メリーゴーラウンドの恐怖
ここは廃墟と化して数年が経つ裏野ドリームランドと言う小さな遊園地。
低年齢をターゲットに作られたような感じがする。
元々は地域密着型の小さな遊園地で、開園当初は物珍しさもあって人気だった。しかし、時代の流れと新しく大きな遊園地が出来たことにより、徐々に入園者は減り、閉園に追い込まれた。
従業員も少なかったので、遊具に乗る際は待たされたものだ。
このメリーゴーラウンドもそう。
ただ不気味なことが起きると噂がたち、1番人の入りは少ない。
待ち時間はないのだが、誰も乗りたがらないのだ。
その噂はこうだ。
閉園後も電気は消えず、ただ回り続けていると言う。
係員もいないのにである。
電気がついたまま人が一人も乗らないそれは不気味としか言いようがなかった。
そんな噂が噂を呼び、肝試し大好き人間が何人か集まり、そのメリーゴーラウンドに乗ってみようと言うことになった。
大学生四人組である。
「さぁ、何が出るかな?」「なんだよその楽しそうなん喋りは。」「そうそう、ここ…おかしなことが起きるんだよね。」「らしいよ。噂だけどね。」「何だよ〜そのやる気のない喋りは。もうちょっと楽しみながら行こうぜ。おい、ビデオカメラは回してるな?」「ああ、問題ない。バッチリ撮れてるよ。」
僕らは大学の心霊研究会のメンバー。
おかしな事を聞きつけてここに集まったのだ。
部員数は全部で5人。一人足りないじゃないかって?それは仕方ない。
そいつは極度の怖がりなのだ。それなのになぜって?
人数合わせに無理やり参加させられた口だ。
だからここには来ないよ。
そんなことはさておきまずは園内を探索してみた。
どれも今にも動き出しそうなほどまだサビなどは付いていなかった。
でも閉園してからもう何年も経つ。サビが出始めてもおかしくないか?そう言う奴もいた。でも実際はないから何とも言えない。誰がみかねて掃除でもしてるのか?…そう思って近所や遊園地の管理者に問い合わせてみるがそんなことする人はいないと言う。
じゃあ、いったい誰が?分からない。
だが腐っても心霊研究会。タダでは帰れないと管理者に特別に許可をもらうと準備していたテントを広げて園内に寝泊まりする準備を始めた。
簡易テントは簡単に組み立てられ、4つが並べた格好だ。
「じゃあ、1時間後に集合な。忘れんなよ。」「そんなわけないじゃん。」「楽しみだなぁ〜。何が映るかな?」「さっさと撮って帰ろうぜ。」「おいおい、お前もダメな口か?」「な、何言ってんだよ。そんなわけないだろ?そんなだったら今頃は参加せずに自宅でゴロゴロしてるよ。」「だよな〜。」「そうそう、そうだってだから大丈夫だろ?」
話はここで御開きとなり、各々がテントに入って行った。
準備ができてので皆ゾロゾロとテントから出てくる。手には懐中電灯を忘れない。
それでもここからメリーゴーラウンドまではそう遠くない。
歩いて五分の場所にそれはあった。
それほど大きくない。裏野ドリームランドと書かれた板は剥がれ落ちていた。
だいたいがそう…子供が20人ほど乗れればいいところか。大人が乗れないものもあるが、それを除いても僕ら4人は十分乗れた。
「おーい、ビデオ回せよ。何か映るかもしれないからな。」「わかってるって。…にしても暗いなぁ〜〜。」
その時だ。
ガタンと突然大きな音が聞こえた。
ウイーン…。
何かのモーター音か?
突然メリーゴーラウンドの明かりがついて、動き出したのだ。
初めはゆっくりと、徐々に早くなって行く。
「ま、マジだ!動いてるよ。」「噂は本当だったんだ。」「なぁ、おい、どうやって降りる?」「なんで?普通に飛び降りれば…。」
そうは言ったが、降りられそうもなかった。
なんせ、メリーゴーラウンドの周りには人だかりができていたのだから。
ついさっきまで確かに誰もいなかったのに…。
よくみると皆透けて見える気がした。
まさか…霊か?
流石に怖くなった仲間は皆乗り物から降りようとしたのだが、人がいるため降りられない。
しかも霊だ。
恐怖が全身を支配した。
ビデオを回していた奴もビデオから目を離し持ったまま固まっていた。そのビデオカメラを僕はひったくると周りを写し始めた。
「おいおいおい、マジか?もしかして深夜に回るメリーゴーラウンドって霊が回してたってのか?」「ま、まさか…ね。でもさ、どうやってここから逃げる?メリーゴーラウンドはまだ回ったままだし…。いつ止まるんだよ。それに周りの霊達はなんでこない?回ってるからか?」
「そんなの俺がわかるか!そいつらに聞いてくれ。」
仲間の1人はやけになっていた。
で、何かをしようとしている。
何を?まさか…。
ここから飛び出そうってことか?走って。
人の霊がたくさんいるんだぞ。気でも違ったか?しかし、どうやら本気のようだ。目を瞑ってその場で勢いをつけようと準備を始めている。
それをみた仲間の1人も同じように動き出した。
「やめろよ。刺激したらまずいって。」「霊をか?まさか、大丈夫だろ?」「残った奴らはどうするんだ?まさか置いてかないよな。」「なら俺らと同じようにするしかないぜ。とっととここから逃げる。さぁ、どうする?」
仕方なく動ける準備を始めた。
ビデオカメラは回したままだ。
一部始終を録画して後で検証するためだ。
最初の1人が叫び声をあげたと同時に皆一斉に走り出した。そしてメリーゴーラウンドから飛び降りると目を瞑ってその場を走った。誰かにぶつかったという感触はない。
あれだけの人がいたのにである。
それがかえって不気味だった。
テントまで一切何も喋らなかった。
1番遠くのテントに皆一斉に逃げ込んだ。
額からは汗が。。。
しばらくは静かにして様子を伺っていたが、入口の布を少しだけまくって外を見てみた。
霊達がこちらへと向かってきているのがわかった。
「う〜。」とか「あ〜。」とか言っている。
言葉にはなってないようだ。
4人とも真っ青な顔をしていた。
「どうする?時期ここに来るよ。」「なら園内から逃げよう。それが1番だ。」「ああ、そうだな。テントはこのままに必要最低限いるものだけを持って逃げるぞ。さぁ、急げ急げ急げ!」
テントから飛び出した仲間達は慌てて自分達のテントに入り、必要最低限のあるものだけを持って1番奥のテントまで戻った。その頃にはだいぶ近づいていた。
しかし間一髪のところで皆集まることができ、慌ててその場を離れた。
その時ももちろんビデオカメラを回すことは忘れていなかったが。
翌朝、ビデオカメラを見てみることになった心霊研究会の面々はその恐怖に驚く事になる。
映像の中の僕らには霊が張り付いていたのだ。
「な、何だよ、これ…。」
「俺らについてるのか?」
「今朝なんかおかしかったのはその取り付いている霊のせいか?」
「ぼ、僕もうやめるよ。これはヤバイって。マジで。」「おいおい、そんな俺らを見捨てるってか?」「そ、そうだよな。まずありえないよな〜。」
「そんなこと言ったってどうしようもならないじゃないか。」「ならどうする?他に方法はないか?」「そんなこと言ったって…。」
「っあ?!」
何か思いついたようだ。
「ダメ元でお札を持って見たら?それかこれを霊能者に送ってお祓いしてもらうって〜の。テレビとかであるじゃん。それを試そうぜ。」「なんか…こう…うまく丸め込まれたって感じだな。まっいっか。試してもいないからやってみる価値あるだろうしね。」「じゃあ早速。」
友達は言うが早いかビデオテープをディスクにうつしてある番組に送った。それはよくある心霊番組だ。採用されればお祓いだってしてくれるに違いない。そう踏んでのことだ。
そして結果はそう願った通りになった。
物語として放送され、有名らしい霊能者にお祓いもしてもらえる事になったのだ。たすかったぁ〜〜。正直な感想だ。
その遊園地はアルファベットで某県のU園地として紹介された。それだけでわかる人はわかるだろう…。
僕らは2度とその遊園地に足を踏み入れることはしなかった。
置き去りにした荷物はどうしたかって?
そのまま放置だよ。放置。
取りに行く勇気もない。
それほど怖かったのだ。
その裏野ドリームランド、そのまま放置されているらしい。
だとすると僕らみたいな奴らが足を踏み入れる可能性も。
それはまた別の話。




