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汐坊の『哉カナ』   作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
17/103

真夏の雪


 時刻じこく午前ごぜん一時いちじまわった。


 事務室じむしつのソファーでうとうとしている設楽したら主任しゅにん


 トントン!

 ノックのおと


 南平なんぺいかおをのぞかせた。

 

 すこしギラついている、

 深夜しんやモードのけて報告ほうこくした。


主任しゅにん満室まんしつになりました」


「おつかれさま。レジをめよう」


 りょうは、

 びをしながった。

 

 その言葉ことばいてホッとする南平なんぺい


 レジめさえ終了しゅうりょうしてしまえば、

 主任しゅにん退室たいしつ

 ・・あとは自由じゆう時間じかん

 

 夜食やしょくにテレビのリラックスタイム。

 仮眠かみんすれば、

 つかれの大半たいはんれる。


 フロントのデスクにりょう


 レジのおかねかぞえ、

 カード精算せいさんしたおきゃく確認かくにんや、

 当日とうじぶんのレシートと、

 客室きゃくしつ管理票かんりひょうを、

 詳細しょうさいにチェックしているあいだ、

 南平なんぺいは、

 すぐよこ起立きりつ姿勢しせいである。


 金銭きんせん出納すいとうかんしての、

 質疑しつぎ応答おうとうわされる。

 この二人ににん態勢たいせいには、

 防犯ぼうはん意味いみいもあった。


「おい、南平なんぺい

里見さとみさんの宿泊ルームチャージが、

はいっていないじゃないか!」


「ええ。

明日みょうにちの19までには、

かなら支払しはらうとのことです。

大丈夫だいじょうぶですよ、

あのひとかんしては」


担保たんぽは、おあずかりしているのか?」


「いいえ」


「だめだよ。

うちは前払まえばらいが原則げんそくなんだから」


「しかし、里見さとみさんは、

信用しんようできそうな人物じんぶつです・・」


だまれれ!南平なんぺい

あそびじゃない!

ビジネスなんだぞ!

あした、

19までに入金にゅうきんがなかったら、

即座そくざ退室チェック・アウトつづきをしろ!

一分の猶予ゆうよもなしだ!

わかったな?」


「はい・・」


「よーし、わすれるな。

こんど り なんかしたら、

まえ給料きゅうりょうからくゾ!」


「・・わかりました」



 こと金銭きんせんかんしては

 きびしい主任しゅにんであった。


 レジめが終了しゅうりょう

 フロントは、

 一日いちにちわりをむかえようとしていた。


 げを、

 事務室じむしつないの、

 大型おおがた金庫きんこおさめると、

 りょうは、

 せんよう紙幣しへい小銭こぜにを、南平なんぺいわたす。


 せんをレジにセット。

 ロックをかけると、

 南平なんぺいは、

 各階かくかい見回みまわりとゴミしに取りかかる。


 よる作業さぎょうかたづけてから、

 近所きんじょのコンビニまで、

 夜食やしょくしにはしった。


 そのかん

 りょうは、

 いつもの儀式ぎしき・・『まきタイム』。


 デスクのしから、

 木箱きばこおあめられた、

 新品しんぴん葉巻(はまき)(シガー)をした。


 あるひとからおくられた、

 高級こうきゅうひんである。

 期待きたいむねたかる。


 ふだんっている、

 やす葉巻はまきとはモノがちがった。

 

 木箱きばこって、

 ソファーまで移動いどうすると、

 腰を落ち着け、

 深く呼吸こきゅうをしてから、

 丁寧ていねいふうった。


 木箱きばこのフタをひらき、

 中細ちゅうぼそ葉巻はまき一本いっぽんる。


 包装ほうそういた。

 素晴すばらしいかおりが・・ただよう。


 専用せんよう小型こがたりたたみナイフを、

 ダークブルーの制服せいふくうちポケットから、

 すと、

 慎重しんちょうくちった。


 あかの、

 しゃれたデザインのナイフを、

 りたたんで、

 テーブルのうえにコトン!とく。


 ロングサイズのマッチで、

 葉巻はまきまわしながら、

 先端せんたんけていく。

 

 けむりいこんで、

 じっくりテイスティング。


「うーむ」


(まるで・・粉雪こなゆき

びっきり・・・繊細せんさいだ)

(それでいて、ズン!とくる存在そんざいかん

おくぬしそのものではないないか!)


 うわさにのみ聞いていた葉巻はまきは、

 やはり、逸品いっぴんだった。

 そのぶん、値段ねだん破格はかくだ。

 りょうのサラリーでは、

 常用じょうようなどありえない。


 極上ごくじょう時間じかんが、

 けむりとなってちのぼってゆく。


 がつくと、

 コンビニのふくろをさげた南平なんぺいが、

 入口いりぐちところりかかっていた。


「コレがうわさたかい、

キューバさんの・・」

 と南平なんぺい


「【真夏まなつゆき

特別とくべつ限定げんていひんだ!」

 えるりょう


繊細せんさいですね!

かおりのラインがごたまぜにならず、

一本いっぽん一本いっぽんがキレイにっている」


「しかも、有機的ゆうきてきに。」

 ほそめ、

 けむりをくゆらせるりょう

「おすそけしてやりたいのは、

やまやまだが、

オレの宝物たからものなんでな」


「わかってますって!

れい大事だいじなヒトからの、

おくものでしょう?」

 意味いみありげな表情ひょうじょうで、

 小指こゆびてる。


「ふふふ・・まあ・・」

 意味いみしん表情ひょうじょうで、

 こたえるりょう


「ぼくもいつか、

葉巻はまきをやれる身分みぶんになりたいです。

いまは、【メビウス】というつよ味方みかたがありますから」

 ポケットからタバコのボックスをして、

 ゆびではじいてみせた。


 葉巻はまきタイムをえた主任しゅにんは、

 ナイフを、

 上着うわぎうちポケットにしまいソファーからちあがった。


「あとを、たのんだぞ」


「おつかれさまでした」



 ビジネスホテル『設楽しがらき』の一日いちにちは、

 わった。


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