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汐坊の『哉カナ』   作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
55/103

続・・・めんちゃも屋


 クライマックスは、だい会場かいじょうでの・・「ばい


 そこでは、

 ロックバンドのコンテストも、同時どうじひらかれていた。


 あゆム(=) しおり は、一計いっけいあんじ、行動こうどううつす。


 『めんちゃも』の露店ろてん舞台ぶたいて、

 ドぎもくギタープレイを・・披露ひろうする。

 大量たいりょう集客しゅうきゃく成功せいこう

 

 ついに、

 満塁まんるいホームランを、かっばす!

 

 しおりにはピンときた!

「この脚本ホン・・『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(’85)にインスパイヤされておるな!」


「その気持きもち、ちょうわかる!」


「あの面白おもしろさは、破格はかくだったもん!」


「ふーっ」

 脚本ホンじて、

 後部こうぶ座席ざせきに、ぐったりをあずける。

 多量たりょう手汗てあせを、ハンカチでぬぐう。


集中しゅうちゅうりょく使つかいすぎちゃった!)

はやおくりで「ひとなつ」をけたみたい!)


 スゴイ・・疲労ひろうかん


 しおりあたまなかから、

 無数むすうひかり粒子りゅうしが、

 彼方かなたへ、吸引きゅういんされていくように、

 次々(つぎつぎ)と・・ていく。


 とたん・・

 うしなったように・・ねむりこんだ。




 午前七時、すこまえ

 ハイヤーの運転手うんてんしゅこされ、

 タイアップさき旅館りょかん玄関げんかんまえりた。


 身体をブルブルっとふるわせる。

 鉛色なまりいろそらから、

 例年れいねんより一足ひとあしはやゆきっていた。

  

 きたは、さむかった。


 チェックインには、

 非常識ひじょうしき時間じかんで・・けたけれど、

 旅館りょかんがわは、

 女将おかみをはじめ、

 数人すうにん仲居なかいさんが、

 したにもかない態度たいどで、むかれてくれた。


 左近さこんさんの、まわしのおかげだ。


 わたし突飛とっぴ行動こうどうを、いつも手ぎわよくフォローしてくれる。

 マネージャーのかがみである。


 なによりまず、あたたかい紅茶こうちゃが、みたかった。

 部屋へや用意よういととのうまで、ロビー待機たいきである。

 仲居なかいさんに、荷物にもつをあずけ、ミルクティーを注文ちゅうもんする。


 キャップを目深まぶかにかぶり、

 目立めだたないコーナーに、こしかせた。


 ロビーは、

 快適かいてき暖房だんぼうがきいており、

 かわりの椅子いすは、すわ心地ごこちく、

 かわのいいにおいに、疲労ひろうやわらいだ。

 まどこうは、綿わたのようなゆきが、っている。

 しおりのいる・・こちらがわは・・ポッカポカ。


 「なごゆき、、かな

  しおりは、ほっこりとつぶやいた。 


 新聞しんぶんり、

 記事きじとすと、

 あたたかさと安心あんしんかんで、

 まぶたが・・トロンとおもくなってきた。


「お紅茶こうちゃまえに、どうぞがれ」

 おちゃものはこばれてきた。


 まずは、おちゃむ・・ ごく!

 つづいて、

 ツマ楊枝ようじ使つかい、漬物つけものくちはこぶ・・ ポリポリ!


「うわっ、この漬物つけもの、おいしい!」


 もう一度、

 お茶を・・ごくごく・・む!

 漬物つけものを・・ポリポリ・・いただく!


 ごくごく・・ポリポリ

 ポリポリ・・ごくごく


 あっというに、

 ものとおちゃは、なくなった。


 旅館りょかん従業員じゅうぎょういんたちが、

 とおきに、

 しおり姿すがたながら・・ひそひそばなしをしていた。


 かれらは、それぞれ、

 サイン色紙しきし手帳てちょうっている。


 即席そくせきのサインかいをすませ、

 紅茶こうちゃみつつ、

 ぼんやり新聞しんぶん活字かつじっていると、

 人影ひとかげが、こちらに、ちかづいてきた。

 

 かおげると、

 見知みしらぬ男性だんせいの・・姿すがた


 がたい(・・・)のある中年ちゅうねん男性だんせいで、

 全身ぜんしんびしょれだ。


 しおりこころなかで、したちした。

「(プライベートなんだから・・そっとしておいてよ!)」


「 ・・・ 」 無言むごんの汐。


「 ・・・ 」 男性だんせいもまた、無言むごん

 

 沈黙ちんもくのお見合みあい(映画えいが題名だいめいみたいだ)。


 へん解消かいしょうしようと、

 こちらからはなしかけてみる。

「なにか、ごようですか?」


「 ・・・ 」

 相変あいかわらず、だまりこくっている男性だんせい


 ホテルの従業員じゅうぎょういんたちは、

 有名人ゆうめいじん身辺しんぺん警護けいごしようと、づいてきた。


 片手かたて無音むおん)で、

 従業じゅうぎょういんたちをせいする、しおり


 バッグからシルクのハンカチをして、

 男性だんせいやさしく、した。


「とりあえず、これでぬぐってください!

カゼをきますから。

ちょっと面積めんせきりないけどネ」


 そういってから、

 従業員じゅうぎょういんに、

 タオルをってくるよう依頼いらいした。


 男性だんせい表情ひょうじょうが・・すこしユルむ。

 をそらすと、

 言葉ことばはっした。


「よう、元気げんきそうだな!」

 やすびかけ。


「?」

 どこかで、いたことのある・・ガラガラごえ


「オレだよ・・汐坊しおりぼう

 むねポケットから、サングラスをいて、かけた。


「あっ!

乙骨おっこつさん!」

 サングラスをった素顔すがおは、

 意外いがいや、

 真面目まじめ人間にんげんふうであった。

 (ふだん、めったにサングラスをハズさないひとなのだ)


「ポルシェで、ぶっばしてきたんだが、

途中とちゅうで、エンストしやがって、

エライにあったぜ!」

 くちひらくと、

 まぎれもなく乙骨おっこつプロデューサーだった。


「どうしたんですか?

わざわざ、こんなところまで?」


しおりぼう、スマン。

なまドラマはめだ。

中止ちゅうし

いくらなんでも無謀むぼうだった。

カンベンな!」


 大柄おおがらなPが、

 いつもよりひとまわり、ちいさくえた。

 威圧感いあつかんも・・ない。

 

 しおりは、みぎヒジをゆみのようにき、

 乙骨おっこつのボディに、

 パンチのを、ちからいっぱいはなった。


「ウグググググッ!」


「わたしは、るよ!

以上いじょう

バイバイ!」


 しおり黒髪くろかみをヒュッとなびかせ、

 むかえの仲居なかいともに、

 ロビーからった。


 乙骨おっこつPのこころに、

 一陣いちじんかぜが・・いた。


いたぜ、いまのパンチ!

よーし!強行きょうこう突破とっぱだ!

最高さいこうのオンエアにしようぜ!」


 旅館りょかん部屋へやはいったとたん、

 しおりは、うなごえげた。

 

 スマートフォンとにらめっこして、

 過密かみつなスケジュールのやりりを算段さんだんする。

 予定表よていひょうはスキのいくらい、められ、まっくろけであった。


 ついに・・

 『にちワイ』の牙城がじょうまで、

 くずされてしまった。


 ロケの合間あいまって、

 というか・・こじけて、

 東京とうきょうとの、

 をしなければならない。


 宴会えんかいなど、

 ゆめのまたゆめ


 睡眠すいみん時間じかんすら、

 ろくにない始末しまつだ。


「どうしても、ラジオのなまドラマを・・りたい!」


 乙骨おっこつPを誤解ごかいしていた・・自身じしん後悔こうかいねんが、

 そう・・さけばすのであった!


 ただし、

 リハは、綿密めんみつおこな必要ひつようせいありだ。

 

 うすあじ仕事しごとだけには、したくない。

 テクニック主体しゅたいでいっちゃえば・・らくなのだが、

 不完全ふかんぜん燃焼ねんしょう・・後味あとあじわるさはいなめない。


 「げ」の仕事しごとなら、それでもいいのだが、

 なまドラマは「め」のほうである。


 乙骨おっこつさんとの仕事しごとは、

 宿命的しゅくめいてきに、

 そういっためんが・・きまとう。


 Pの座右ざゆうめいは・・『のるか、そるか』


「わーん!時間じかんしいよー!」


 しおりは・・コテン!と・・タタミにころぶや、

 断末魔だんまつまのようなこえげ、

 ハイピッチで、

 手足てあしをバタバタさせた!


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