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第44話 雨上がりの日に


 麦刈りが終わって一日のあった後、雨の降りしきる間、魔法の修行が行われた。


 つまり、雨が振っているだけで、いつもどおりの日々だということだ。


 ただし、ここ一週間と同じく、レポートの提出は無くなった。代わりに、四大魔法の魔法陣の暗記を行っていたからだ。


 暗記するのは流石に風属性の『切り払い(スラッシュ)』ではない。『風の切り払い(ウィンドスラッシュ)』ならば麦刈りの際に使いまくっていたせいで、これから一生忘れそうにない。

 雨の間、暗記に励んでいたのは四大魔法の基礎の魔法である『操作(コントロール)』の魔法陣である。

 その『操作(コントロール)』の魔法陣を土、水、風、火の四属性分の魔法陣をひたすら砂盤に描き続けていた。

 当然ライムだけはなく、アリティアも同様だ。


 一つの魔法を覚えた次に、四つの魔法陣を一気に覚えるは無理があるんじゃないかとライムは思った。


 けれど、そんな事は無かった。


 なぜなら四つの魔法陣とはいっても、四つの属性に分かれた、同じ『操作(コントロール)』の魔法陣だからだ。属性に関わる図形部分以外は、ほぼ同じ形状の魔法陣だ。たしかにこれならば、一括して覚え、その違いも理解してしまった方が後々面倒が無い。


 それに基礎であるだけあって、『切り払い(スラッシュ)』の魔法陣よりも構造が簡単だった。

 グレンが言うには、本来ならば『操作(コントロール)』の魔法を一番始めに覚えるものだという。

 適正に合った属性の『操作(コントロール)』を覚えてから、徐々に適正外の属性の操作を覚えていくのが、正しい習得順序だ。


 適正外の属性の『切り払い(スラッシュ)』を一番に覚えるのはかなり珍しいぞとグレンは笑っていた。

 それは師匠のせいじゃないのかと、ライムが思わずツッコミを入れた事も許されるだろう。


 ともかく、三日間はひたすら四つの『操作(コントロール)』の魔法陣を覚える事に費やされた。


 それでも何故、レポート提出も止めてまで『操作(コントロール)』の魔法を覚えることに力を傾けるのか、ライムは疑問に思った。

 その事を質問すると、グレンは四大魔法においてはたった一つの魔法だけを覚えていると、他の属性の魔法が使いにくくなるのだと答えた。


 理屈はまだ判っていないが、早めに四つ全ての属性の魔法を使えるようにしないと、問題が出てくる時があるのだという。


 『操作(コントロール)』の魔法を覚える理由を説明した後に、グレンは弟子と孫に宣言した。


「これから覚えてもらうのは『操作(コントロール)』が四つ、単発の『小玉(ブリット)』が四つ、そして残りの属性の『切り払い(スラッシュ)』が三つだ。これらを覚えるまでは他の事をしているヒマなど無い。徹底的に仕込むので覚悟するように」


 アリティアが思わず逃げ出そうとしたのも無理の無い事だろう。ちなみに少女は逃げ出そうとした瞬間、祖父に捕まった。


 なお、『小玉(ブリット)』という魔法は『切り払い(スラッシュ)』と同様に射撃系の攻撃魔法であり、単発の『小玉(ブリット)』は射撃系の基本魔法だそうだ。


 基礎魔法である四つの『操作(コントロール)』の魔法を覚えるのに三日。

 射撃系の攻撃魔法の基本である単発の『小玉(ブリット)』の魔法、四種全てを覚えるのに二日。

 風属性以外の『切り払い(スラッシュ)』を覚えるのに丸一日かかった。


 覚えるのに時間が短くなっていたのは、単純に覚えねばならない部分が少なくなっていったからだ。


 『操作(コントロール)』の魔法で四つの属性を表す図形を覚えてしまえば、『小玉(ブリット)』『切り払い(スラッシュ)』でも、属性を表す部分は同じ図形を使っているので少なくなる。

 また『小玉(ブリット)』の魔法では、先に覚えていた『風の切り払い(ウィンドスラッシュ)』と共通する部分が多かった。


 射撃系の魔法は基本部分が共通しているのだ。


 違う部分は『切り払い(スラッシュ)』は刃の成形部分と刃の傾きの制御部分だ。『小玉(ブリット)』の場合は刃の成形部分が小さな球体へと成形するとなっており、非常に単純な図形になっていた。

 刃の傾きの制御部分に関しては、『小玉(ブリット)』の場合は存在すらしていなかった。


 そして風属性以外の『切り払い(スラッシュ)』に至っては、属性部分の図形を入れ替えるだけで済んでしまった。


 実際に魔力で魔法陣を描き、魔法を発動させる訓練も雨の降りしきる最中に行われた。


 水と土と風の属性の魔法に関しては、雨具を着込んで軒下で雨を避けながら訓練を行う事ができた。


 しかし、火属性の魔法を行使する時だけは、雨具も無しに雨にずぶ濡れになりながら行う事になった。


 火属性の魔法を始めて訓練する時は、雨が降っている中、ずぶ濡れになった状態で行う事が伝統なのだそうだ。

 雨で火が消えてしまうこともあるが、火属性の魔法が暴発しても被害を最小限に抑える事を優先する先人からの知恵だという。


 ちなみに火属性の『操作(コントロール)』を使用している最中、誤って炎を想定よりも大きくしてしまった回数は、アリティアが一回。ライムが五回だった。幸い怪我をすることは無かった。雨が降り、ずぶ濡れになっていなければ軽いヤケド位は負っていただろう。


 ライムとアリティアの暴走させた回数の違いは、適正の違いだろうとグレンは評価した。

 ライムは土、水に適正があり、アリティアは水、風に適正がある。


 火に関しては二人の適正は判明していないが、ライムは質量を持った属性に対して適正があり、アリティアは流れを持つ属性に対して適正がある。


 そして火属性は、質量は持たず流れを持った属性である。

 アリティアが暴走させる数が少ないとは当然の事だという。


 そのグレンの考察を証明するかのように、アリティアは流れを持たない属性である土属性の『操作(コントロール)』の魔法には相当苦労していた。

 逆にライムは土属性がメイン適正である為に、非常に簡単に扱う事ができた。こんな簡単で良いのかと疑問に思うほどだった。


 そんな風にして四大魔法の訓練を行って、グレンに課された魔法を全て使える事ができたころ、一週間をも続いた雨がやっと上がった。



  ◇  ◇  ◇



「おじいちゃん! もう今日は魔法の練習はしないからね! きょうは村に遊びにいくんだから!」


 魔法の特訓はもうイヤだと、アリティアは宣言を行った。


「せっかく雨が上がって晴れたのに、今日も特訓が続けるって言うなら、家出も辞さないよ?!」


 そんな強い主張に、グレンは笑いながら受け入れた。


「よいじゃろう。アリティアは頑張ってきたからの。けれど、今日一日だけじゃぞ?」

「分かってるよ。明日からがんばりますよー」


 そんな祖父と孫のやり取りを見ていたライムは首をかしげた。

 確か師匠は昨日の時点で、「『切り払い(スラッシュ)』を全属性において覚えたから、これからはゆっくり覚えさせるか」とか言っていなかっただろうか?


 批難の視線を向けて来るライムに気がついたグレンは、アイコンタクトで黙っているように要求してくる。まあ、勉学に励むのはアリティアの将来の為にあるとも思ったのでライムは口をつぐむ。

 祖父に騙されている少女は嬉しそうに笑顔を浮かべている。ライムは将来騙されないかと不安に思った。

 アリティアはライムの手を掴んで引っ張りだす。


「アリティア?」

「ライムも一緒にお出かけしよ!」

「行くってどこに?」


 ライムの問いに、アリティアは指を頬に触れさせながら考える。


「まずはお菓子を買ってから行きましょう。広場に行ってもいいし、川の方へ行ってもいいし」

「アリティア。雨が上がったばかりだから、川の方へ行くのはやめておきなさい。おそらく、水の量が増えているから危険じゃ」

「あ、じゃあ、川は無しだね。行ってから考えよっか?」


 グレンの注意にアリティアは素直に頷き、行き当たりばったりで遊びに行こうと提案する。その間にも、ライムの手を引いて家を出ようとする。

 少女に連れて行かれながら、ライムは焦る。これから師匠の手伝いがあったはずだ。


「あ、えっと。師匠? 私も行って良いんですか?」

「ああ、アリティアが危ない事をせんように見といてくれ」


 軽い様子で彼は頼む。

 相変わらず師匠は孫には甘い。そしてライム自身もアリティアには甘い。師匠の許可が出たならば、拒否する理由が何一つない。お出かけする準備をしてから家を出る。


 ライムはアリティアに引っ張られることなく、手をつないだまま連れだって歩く。


 麦が刈り取り終わり、殺風景ともなった畑の中を通る道を歩く。とはいえ、すべての麦畑が地肌を晒しているわけでもない。

 先日刈り取った麦は秋まきの麦であり、春まきの麦の畑は青々とした葉を伸ばしている。こちらの麦は夏が終わる頃に収穫期を迎える。


 二人は長雨によってできた水たまりを避けながら、村の中央へと向かう。

 そんな畑を見ながらライムはぽつりと漏らした。


「麦刈り。雨が降る前に終わって良かったな」

「そうだね。けど、あんなにこき使われるのは二度とごめんだけどね」


 アリティアの言葉にライムは同意する。

 今回の麦刈りでの功労者は間違いなく、グレン、アリティア、ライムの三名だ。アリティアに至っては、麦刈りの最終日には虚ろな表情で『風の切り払い(ウィンドスラッシュ)』を麦へと放ち続けていた。


 翌日に丸一日寝ていたのも無理の無いことだろう。


 将来、こんな事が起きる事は無いように願うが、きっと急いで刈り取りを行わねばならないことがあるだろうと、二人は話しながら歩いて行く。


 やがて、雑貨屋にたどり着く。

 雑貨屋は前に来た時と同じように、扉を開いて客を迎えていた。


「いらっしゃい。ってガキどもか」


 カウンターに居たミリィが声をかけた。


「わたしたちはお客さまだよ?」

「ん? いらっしゃいって言っただろう?

 そんな事より、麦刈りじゃ大活躍だったな」

「ミリィさんは見てたの?」

「見てたって言うか、私も麦刈りを手伝ってたんだが? ライムの方は私がいた事に気がついていたぞ?」

「え?」


 アリティアに視線を向けられ、ライムは頷く。ミリィとは一度会釈を交わしていた。


「まあ、無理ないと思うよ。あの時のアリティアは一杯一杯で他の人の事を気にする余裕なんて無かったし」

「まあな。傍目から見てて、コイツ大丈夫か? とか思っていたし。

 お前がそんなんだったから、魔法使いになってた事もあまりおどろけなかった。ひょっとして魔法使いって簡単になれるのか?」

「ミリィさん、アレを簡単とか言うなら襲いかかるからね?」

「お、おう……」


 目の座ったアリティアに告げられ、ミリィは頷く。助けを求めるような視線を受けてライムが補足する。


「事前に、魔力の扱いを訓練していたからできたことですよ。

 それに麦刈りの前に徹底的な訓練をすることになったんです。その結果、あの魔法だけを使えるようなったんです。魔法使いと呼べるようなものじゃないです」


「ほ、ほお……、そら大変だったんだな」

「大変なんてものじゃないわよ。夢にまで魔法陣が出てくるんだから。しかも雨が終わった後も特訓は続いてたし」

「今日はその特訓が一段落ついたんで、出かけてきたんです」

「なるほど、お前さん達はここ一週間、忙しかったんだな。となると、もう準備は終わってるのか?」

「準備?」


 ミリィの問いに、二人は揃って首をかしげた。


「聞いてないのか? もう少ししたら行商隊がやって来るんだ。毎年恒例のヤツだ」

「え? けど行商隊がやって来るのは脱穀が終わって、しばらくした後じゃないの?」


 毎年恒例の行商隊の来訪は、納税や、村で食べる分以外の余った麦の買い取りが行われている。脱穀が終わっていない麦は売れない。


「なんでもちょいとルートを変えたんだと。それでウチの村にやって来る時期が早まったんだそうだ。

 雨が振る前に行商隊の使者が村に来たらしいけど、雨が降るから、しばらく遅れるって。雨が止んでも道がぬかるんでいるからな。道がしっかりしてきたら出発するんだと。


 親父の話だと大体、今日から三日後位に来るって話だぞ?」

「三日後? え、聞いてないよ? ていうか、まだ用意してないよ!?」


 アリティアは焦る。


「ゴメン、ライム。今日はもう帰ろう!」


 ライムの手をつかんで駆け出す。


「おい、買っていかないのかよ?」

「また今度!」


 ミリィにそう言って店を後にする。手を引かれているライムは混乱しながらも付いていく。

 家へ向かって道を走りながら、ライムは聞く。


「アリティア、なんでそんなに焦ってるんだ?」

「ウチの稼ぎは呪符の売却なんだけど、雑貨屋とギルドだけじゃなくて、行商隊にもいつもたくさん売ってるの。

 けど今ウチに、そんなにたくさん在庫が残ってないはず。だから、焦ってるの!」


 たしかに大変な問題だ。経済的に困窮するのは見過ごせない。

 家に戻ったアリティアは畑仕事をしていたグレンへと駆け寄る。


「おじいちゃん――! えっと――! あの――!」


 ずっと走って来たせいでアリティアの息は切れており、言葉が出てこない。


「どうしたんじゃ? そんなに急いで?」


 グレンは驚いた様子で聞くが、アリティアは声が出せる状態ではない。代わりに、同じ速度で走ってきたにもかかわらず、全く息を切らしている様子のないライムがこたえる。


「村で聞いたんですけど、三日後位に行商隊がやって来るんです。それで、ウチに売るための呪符の在庫が無いって事で、慌てて戻ってきたんです」


「そうだよ! 急いで作らないと、間に合わないよ!?」


 それだけ叫んで、アリティアはまた呼吸を整える。


「アリティア、まずは息を整えなさい。

 しかしその事か。その事なら聞いておるし、問題はないじゃろ」


「え? そうなんですか?」


 聞いたのはライムだが、息を整えているアリティアも意外な事を聞いた様子で目を丸くする。


「ああ。確かに完成品の在庫は少ないが、途中まで作っているモノはある」

「そうなんですか?」

「おぬしらの訓練の合間に少しずつ作っていたからな。それを使えば間に合うじゃろ」

「焦って走る必要なんてなかった……?」

「まあ、そうじゃな」


 ガックリときているアリティアに、グレンはうなずいた。


「だがまあ、せっかく伝えてきてくれたんだ。今日は呪符作りを行うことにするかの。

 二人も手伝ってくれよ」


 グレンのその言葉によって、今日の予定は決まってしまった。


 アリティアは家の中で呪符作りの準備を行い。ライムはグレンについて呪符用の木材を乾燥小屋まで取りに行く。ライムが一人で木材を取りに行かないのは、魔力が馴染んでいるかどうかの確認ができないからだ。

 

 大量の木材ブロックを抱えて家に戻ったライムは、アリティアとグレンと共に呪符造りに励む。

 呪符作りのためにテキパキと手を動かしながらも、アリティアは嘆く。


「せっかく今日はお休みだったのに……」

「まあ、そんな日もあるよ」


 ライムがそうなだめる。

 今日一日お休みにしてアリティアが手伝わずとも、十分に間に合うとグレンは言ってはいた。

 けれどアリティアは、気がついてしまった以上、放ったらかしにしたままじゃ気になってしょうがないと、率先して呪符作りを手伝った。


 それでも愚痴は漏れてしまう。


 ライムにとっても、お休みが潰れてしまう事は残念に思うが、手伝いは弟子としての務めである。特に不満でもない。お世話になっている身としては家の収入の直接の手伝いができる事は望む事でもある。


 呪符作りは今日明日、しっかりとやれば終わりそうだというのが、グレンの見立てだ。

 行商隊に卸す予定の呪符の種類は、獣避け、虫よけ、鳥避けが基本だそうだ。その他にもコツコツと作り続けていた発動器などの、魔法道具も数点を売り払うという。

 呪符と魔法道具の販売益は家の収入になる。


 行商隊に対して、アリティアはお小遣い稼ぎに刺繍やキルトの作品を売ることもあるという。


「呪符作りが終わったら、作りかけのキルトを完成させないといけないかな。行商隊がいつもどおりだったなら、もうちょっと余裕があったはずなんだけどね」

「雑貨屋じゃなくて、行商隊に売るの?」


 ライムの質問にアリティアは頷く。


「うん。キルトはそっちの方が少し高く買い取ってくれる事があるから」

「へえ……」

「ミリィさんが言ってたけど、カイロス村は他の場所に比べると手芸をする人が多いから、村の中で回すと安く買い取らざるをえないんだって」

「行商隊がこの村で買い取っていくのは、主に木工製品に手芸製品。

 それにウチの呪符と魔法道具じゃな。これらを作れる魔法使いは近隣の他の村には居ないんだそうだ」

「それじゃあ、呪符を売っているのはウチだけですか?」


 グレンの説明に、ライムは今作っている呪符の山に目をやる。その量は、テーブルから溢れるほど大量だ。近隣の村全ての需要を賄うためには確かしにこれくらいは必要だろう。


「村ではな。街のほうに行けば呪符を売っている店もある。もっとも街の方でじゃ、獣避けやら、鳥よけを必要とするものは少ないからな。あまり量を作らんらしい。

 ワシもそれらに需要があると気がついたのは、この村に来た後の話じゃ」


 ひょっとして、この家は村の中じゃかなり裕福な家なのでは無いかとライムは思った。呪符や魔法道具を卸し、畑も魔法の力で平均より広い土地を維持し続けている。

 さすがに直接確認することは控えた。


 話を聞いてライムは思う。自分も何かを作って売ってみるかと。

 しかし考えてみても丁度良いものなど思いつかない。そもそも自分に何かを作れるのかという根本的な疑問もある。

 今現在、大量に作り続けている呪符も一人で作る事ができるだろうが、それを個人で作って売るというのは問題がある。


 それ以外に何か作って売れる物はないか。

 そんな事を頭の片隅に置いた夕食時。ふと目が止まった物に、これならば自分でもできるのではないかと、あるアイデアが閃いた。



  ◇  ◇  ◇



 その日の夜。ライムは狩りに出かけることにした。狩りに出かけることはあらかじめグレンに言っておいた事だ。

 およそ十日に一度のペースで『食事』を行えば、体の大きさを小さくしないで済むとわかってきた。

 家を出る前に、グレンに言っておく。


「今日はちょっと遅くなるかも知れません。それとコレを少し借りていきます」


 ライムは断りをいれる。借りるという物品を見せられたグレンは不思議そうな顔をした。


「まあ、汚さなければ構わんが……。何に使うんだ?」


 その問に、ライムは答えた。

 その答えを聞いてグレンは疑問を投げかける。


「それはできる事なのか?」

「多分できると思います。まあ、思いつきですし、本当にできるかどうかは今日の実験結果次第ですね。これはその見本として使うんです。

 ですから今日の帰りはちょっと遅くなると思います」


「そうか……。しかし、それなら昼にやれば良いと思うのじゃがな」

「いや、昼は色々忙しいですし。それに、ほかの人に見られる訳には行きませんから。部屋の中でやるにしても、今日の実験が上手くいったらの話ですよ」


 苦笑交じりにライムは言って、森の中へと向かった。



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