イメージ・トライアル
イメージ ━ ━ それらは明らかに ━ ━ 夢とは別種のもの。
渦中にありながら、
それを ━ ━ 客観視している自分が ━ ━ 確実に在る。
たゆとうような・・
イメージ画像を視ながら、きょうの反省点を・・復習する。
そして若干の予習も。
手ごわいインタビュアーに・・どう対応したら・・いいのか?
記者の発する雰囲気。
表情。
口調。
エグられるような質問に、
無表情を装う・・ありがちな対抗策を、
相手に見透かされて、
かんたんに切り崩されてしまう・・自分自身の未熟さ。
記者の口臭・・タバコの匂いまでもが、
鮮明に映じ、
心を締め付ける。
客観の側へ・・
主観が浸食してくる。
どうにも耐えがたい。
生臭い油を・・無理やり・・飲まされているよう。
それにしても・・
他人の目は・・怖い!
記者の嗅覚は・・鋭い!
私の発言と行動は、
思慮分別を欠いていたと・・今さらながら・・反省する。
時と場所を弁えなければ。
だからといって、過剰防衛も避けたい。
・・人間らしくないもの。
動揺してしまった自分が・・恥ずかしい。
もっと、ハートを鍛えなけりゃ!
ご贔屓な、あの映画に、出てくる・・
包帯を巻いた・・闇なヒーロー・・みたいに。
予行演習は、ここで、終了。
ここからがイメージの本番となる。
イメージの行動療法にトライアルする。
汐は、
かねてから、
深刻な悩みを・・かかえていた。
いまだ、
突破口を、見つけることが・・できていない。
まず第一に・・努力。
現実世界で行う努力が大切なのは・・言うまでもない。
これは当然である。
努力なくして進歩なしだ。
ただし・・
それだけでは・・┃限界┃を・・突き破れない・・ケースも存在する。
そのための・・イメージ思行・・なのだ。
━ ひどくデリケートで、『女優・ 笹森汐』 の、根幹をなす部分 ━
いまのままでは、確実に、先細りしてゆく。
女優生命は・・
・・十代で・・
・・燃え尽きてしまうに違いない!
私の・・演技には・・背骨がない!!
現時点では、
洪水のような閃きが、弱点をカバーしてくれている。
ノリのいい時はもちろん・・
ピンチに陥ったりすると・・
━ バキューン! ━ と閃き☆
その光芒が、
目眩ましの役目を果たしてくれている。
こんな状態が、永く続くワケはない。
十代の・・
成長期ゆえの・・
流星のような、ミラクル!
単なる、運の良さなのだ。
実力とは・・性質が異なる!
私の演技の弱点が、
さらけ出される日が・・遠からず・・来るに違いない!
どうする?
どうすればいい?
ど・ う・ す・ れ・ ば?
激しい感情の揺れが・・起こった!
厳しい命題へ、
勇気を振り絞って・・立ち向かう。
私の演技の目をそむけたい・・┃弱点┃
具体像のイメージ化に・・トライアル。
呼吸を極端までに・・
・・ゆっくり・・深くしてゆく。
・・汐の弱点が ・・
・・具体像となって ・・
・・うっすらと ・・・現出した ・・
像は・・
徐々に・・鮮明になってくる。
立体化され・・触覚までも・・伴った。
イメージ像は、デフォルメされ、
強迫観念の電波を・・乱放射する!
汐の神経を、
「鉄の爪」が逆なで・・・心臓をエグる!
弱点を克服しようと、
リラックス状態を、
(薄氷を踏むような感じで)
維持しつつ・・
さらになるリラックス・・
イメージを深海へと・・潜航させてゆく。
イメージ画像から・・突破口を必死で探る・・汐。
心身に・・微量な緊張感が・・侵食してくる。
イメージ・トライアルにとって・・緊張は・・大敵だ!
リラックス状態が・・深ければ深いほど・・好ましい。
リラックス状態保持 !~不能~!
画像が ~グラングラン~ 揺れだした。
イメージに┃亀裂┃が入る。
爆音を上げると、粉々に割れ、
イメージ像は・・
遥か彼方へ・・
吸い込まれるように・・消滅してしまった。
あえなく敗退。
ノックアウトされてしまった。
耳鳴り・・マックス状態也!
「(あーん、イメトレ失敗!)」
本日・・イメージ力・・すこぶる不安定。
弱点の壁は、
・・余りにも高く・・厚かった!




