第八話 亜眼を狩る者
「俺を殺す…か。
悪いが、俺は生きなければならない。
この亜眼も渡せないな…。」
「だったら実力行使しかねえよなあ。オリジナルさんよぉ。
さあ、殺ろうぜ…?」
「おい、お前…いや、伶斗。
なぜお前は超亜人を狙っている。」
来矢は伶斗に問いかける。
だが伶斗は答えなかった。
「フン…そんなモンアンタには関係ねぇよ。
さあさっさと殺ろうぜ!」
「答えはなしか…まあいいだろう。
だが、ここではリングが狭すぎる。
人通りが少ないとはいえな。」
来矢は解体工事中の廃墟を指差す。
「やるなら…あっちだ。」
「ヒュー!いいねぇ、ああいう雰囲気。さあ行こうか?」
二人は暗い中、廃墟へと歩んでいく。
設置されていた工事中と書かれたバリケードを飛び越え、廃墟へと入っていく。
屋上に立つと二人は準備を始める。
「ククク…楽しみでしかたないね。
オリジナルの亜眼を拝めると思うとゾクソクしてくるぜぇ!」
「お前の事情は知らない。
だが、俺は今ここで死ぬ訳にはいかない。
全力でいくぞ…!」
二人はほぼ同時に走り出す。
拳と拳がぶつかり、戦いの火蓋が切られた。
「いくぞ…!
【雷拳】!!!」
来矢は後退りすると、拳に電気を纏い伶斗に降りかかる。
だが、その拳はあっさりと右手で受け止められる。
「フン…アメーなぁ?」
来矢の電撃は効いていない。
「…【反能力】かっ!」
「その通り。
俺は反能力によって、絶縁人間となったのさ…
俺の体に電気は通らねえよ!」
伶斗の能力【反能力】は、超亜人の亜眼を見ることで、その亜能力に対して有利な力を得られる。
超亜人との一対一の対決では、ほぼ無敵の能力だ。
ただし能力の持続には体力の消耗を伴う。
「直接的な電気攻撃は効かないか…ならばこれはどうだ…!!
【電撃原動機】!!」
今度は足に電気を纏う。
すると、その足は次第に赤くなり熱を帯びる。
「この技は電気によって俺の体の"エンジン器官"を動かし、身体能力を飛躍的に上昇させる…!」
自動車でも追いつけないほどのスピードの攻撃が伶斗を襲う。
「【迅雷拳】!!」
その拳は伶斗の腹に直撃する…が、伶斗は笑っていた。
「がぁっ…!!
全く速いねえ…でも残念だったなあ!」
来矢の足元に仕掛けられていた罠が作動する。
「…しまった!?」
「「【反能力爆弾】!!」」
大きな爆撃が発生し、来矢は大きなダメージを受け後ろに飛んでいく。だが、屋上の床はダメージをほとんど受けていない。
「ぐっ…ハァ…ハァ…」
流石にダメージが大きく、身体中に傷や痣がたくさんできてしまった。
「ククク…こいつは俺の反能力の対象となっている者のみに反応し、ソイツだけに大きなダメージを与える爆弾さ。
俺の能力は有利な力を得るだけじゃねえんだよ。」
「くっ…まだ…まだだ!」
「諦めがわりぃなクソ!」
伶斗の前蹴りが来矢を突き飛ばす。
「がぁあっ!?」
倒れた来矢に伶斗の追い討ちがかかる。
「ヒャハハハハ!!
死ね!!死ね!!!死ねぇえええ!!!」
伶斗は拳で何度も来矢を殴り付ける。
だが、来矢の闘志はまだ尽きていなかった。
「……掴んだぞっ!」
伶斗の拳を見切り、腕を掴む。
「チッ……やったなァッ!?」
「こいつを…食らえ…!!!
【閃雷拳(せんらいけん】!!!!!」
カウンターの一撃が入る。
拳は伶斗に命中したが、その電撃はやはり通らない。
「閃雷拳ですら……通らないというのか?」
「フン…お前の攻撃なんぞ普通のパンチと同じなんだよ。
今のは軽く150万ボルトか?
恐ろしいねえ…"歩くスタンガン"かぁ?ククク…
でもよ…俺にその程度の電撃は効かない。
俺は世界で最も強い絶縁体だ。
スタンガン程度じゃ絶縁破壊を起こさねえよ。
ククク…!ハハハ…!」
伶斗の反能力は自分で強度や能力の度合いを決める事ができる。
もちろんとてつもなく大きな電圧も耐えれる様にはできるが、反能力の程度が大きいと体力の消耗も激しくなる。
反能力の唯一のデメリットだ。
「うっとおしいなあ…テメエ…!
お前の電撃は…通用しねえんだよ…!?さっさと諦めてその亜眼を渡しやがれ!!」
「その割りには…随分しんどそうだな?
まだ終わっちゃいない。
お前にはこの亜眼は渡さない…!」
来矢にはあまり体力が残っていない。
伶斗も反能力を連続で使用し、かつ持続させているため、長時間は戦えない。
そして、お互いに分かっていた。
次の一撃でこの戦いは決すると。




