なんという夜!・・・その2
少女は、南平のところへ、
ガガッ!
車いすを駆って、一直線に寄ってきた。
ホテルの裏手 ●『喫茶室』● を指さし、
「パパァー!」 あらんかぎりの声で叫んだ!
「わわわっ!」 「口をきいた!」
ビックリ仰天の南平。
彼の頭の中に ━ボン☆━ フラッシュが焚かれた!!
周囲が、真っ白く見える。
里見は
文庫本から、
スッと、
顔を上げた。
パイプの中身を灰皿に捨て、
スーツの右ポケットに素速く・しまった。
南平の視線が、
女の子の両目に、吸い寄せられた。
。
「光だ!この娘の目に」 「光が宿っている!」
喫茶室から、
サユリとその仲間達が、
(いったい・・ナニゴト?)
とばかりに、フロントをうかがっている。
強く強く息を吸い、
呼吸を止める・・南平!!
━ 音がデフォルメされて聴こえ ━
━ 動作がショートカットされた ━
ふり向きざま、
(マッハ急のスピードで)
事務室の扉を開けた。
涼のスマートフォンを引ったくり、
ソファーへ、ぶん投げた。
目を白黒させる・・涼。
主任の背中を、
ガツンと!
一発どやしつける。
「一刻を争います!フロントよろしく!」
ひと息で、しゃべりきった。
「なにがなんだか、さっぱり分からんよ??」
ボヤく・・主任。
一目散に!
車いすを走らせる!
女の子!
追う南平!
全速力!
歪む遠近感!
空気の摩擦音!
耳に入る!
喫茶室手前!
追いついた!
南平!
両手でつかむ!
ハンドル!
狂ったように!
車いす!
押しまくる!
こすれるタイヤ!
廊下の絨毯!
摩擦する!
舞う煙!
サユリ達を蹴散らし!
喫茶室の窓際まで、女の子を運んだ!
通りをへだてたパチンコ店を指さして、
絶叫する女の子。
「パパーっ!」 「パパァーっ!!」
パチンコ店の入り口!
ジッと目を凝らす、南平!
コチラのようすに気づいた男性!
脱兎のごとく逃げ出す!
南平は、
裏口の非常階段を、
全速力で、駆け降りて行った。
追いかける!
追いかける!
集中力!
集約させる!
ただ一点!
走ることに!
パチンコ店裏通り!
逃げる男!
追う南平!
ふたりの距離!
縮まる!
あの娘の目の光!
そいつがオレのエネルギー!
年齢の入ったあんたにゃ、負けないぜ!
三メートル!二メートル!一メートル!
近づいてくる!
男の背中!
射程距離!
地面をキック!
背面タックル!
スローモーション!
地面を転げまわる!
男と南平!
男の耳元へ!
言葉を撃った!
それは、南平の、心の叫び!




