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汐坊の『哉カナ』   作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
90/103

GスタⅢ


 Gスタのふく調整室ちょうせいしつへ、

 ゆずが、

 姿すがたせた。


 プロデューサーの乙骨おっこつに、

 丁寧ていねい挨拶あいさつをする。


「おーう、うわさのユッ(ピー)か!

よろしくたのむぜ。

きびしいことうかもしれんが、

作品さくひん完成度かんせいどのためだ。

えてくれよ!」


「はい、

こちらこそよろしくおねがいします!」


「ユッ(ピー)

いま、みんなメシ休憩きゅうけいなんだ。

ディレクターに案内あんないさせるから、

まえさんも、はらごしらえしてこいや」


食事しょくじ結構けっこうです。

それよりも、

リハのプレイバックをかせてください」


「おう、熱心ねっしんだな。

リハは、

まだ半分はんぶん消化しょうかしたばかりでな」


 乙骨おっこつは、

 ディレクターにいつけ、

 身重みおものゆずに、椅子いすを、用意よういさせた。


 ヘッドフォンを装着そうちゃくしたゆずは、

 真剣しんけんかおつきで・・った。


 咳払せきばらいも、

 ためらわれるような空気くうきかもしている。


 乙骨おっこつPは、

 アゴをしゃくると、

 ディレクターをともない、

 コーヒーをみに、ふく調ちょうをはずした。


 スタッフが一人もいないふく調整室ちょうせいしつで、

 ゆず録音ろくおんされたリハを、

 音声おんせいドクターのようにいていた。

 そして、

 残念ざんねん・・

 わる予感よかん的中てきちゅうした。

 ドラマの疾病しっぺいけてしまったのだ!


 とたん・・

 彼女かのじょ顔色かおいろは、どすぐろく、変色へんしょくした。



 食事しょくじ休憩きゅうけい終了しゅうりょう


 つぎは、

 トンネル(・・・・)隠語いんごばれる、

 (のこすところ、あと半分はんぶんまでていた)

 不出来ふできなチャプターの「トリートメント・リハ」であった。

 が・・

 プロデューサー判断はんだんで、

 急遽きゅうきょ

 90分の「とおしリハ」へと変更へんこうした。


 せっかく、

 オール・キャストがそろったのだ。

 全体ぜんたいのアンサンブルの具合ぐあい

 なにより、

 左近さこんマネによる、

 ムリしキャスティング(レア・ケース!)

 ゆずの、

 実力じつりょくのほどを、

 乙骨おっこつ確認かくにんしておきたかった。


とおしでリハきます。

90分間だ!

みんな、気合きあいいをれろ!」

 乙骨おっこつPの、

 ガラガラごえひびわたる。


 しおりとゆずは、

 にっこりアイ・キャッチ!


「よーい、スタート!」



 ━ 94分18秒経過けいか


 とお稽古げいこは、

 四分よんぷんきょう しで・・終了したした。


 ゆずは、

 期待きたい上回うわまわ演技えんぎ披露ひろうし、

 乙骨おっこつPの相好そうごうくずさせた。


 かきごおりばいする、

 女子高じょしこうせいのキャラが躍動やくどうしていた。

 

 ことに、

 しおりとのからみの場面シーンは、

 漫才まんざいコンビのようにいきい、

 興味きょうみらさなかった。

 また・・

 リアクト巧者(こうしゃ)っぷりは、

 共演者きょうえんしゃやスタッフを感服かんぷくさせた。

 しおりすアドリブを、

 (けっこうなヒネリだまじっていた)

 めいレシーバーよろしく、

 ことごとくってみせたからだ。



 とお稽古げいこ終了しゅうりょうすると、

 しおりは、

 イライラしたようすをはじめた。

 

 めた空気くうきがスタジオ内外ないがいはしる。


 「どーかしたか、汐坊しおりぼう?」

  マイクしに、乙骨おっこつP。


 しおり左右さゆうくび素早すばやり、

 センターマイクをつうじて、

 ドラマの完成度かんせいど阻害そがいしている、

 問題点もんだいてんを「ふたつ」指摘してきした。


 ひとつめは、

 ばいのときに、あゆムが、子供こどもたちとれあうところ。

 ドラマの・・「かせどころ」・・である。

 この場面シーン不満ふまんをのぞかせた。

 子役こやくではなく、

 ちで大人おとな声優せいゆうえんじていたからだ。

 たくみなことはたくみではあるけど・・どうもウソっぽい。

 そう、Pに進言しんげんした。

 すると 「予算よさん都合つごう」 という大人おとな事情じじょうで、

 ニベもなく却下きゃっか

 

 うーーん、

 それにしてもしいな・・

 子役こやく使つかえば、

 場面シーンにもっとゆたかなふくらみがるのにィ。


 ふたつめ、

 こちらのほうはゆずらなかった。

 ライバルの先輩せんぱいやくへの恋心こいごころ

 芽生めばえ、

 そだっていくプロセスがイマイチ表現ひょうげんできていない。

 つたな自分じぶんはらつ!


「そんなことはないぞ、しおりぼう

男性だんせいあゆム変装へんそうした主人公しゅじんこう微妙びみょう乙女心おとめごころ

恋心こいごころ的確てきかくてる。

客観きゃっかん的な立場たちばにあるものほうが、

正確せいかく判断はんだんできる場合ばあいもある。

オレの言葉ことばしんじるんだ」

 乙骨おっこつPはお世辞せじきでった。

 副調ふくちょうにいるスタッフもうなずいている。

 

ちがうのよ!

ちがうんだったら!

なにかにけている!

もーう・・鈍感どんかんなんだから・・きょうは終了しゅうりょう!」

 そういいはなつと、

 しおり

 スタジオからってしまった。

 

 ふく調整室ちょうせいしつでは、

 録音ろくおんしたドラマがプレイバックされ、

 問題もんだいのシーンは、スタジオないにもながされた。


「どうおもう、おまえら?」

 腕組うでぐみした乙骨おっこつPは、

 ディレクターやスタッフにたずねた。


「さあ?

どこがにくわないのか・・さっぱり」

 スタッフ一同いちどうくびをかしげた。

 


 副調ふくちょうかって、

 ゆず

 両手りょうてをパタパタっていた。

 それをディレクターが見止みとめた。

 Pに知らせる。

 マイクをONにして、びかける乙骨おっこつ


「どうした、ユッ(ピー)?」


汐坊しおりぼうわんとするのは、

恋心こいごころ表現ひょうげんがテクニック・オンリーで、

こころけてるってことじゃないかな?

リアリズムを、もとめてるんだとおもう。

彼女かのじょ・・いま・・

大人おとなへの階段かいだんのぼろうと・・もがいている」

 ADのインカムを拝借はいしゃくしてつたえた。


 Pは、

 ひくうなごえげると、

 ふたたび、

 腕組うでぐ姿勢しせいはいる。

 かれ周囲しゅういにはバリヤがられた。 


 汐坊しおりぼうのイマジネーション・ベースの演技えんぎでは、

 カバーできない領域りょういき

 ♡ 恋愛れんあい感情かんじょう

 こいつばかりは経験けいけんという種子しゅしがないと、

 かないってヤツか。

 

 どうする・・?

 方策ほうさくは・・?

 ・・時間じかんせまってきているのだ!


 Pのバリヤをやぶるべく、

 ユンケルを一気いっきみするディレクター。

 即席そくせきパワーでレッツ・トライだ!


乙骨おっこつさん、

乙骨おっこつプロデューサー!

・・んでます」


 バリヤないへの不法ふほう侵入者しんにゅうしゃに、

 Pは、

 凶悪きょうあく視線しせんけた。


「ぼくじゃありません!

ぬししたです。

スタジオからです!」


 またしても・・ゆずだった。


 彼女(かのじょ)は、

 アドレナリンを放出ほうしゅつさせ、

 キッ!としたつきで、インカムにかう。

「プロデューサー、

名案めいあんかどうかはからないけど、

うちの提案ていあんいてください。

現状げんじょう打破だはできる可能性かのうせいありです」


ってみてくれ」


 ユッ(ピー)特攻とっこう提案ていあんは、

 乙骨おっこつ逆鱗げきりんれた。

 地雷じらい地雷じらい・・おお地雷じらい

 四分しぶ五裂ごれつどころのさわぎではなかった。


 スタッフ、キャストはかたまってしまった。



 変装へんそうしたしおりは、

 きょくにたむろしているマスコミじんを、

 軽々(かるがる)やりごし、タクシーをひろった。

 遠回とおまわりしながら、

 尾行びこうしゃのないことを慎重しんちょうたしかめ、

 目的地もくてきちかう。


 滞在たいざいちゅうのスイートルームにもどると、

 午前一時(25時)をまわっていた。


 ギドから進呈しんていされたかんビールを、

 バッグからし、冷蔵庫れいぞうこにしまう。

 それから、

 シャワーをび、

 ルームサービスでサンドウィッチとミルクティーをった。

 本当ほんとうはビールがみたかったが、

 みそ)ぎの最中さいちゅうなのでガマンした。


 メールやラインをチェックする。

 複数ふくすうつう着信ちゃくしんがあった。

 ドラマのリハに夢中むちゅうで、

 スマートフォンをのぞくヒマがまるでなかったのだ。

 

 チキンサンドをほおっていると、内線ないせん電話でんわった。

 来客らいきゃくらせ。


とおしてください」とい、受話器じゅわきいた。

 

 ノックのおと


 ドアをける。

 

 里見さとみ探偵たんていっていた。


 しおり片眉かたまゆ鋭角えいかくがる。

 ・・んでるなんとやら・・

 ちょうどいい、ストレス解消かいしょうざいが、やってきたワイ。


 経費けいひのムダづかい、

 とくに・・情報じょうほう収集しゅうしゅうという名目めいもくで、

 相当そうとう金額きんがくそそまれいた。


 遅々(ちち)としてすすまぬ依頼いらいけん

 余裕よゆうくずさない探偵たんてい物腰ものごし

 どれもこれもが腹立はらだたしい。


 応接おうせつルームで、

 かいにこしかける、

 依頼人いらいにん探偵たんてい


「これは、これは、里見さとみさん。

夜分やぶんおそくに、たずねていただいて」


失礼しつれいしました。

何度なんどか、

電話でんわやメールをげたのですが、

タイミングがわるかったようで。

笹森ささもりさんのおかえりを、ロビーでおちしておりました」


「わたしのほうから、いくつか質問しつもんがあります。

よろしいでしょうか?」


「そのまえに、

みず一杯いっぱいいただけるとありがたいです」


 しおりは、

 冷蔵庫れいぞうこからミネラルウォーターをりだすと、

 キヤップをまわし、

 自分じぶんだけコクコクんだ。

 里見さとみには、

 洗面所せんめんじょみずを、

 歯磨はみがき用のプラスチックのコップにれて、

 ぞんざいにテーブルへいた。

 もちろんこおりなどはなし。


 里見さとみなまぬるいみずをひといきんだ。

 コップをくと・・開口かいこう一番いちばん


事件じけん解決かいけつしました!」

 


 しおりは、

 椅子いすから60センチほどがった。





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