DVD鑑賞
里見探偵は、
図書館へ寄り、
夕食を済ませ、
コンビニで買い物をして、ホテルに戻った。
フロントには、
助手として・・昼間ドライバーをつとめていた、
南平が入っていた。
「里見さん。
あのあと、なにか、収穫はありましたか?」
「なにも・・
今のところ、
ガス状だ・・
形が・・まるで・・視えてこない」
疲れた表情の里見は、
ルームキーを受け取ると、
エレベーターへ乗り込んだ。
部屋に戻り、ひと息つく。
それから、シャワーを浴びた。
冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
プシュ!
プルトップをあけ、ビールをのどに流し込み、
コンビニで買い求めたピスタチオを食べる。
椅子に腰を落ち着け、
ノートパソコンを立ち上げた。
気分転換のDVD鑑賞である。
レンタルしてきた、
エクスペリエンス映像の ━ 『女子学生篇』。
人気ナンバーワンの ━ 『ぬぷヌプ』。
どちらにしようか迷ったが、
レンタル店で見た、
パッケージ妖気が記憶に残る、
前者に決めた。
ディスクを挿入。
読みとるのを・・しばし・・待つ。
ベッドに腰かけて、
二本目の缶ビールを飲みながらモニターを見つめる。
タイトルが映し出された。
直後に、
強烈なバックライトを浴びた、
シルエット姿の、
真っ黒な人物が登場!
字幕がかぶさる。
■「シルエットの人物を、
60秒間見つめて下さい」■
■「それはあなた自身なのです」■
「なんだい?こりゃ?」
里見はマウスを操作。
早送りする。
ようやく、本編が始まった。
おおっ!と声を出しそうになる、
超美形が登場。
「初めまして、
私の名前は、
小倉カレン。
年齢は18。
スリーサイズは、上から・・」
ノーブルな表情の小倉カレン。
彼女が・・
外見を裏切るような、
(小さじ一杯)子ネコの入った仕種と、
可愛らしい声で話しかけてくる。
「なるほどね!」
里見には、
クリエイター側の意図が、読めた。
映像は徹頭徹尾、一人称で展開。
キャメラ(イコール)里見。
・・すなわち・・
DVDを見ている里見と、
超美形の小倉カレンが、
リアルにデートしている感じを狙っているのだ。
カレンは、
キャメラ=里見に向かって、
「あなたといると楽しい」などと言う。
見ている里見の方は、
なにやら、
こそばゆくなってきた。
テーマパークでデートしたあと、
レストランで食事(食べさせっこしたりするのだ)。
「はーい、アーンして!」
カレンが、
囁くように、甘く言う。
モニターに向かって、
思わず、
口を開きかけた里見は、
自分の頬を、一発、張った。
ラストは・・ホテルでの・・初体験。
ベッドの中で震えている彼女・・
か細い・・あえぎ声・・
しだいに、
昇り詰めていく・・
荒い吐息・・
額に浮かび上がってくる小粒の真珠汗・・
断続するさざ波・・
位相がなだらかに変化してゆく・・
やがて大波が・・
絶頂へ突き進む。
カレンの頬を伝う・・ひと筋二種(切なさと喜び)の・・涙。
━ 動画終了━
しめて、四十五分。
視聴者 (イコール) キャメラ、
の実験精神は、おおいに買うが、
残念!
成功作とは、いえなかった。
笹森 汐主演の『小さな太陽』。
あの映画のアクション場面で、
主人公の視点が、
瞬間 一人称(キャメラ)へ転じたのは、
━地雷回避━
賢い成功例といえる。
小説とは違い、
動画での、
全編一人称は、
映像の『金メダル』みたいなもんだ。
不可能ではないだろうけど・・ひどく難しい。
それにだ・・
これだけのモデルなら、
普通に、
見せてくれた方がありがたい。
南平の忠告は正しかった!
1000円の損失。
気を取り直して・・・
里見は、
『ぬぷヌプ』と選手交代した。
依頼人には申し訳ないが、
期待に胸躍る。
ファーストシーンは、
ラジオ局でマイクに向っている、
DJアイドルの後ろ姿。
へヴィ・メタ♪がかぶさる。
映像が躍動している。
感覚が優れている。
真っ正面から、襟首を掴まれたみたいに、
画面へ、
グイ!と引きずり込まれてしまう。
切り変わる場面。
キャメラは、
アイドルを正面からとらえた。
愕然とした!
髪形と声以外・・は、
さっぱり似ていないではないか!
DJアイドルに良く似たなどと、
よくもまあ・・
白々しいコピーが書けたもんだ。
詐欺ではないか。
レンタル料を返せ!
しかし・・
画面を見ているうちに、
背すじがゾワゾワし出し、
異様な気分が横溢・・
胸がキリキリ締め付けられた。
この・・DJアイドルとは、
似ても似つかないモデルが、
いざ・・コトを・・始めると、
モノ凄いのだ。
自我をゼロへと消し去り、
白目を剝き、
行為と一体化してしまう。
Hの深海とも言うべき、
トランス状態。
こんな・・
弩級なAVは初めてだった。
DJアイドルによく似たというのは、
(外見ではなく)
ジャンルこそ違え、
深みに到達できる、
その才能を指しての、
たとえだったようだ。
看板に偽りなし!
生ツバを呑みこんで、
見入ってしまった・・里見であった。




