新しい世界へ
マネージャーの奔走が始まった。
汐の言葉から、
情熱から、
希望へのレールが、
左近の頭の中に、
一瞬にして連想され、幻視されたのだ。
レールを敷設するためには、
どのカードを・・どの順序で・・切っていけば・・
事務所を動かせるのか?
その手段までもが、
鮮明にイメージされた。
T・E・ロレンス率いるアラブ軍による、
「アラブの反乱」を描いた、
英国映画の、
一場面が脳裏に浮かんだ!
(アカバ攻略だ!)
(タレントの直観に賭けてみよう!)
(のるか・・そるか!)
(勝負に・・打って出るときが来た!)
三流マネージャーから、
「三流」の二文字が消え去ったモメントであった!
かくして、
山は動いた!
思惑どおりコトは運んだ。
いいや。
左近が・・
死に物狂いで・・
布石を打ちまくり・・
そのように仕向けていったのだ。
プロダクションも、
重い腰を上ざるをえなかった。
ついに、
企画は立ち上がった。
野心的なプロデューサーの、
全面協力を取りつけ、
才能豊かな、
構成作家を迎えて、
━(土曜の夜。二時間の特番)━が、
組まれることになった。
番組名は・・
『笹森汐のラジオ哉カナ☆』
東京放送をキーステーションに、
全国36局で、
ネットワーク放送されることになった。
これは、
電波に乗って、
汐の声が、
日本全国に届くことを意味していた。
ラジオという新しい、
世界に踏みだしていくことになった、汐。
彼女は、
そこで、
強烈な個性と出会うことになる。