乙骨P
企画会議では、
タレント笹森 汐の特性を、
生かすには・・どうすべきか?
聖林プロダクションの製作次長、
左近マネージャーも出席しての、
喧々諤々のディスカッションが重ねられた。
その結果、
プロデューサーの
強引かつ、
意表をついた提案が通ることになった。
生ワイド番組全盛の現在、
傍流になってしまった、
『ラジオドラマ』の復活、再生、ヴァージョン・アップ!
番組のメインに・・
『ラジオドラマ』を据えるのだ。
汐の経歴(アテレコ経験)から、
かんがみても妥当な線であった。
元大学ラグビーのスタンドオフ(花形)、
乙骨プロデューサーは、
ガラガラ声で、
このように宣言した!
「いまどきの『ラジオドラマ』てのは、
どいつもこいつも、
朗読劇に、
毛の生えたような代物じゃねーか!
音の設計が、
クソみてぇーにダセぇーんだよ!
製作費と、
想像力の欠如。
貧乏たらしいったらありゃしねぇ。
オレはアイディアと金を使って・・本物をやる!!」
いまもって汐は・・
乙骨プロデューサーに、
ラジオ局で、
初めて対面した時の事を忘れることはできない。
あいさつをしたとたん、
いきなり、おデコを小突かれたのだ!
それも、
けっこう強い力で!
あったまに来たので、
グイと睨みつけると、
濃いサングラスをかけた乙骨は言った。
「補欠合格!」
理不尽な行為に、
怒りの収まらない汐は、
文句を言ってやろうと口を開きかけた。
しかし・・
黒く濃い、
サングラスの向こう側から、
送信されてくる、
波動に触れたとたん口をつぐんだ。
・・つぐまざるをえなかった。
「ふむ!
どうやら感じる力はありそうだな。
よーし、合格!」
そう・・言葉をかけてくると、
乙骨は、
豪快に笑った。