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汐坊の『哉カナ』   作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
24/103

再会の回転ずし

 あいさつをえると、

 すぐさま、

 ぶかに・・キャップをかぶりなおした。


 いで、

 セカンドバッグを、ひょいとちあげると、

 りょうわたし・・着席ちゃくせきした。


 一連いちれん動作どうさは、

 洗練せんれんされていて、うつくしかった。

 さすがは・・女優じょゆうである。


 りょうは、

 ビールのはいったグラス。

 しおりは、

 おちゃはいったみで、

 再会さいかいのカンパイ!をした。


「いい出来できだったよ、映画えいが

スター誕生たんじょうだ。

おめでとう、しおりぼう

いや・・

しおりさん?・・とぶべきかな?」


「なに・・ってるんだか。

いつまでも・・わたしは・・しおりぼう

いま、

こうしていられるのも、りょうにいちゃんのおかげ。

かげひなたに、

物心ぶっしん両面りょうめんのフォロー、感謝かんしゃしてます。

ほんとうに、ありがとうございます!」


 キャップをり、

 カウンターのうえくと、

 深々(ふかぶか)と、こうべをれた。


「よせやい!オーバーだよ!」

 

 りょうは、

 戸惑とまどったような、

 表情ひょうじょうせると、

 有名ゆうめいじんとなった、

 バディーのちいさなあたまへ、キャップをかぶせてやる。



「おれいをしたかったの・・ずっと!

映画えいがるなんて、

ゆめのまたゆめだった。

このわたしが、

スクリーンのなかの、人物じんぶつになるなんて・・」


「アクション場面ばめんなんか、

相当そうとう迫力はくりょくだったよ。

あれは、CGではないんだろう?」


「モチよ!

あの監督かんとくは、

クレイジーなまでに、

リアルな迫力はくりょく追求ついきゅうするヒトだから。

すりきずや、あざがえなかった」


女優業じょゆうぎょう大変たいへんだ」


「まあね。ウフフ」


 しおりは、

 回転かいてんするおさらへ、

 うつし、

 にぎってもない、

 エビのさらとりり、パクついた(もぐもぐ)。


 美味おいしそうな表情ひょうじょう

 こぼれるような笑顔えがおは、

 以前いぜんと・・ちっともわらない。


 変化へんかしたのは・・

 ・・あたまたかさだ!

 りょうかたあたりまで、とどいている。


 三年さんねんまえは、

 むねのあたりだったのに・・。


 からだつきも、

 ヴォリュームをくわえ、

 ひとまわおおきくなった。

 歳月さいげつとは・・こういうものか。


 それと・・筋肉きんにく・・である。

 うでかたが、がっていた。

 パンツルックではあったけれど、

 ふくらはぎの部分ぶぶんが、パンパンにっているのがうかがえる。


 りょうは、

 鉄火てっかきを、くちはこぶ。

 海苔のりかおりが、ふんわりひろがり、

 鼻腔びくう刺激しげきした。


 テンポよくパクついている、しおり

 つぎに・・だい好物こうぶつの、

 ネギトロがった絵皿(・・)に、ばした。


 ピタリ(・・・)

 (一瞬いっしゅん の 逡巡しゅんじゅん!)

 うごきが まった。


 その場面ばめんに、

 りょう視線しせんも、

 ピタリ!と、まった。


「あちゃーァ!」

 しおりは、

 かおしゅめて、

 みずからの条件じょうけん反射はんしゃに、

 「ククク」とわらった。


「おっかしいなあ?

芸能げいのうかいはいって・・れてからは、

オール時価じかのお寿司すしさんにだって、

普通ふつうに、はいれるようになったのにイ。

りょうにいちゃんといると、

どーゆーわけか、

ホテル時代じだいに、タイムスリップしてしまう。

子供こども時代じだいしおりには、

絵皿えざらは・・贅沢ぜいたくひんだったもん」


「うむ。これで安心あんしんして、

しおりぼうと、べるワケだ」


「テヘヘへへへへ」


 すっかりちとけ、

 以前いぜんもどった、ふたりであった。


「いつしか、

女性じょせいとしての気品きひんが、

そなわって、

ぼう』がれるように、ガンバリまーす」


敬称けいしょうえて、ぶのも、

そう・・とおいことではないさ」とりょう


「ほんとうは、いらないんだけどね。

敬称けいしょう・・なんて」


「えっ?」


「まあ、そのはなしは、いといて・・と」



 ━○━○━


 しおりは、以前いぜん

 同期どうき声優せいゆうと、

 おちゃをしたときにいた、

 しょ体験たいけんはなしに、ショックを受けた。

 以来いらいずーっと・・

 あたまに、こびりついていて・・はなれなかった。


「『ねえ、しおりぼういてくれる。

カレシったらさ、

ふだんはチャラくて、

わたしを━「ちゃん」━づけでぶコトっているでしょう?

でも・・あのトキは・・

真剣しんけんなまなざしをけて、

ふるえるようなこえで、

わたしを、てにしたのォ!

なんか、ウルウルちゃってさあ。

このヒトに、どこまでもいていきたいなって、おもっちゃった。

と━━っても、いたかったけど、

サクラメントってかんじカナ!』」


 その日のよる

 しおりは、

 身体がホコホコ火照ほてって、

 なかなか・・

 ねむりにくことが出来できずに、

 何度なんど何度なんども、

 がえりをつハメとなった。


 しおりは・・

 まだ・・経験けいけんであった。



 ━○━○━



 お茶(あがり)ようおおきな湯呑ゆのみを、

 たなから、

 あらたに、

 ったしおり


 りょうにいけて、

 ゆび一本いっぽん

 ピン!とてる。


「おさけは、二十歳はたちになってからだぜ、バディ」

 いながらも、ビールをそそいでくれる。

 

 ひといきみほしたしおりは、

 あらたまった口調くちょうで・・う。


りょうにいちゃん。

婚約(こんやく)、おめでとうございます!」


「おう、ありがとう。

オレも今年ことしで・・」


「七月七日で、二十九にじゅうきゅうさい」(かぶせるようにしおり)。


「そうそう、そのとおり。

来年らいねんは・・三十路みそじだ。

そろそろ、をかためようとおもってな」


「キレイな女性ひと?」


女優じょゆうじゃないから・・

まあ・・・そこそこのレベルかな」


 気味ぎみに、

 ゆびで、はなよこをなでる。


「それは、ようござんしたねェ」

 しおりは、

 やまりのガリをほおばった。


 ビールのいが、

 しおりかおめ、

 したをなめらかにした。

 

 毎日まいにちが、

 とても充実じゅうじつしているというはなしを、

 しに、

 映画えいが撮影さつえいの㊙エピソード。

 内々(ないない)進行しんこうしている仕事しごとはなし

 芸能界げいのうかいウラ情報じょうほうまで、

 彼女かのじょくちから、

 縦横じゅうおうかたられた。


 しおりがエントリーしたときのオーディションで、

 グランプリにかがやいたアイドルは、

 ヒロインをえんじた映画えいがこそ大ヒットしたものの・・

 じゅん主演しゅえんした、

 プライムに放送されたテレビのれんドラと、

 深夜しんやドラマが、

 連続れんぞくしてコケ・・

 その・・

 かずばずでいることを、

 ちょっぴりウレしそうにかたった。


 そのあとは・・

 『ちいさな太陽たいよう』の撮影さつえいのウラ話。

 

 監督かんとくの、

 偏執へんしつきょうじみたねばり!

 キツすぎる要求ようきゅう

 サディスティックなまでのダメし!

 に、

 はらをブンブンてたしおりは、

 ビンりの炭酸たんさん飲料いんりょう はんダースを、

 びといにやらせ、

 それを・・

 撮影所さつえいじょ外壁がいへきに、

 一本いっぽんずつ、

 チカラいっぱいげつけて、

 ブチったことを・・喜々(きき)と話した。


 このパンクな行為こういは、

 けっこうなストレス解消かいしょうざいになるそうだ。


 ラジオドラマについてかたすと、

 まらなくなった。

 (どうやら、彼女かのじょにとって、本丸ほんまるらしい!)


 中身なかみはなしが、

 いたみずのようにかたられる。


 もの興味きょうみをまったくそらさない。

 ディージェー汐坊の、

 面目めんもく躍如やくじょであった。


 アルコールがまわって・・がゆるんだのか・・

 はなしは、

 グチ方面(ほうめん)へと移行いこうした。


 ラジオきょくの、

 乙骨おっこつプロデューサーというのが・・ウザい!

 ラジオの仕事しごと以外いがいにも、

 私生活しせいかつにまで、

 こまかくくちししてくるのでまいっていると・・こぼした。


「サングラス姿すがたのアクのつよそうなひとな。

新聞しんぶんたよ。

ラジオドラマをよみがえらせた 【仕掛人しかけにん】として、

脚光きゃっこうびているね。

まさに、とりとすいきおいだ。

発言はつげんも、おお風呂ぶろしき

ただ・・

汐坊しおりぼうわんとすることは・・からんでもないが、

サジェストしてくれるのは、

きみの将来しょうらいを、心配しんぱいしてくれているからさ。

物事ものごとを、

わるほうにはらないことだ」


「サジェスト?

そんな・・なまやさしいもんじゃない。

しつけ!

強制きょうせいよ!

ホント・・あったまる!」


「オレさ・・以前いぜん・・

どこかで・・あのひとおぼえがあるんだよ」


ちかごろじゃ、テレビにもかおして、

えてるからじゃない?

ほら・・

かなカナ☆』は、ラテきょく

(ラジオとテレビ両方りょうほう放送局(ほうそうきょく)

でやってるから。

どちらも可能かのうなわけ」


 すこかんがえこむりょう・・「なるほど、そうなのか」


「ヒック!失礼しつれい!」としおり


「ちょいとぎだ。

・・そろそろ・・こうか?」

 

 こえ合図あいずに、

 しおりはバッグから高級こうきゅうサイフを出して、

 ブラックカードいた。


りょうにいちゃん、

きょうはわたしに、おごらせてね」

 

 カードで精算せいさんする・・しおり

 

 みせると、

 りょうは、

 レシートの合計ごうけいがくを、

 (消費税しょうひぜいふくめて)

 きっちり2でり、

 しおりわたした。


「これがバディというものさ!

・・ちがうかい?」

 

 しおりは、

 苦笑くしょうしつつ・・った。



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