Who are you? あなたは誰?
目が覚めた。
(いつの間にか眠りに落ちたらしい)
しばし・・深呼吸をする。
横になったまま、部屋を見まわした。
畳の匂いのすがすがしい、
整然とした・・和室である。
室内に掛かっている、
水墨画に、目が行った。
次いで、
窓の方へ、視線を移動。
横目で・・外を・・眺める。
おぼろな波動を感じた汐は、
やおら、立ち上がり、
窓へと・・歩みを・・進める。
水墨画の構図と、
この部屋から見た、
微かに雪を被った、山の景色は、
同一 であった。
こういう、
通好みな凝り方は(汐的には)グー♪である。
襖絵も、
同じ山をあしらったもので、
具象画ではないのに、
山の息吹が伝わってくるようであった。
見ていて、飽きが来ない。
ポイント使用されている
「青」は、
α波を、誘引してくれる。
さすがに・・
一流旅館だけのことはある。
お客の疲れを癒すための、
細かい配慮に・・抜かりはなかった。
涼にいちゃんのとこの、
『設楽』のモットーである、
小さな工夫の、ゴージャス版 也だ。
ガラス戸を、開け放ち、
冷たい風を・・導きいれる。
全身で、
風を感じる。
仕事上の、
もやもやした気分が・・消し飛んでいく。
汐の呼吸は、
ゆったり整えられて、深いものになっていった。
卓の前に、
ひざを崩した体勢で座り、
お茶を淹れ、
木目の小皿に乗っている、菓子をつまんだ(もぐもぐ)。
リモコンを手に取り、テレビのスイッチをONにする。
ザッピングしながら、
画面を、
無 集中状態 で見つめる。
BS放送で、
インカレ(大学対抗)の、
女子バスケットボールの試合が、ライブ中継されていた。
「なにも考えたくない時には、
スポーツ中継に限るっしょ!」
つぶやく汐。
リモコンを、
木製の卓上に、そっと置いた。
画面を漫然と・・眺めている。
途中出場した、
ある選手のプレイを、
見た瞬間、
画面に・・
吸い寄せられ・・
五感は「ズン!」と覚醒された。
「このヒト・・なに者?・・凄ォーい!」
桁数の多い・・背番号から・・察するに、
新人選手のようだった。
際立っていて、なおかつ、ムダのない動き。
ボール・レーダーが備わっているかのようなプレイ。
驚異的な身体能力。
非凡の一語に・・尽きる!
失礼だけれど・・
他の選手は、
マネキン人形のように、見えてしまう。
ポニーテールの女子選手は、
赤いフレームのメガネを、かけていた。
ボールをキャッチ!
ドリブルを爆発させ!
マークを振り切り!
ゴールへと疾走!
ダンクを放りこんだ!
水を打ったように、シーンとする、会場。
テレビの解説者は、
しばし・・
絶句したあと・・
「信じ・・られませんねえ」
ようやく、言葉を、絞り出した。
彼女の活躍は、なおも、続いた。
いつの間にか、
汐は、
ふかふかした座布団の上で、
正座をして、
試合に見入っていた。
汐の熱視線は、
女子選手の駆使する、
派手なプレイではなく、
一見・・地味だが、
ゲームの流れを、
対戦相手に渡さない(カンどころをはずさない)
プレイスタイルの方へと、
焦点を絞り、レーザー照射されていた。
味方の放った、
方向のそれたパスを、
彼女は、ほんの微かに、
(数cmくらい)
体勢を変え、糸を引くように、精確にキャッチした。
まるで・・映像を、
逆再生させるがごとく、
ボールを吸い取るように、受け止めてしまえるセンス。
背骨のある・・スキル。
自然きわまりない、プレイに見えるけれど、
それは・・
果てしない地層の上に成り立っているのだ。
努力の末に獲得したスキルなのか?
それとも・・天性??
「私の演技に、
決定的にかけている もの が・・コレ!
この背骨!」
「閃きの光源で、
現状では、
覆い隠されているけれど、
いずれは、馬脚を露にするであろう、
私の・・最大弱点!」
「・・だから・・
共演者が・・リアクトに・・戸惑ってしまう」
「私の演技は、ナイフのように鋭利!
だからこそ・・遠からず・・行き詰まる」
「彼女のような、
背骨スキルが・・欲しい!・・必要なの!」




