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汐坊の『哉カナ』   作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
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占い欄

 

 

 喫茶室きっさしつないの、かしましいこえは、フロントにまでひびいてくる。


 いつもの日曜にちようと、雰囲気ふんいきは、だいぶことなる。

 今夜こんやはどうも・・前向まえむきな気分きぶんに・・なれない。


 スポーツほしうらならんに、とおしている南平なんぺい


 カタン!

 エレベーターがひらいた。

 りてきたのは、里見さとみであった。


「おや?

くるまいすのおじょうさんは、どうしたのかね?」


「あの・・微熱びねつがあるらしくて、

部屋へややすんでいます」


「そうなのか」

 ロビーの椅子いすき、

 立ったまま、パイプにれる。

「きみとると・・彼女かのじょ

なんとも・・うれしそうだった」

 ユルやかなかむりちのぼった。


表情ひょうじょうもないのに、なんで、かるんですかねェ?」

 南平なんぺいは、意地いじわる質問しつもんを放った。


「うむ。

その証拠しょうこに、

きみ以外いがいひとがフロントにいるときは、

ちかづかなかったよ・・彼女かのじょ

 里見さとみは、椅子いすこしをおろした。


「ただの、偶然ぐうぜんですって」


必然ひつぜんさ」

 

 むしゃくしゃした気分きぶん支配しはいされた南平なんぺいは、

 議論ぎろんつづけて、

 相手あいて論破ろんぱしてやりたくなった。

 しかし・・里見さとみが、

 文庫本ぶんこぼんとしたので・・やめた。


「まいど、今晩こんばんは。

食器しょっきげにまいりました!」


 白衣はくい姿すがた出前でまえちが、

 あいさつをして、エレベーターへんだ。


 おおかた、弓削ゆげさんだろう。

 しゅう三日みっかは、店屋てんやものだ。

 

 

 もう一度いちどスポーツり、

 ほしうらならんむ。

 

 ○てんびん ⇒ きょうはスムースに、ことはこぶ一日です。

 ○アフター・ファイブ ⇒ サプライズがっているかも。

 ○ラッキーカラー ⇒ ネイビー・ブルー。

 ○ラッキーアイテム ⇒ スニーカー。

 

 いくつかあるスポーツ新聞しんぶんなかで、

 ヨンスポのうらないが、もっとも相性あいしょうい。

 遅番おそばんはいったときには、かならとおした。

 

 午後十時三〇分をまわった。

 電話でんわらず、

 なにも、うご気配けはいなし。


 フロントよこ小窓こまどける。

 濃紺のうこんそら

 ふかまりゆくよる

 しずしずけさを・・しん呼吸こきゅうする。

 


 二次にじかいは、たけなわ。

 フロントよこ化粧室けしょうしつから、

 サユリがた。


南平なんぺいさん、調子ちょうしはいかが?」

 

 いいにおいがただよってくる・・

 今宵こよいのサユリは、香水こうすいをまとっていた。


全体ぜんたい三割さんわり空室くうしつじゃあ、

なし。

まって、あと一室か二室だろうね」


最近さいきん

(かい)のルーム指定していリザーブ、

やたらおおくありません?

週間しゅうかん(さき)まで・・はいってます」


らなかったの?

703号室は以前いぜん

あの、笹森ささもり しおり宿泊しゅくはくしていたんだ」


「もちろん、ってます。

一部いちぶのファンのライク・スポットになっていることも。

それとは・・別口べつくち

703号室以外の予約よやくおおいのは、

どう、分析ぶんせきします?」


「それだ!

このあいだ、主任しゅにんはなしていたとき、

っかかったのは?」


「さっきカンパしてくれたお礼に、おしえてあげよっかなァ。

いまも・・たまにですが・・ご当人とうにん利用りようしています。

予約客よやくきゃくは、それをねらっているみたいです」


「ご当人とうにんって、まさか?」


「ええ、そのまさかです。

わたし・・こので・・目撃もくげきしました。

たくみな変装へんそうなので、よくよくないとからない。

チェックイン・アウトは、おきのひとませて、

彼女かのじょつか

おも場所ばしょで・・ごす」


「へぇーっ、そいつは初耳はつみみだ。

一度いちどてみたい!」


「ただし・・

彼女かのじょ・・

一時間じかんませんよ」


「どこから情報じょうほうが・・れるのやら。

それで、最近さいきん、オタクっぽいきゃくえたワケか」

 ほおづえをつく、南平なんぺい

 

 パイプのけむりが、フロントまでただよってきた。

 

 サユリは小声こごえで、

「ロビーにいる里見さとみさんって、何者なにものですか?」


になる?」


 サユリはうなずいて、

「ええ。

いつも慇懃いんぎん・・されど無礼ぶれいにならず。

ふところがふかそーう」


肯定こうていてき返事へんじをきかせてくれたら、

おしえてあげる」


「?」

 くびをかしげるサユリ。


先日せんじつのデートのけんだよ」


「もーーう、南平なんぺいさんたら!

すぐ、そうやって人の足元あしもとるんだから。

ハッキリって不愉快ふゆかいです。

こたえは、わなくても・・かってるでしょう?」


 サユリはきびすをかえし、

 ツンツンして、

 喫茶室きっさしつあるいてった。



 自分じぶんのおデコを一発いっぱつたたいた・・南平なんぺい

「アフター・ファイブのサプライズ!

さすがは、ヨンスポ、よくたること!

・・寒気さむけがしてきた」

 ジャケットをこむと、椅子いすにすわりこんだ。



「(もうすこし・・

きの勉強べんきょうが、

必要ひつようだろうな・・きみは・・)」

 探偵たんていはクスクスわらった。





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