覚えているわけないか。
でもよぉ…俺は忘れられなぇんだよ。
てめえが憎くて憎くて仕方ないんだよ!!!」
真島の怒号が響き渡る。
「知らねえよクソゴミ。それよりもよぉ…俺に殺されてくれねえかな…」
「…」
そう。
かつて真島は、彼に家族を殺されたのだ。
真島の家族も、連続殺人の事件に巻き込まれてしまったのだ。
目の前で両親を殺された真島は、幸い逃げ出すことができたが、その光景は一生忘れられなかった。
友達には、不意の事故で亡くなったと伝えていた。岸野来矢も例外ではなかった。
「クソゴミ…?クソゴミは…
てめぇ!
だろうがぁ!!」
怒りに満ちた拳が和人の顔に降りかかる。
だが、その拳は命中することなく、空を切った。
「…チッ!!」
「当たらねえよザコが!!」
反撃の拳が、真島の腹を打つ。
「ぐっ…ぐはあ…」
「さあて…今度はこっちのターンだぜ…【鉄鎖】!!」
今度は指から鎖が放たれ、真島に攻撃をしかける。
「くっ…!」
なんとか攻撃を回避したが、そのまま鎖は真島の体を縛りつける。
「ぐああっ…ああ…苦しい…」
「さあて…どう痛め付けてやろうかなぁ…」
和人は鎖を鞭のようにしならせ、そのまま真島をコンクリートの地面に何度も叩きつける。
「あがあぁあっ…ぐぅうあっ…クソが…絶対許さねえぞ…」
最初は鎖をほどこうともがいていた真島だったが、
今ではもう体が動かない。
体の骨は何本も折れ、体は血まみれである。
「まだ喋るか…いい加減に黙れっ!!」
鎖をメリケンサックの様に拳に巻き付けると、思い切り体を殴りつける。
ついに真島は気を失ってしまった。
「止めをさしてやるかな…安らかに死ねっ!!」
和人の拳が真島に降りかかった、その時だった。
「そこのお前」
「お前の相手はこいつじゃない…俺だ。」