王都グルメマップありマス
あとは夕食と入浴だけなので、とケイトさんには部屋へ戻る途中で都へ行く準備をするようお願いした。
グルメスポットのチェックもよろしく。
動植物園とかあれば行きたいです。
エンタメ系のイベントもチケット取れるなら是非。
部屋へと戻り、服を着替えてソファーに腰を下ろす。
このままゴロンと横になってしまいたいが、メイドさんの目が気になって自重する。
早速妖精さんがiPadと紙をもって飛んできた。
画面コピーの用意をしながらふと考える。
ケイトさんもメイドちゃんもいない。
セリフ誰が書くの?
とりあえすメイドさんを手招きし、ソファーに座らせる。
彼女は妖精さんが見えない人のはず。
当たり前だが、ラノベのアルアルと違いメイドさんは怪訝な様子。
席を離し気味にして座りセクハラをかます気がないことを示し、鉛筆を持たせて、吹き出しを示しながらメリルちゃんの言葉を口コピー。
コマ絵とセリフで理解できたのか、メイドさんが吹き出しに文字を書く。
どうやら意図が伝わったようだ。メリルちゃんがサムズアップしている。
コピーした紙をメイドさんの前に更に押し出し、俺は腕を伸ばして次の吹き出しを指さしながら、メリルちゃんの言葉を口コピー。
メイドさんが吹き出しに文字を書く。
俺の発音が拙いので、メイドさんは時々首を傾げるが、メリルちゃんの発音をなんども真似すると、徐々に吹き出しが埋まっていく。
一話を仕上げたところでお茶を淹れて貰い、一休みしていたところで食事に呼びにメイドちゃんがやって来た。
案内されて食堂へいくと、待ち合いでの侯女ちゃんがテンション高い。
マジでくるくると踊っている。
「彼女も、王都へ、行く、そうデス」
概ねダメだけど、という感じで行くかどうか聞かれ、結構ゴネてオーケーを勝ちとったそうだ。
この先しばらく必須のイベントが入っていなかったのも良かったらしい。
メイドちゃんも当然ご一緒だ。
やってきた魔法使いさんは同行叶わずだそうで、くるくる踊って浮かれる侯女ちゃんを、微笑ましくも、ちょっと羨ましそうに見ている。
「*****」
侯女ちゃんが俺のところにやってきて、ピョンピョンと跳ねながら何かいっているのだが、さっぱりわからないので、ウムウムと頷いておく。
メリルちゃんも特に通訳してくれないし、大したことは言ってないのだろう。
ヒューさんが戻って来たところでダイニングの扉が開き、食事の席に呼ばれる。
イケメンがまだだけど。
侯女ちゃんが増えて、旅の陣容が一回り大きくなることの手配で忙殺されているらしい。
それを聞いて、侯女ちゃんもさすがにすまなそうな顔で大人しく席に着いた。
侯女ちゃんとヒューさんが楽しそうに王都の話をしている。
どこそのこ食べ物がおいしいとか、どこそこのケーキが人気だとか。
高名な音楽堂で誰某のコンサートがやっているだろうかとか。
情報の遅れはあるものの、それなりに王都の流行は侯都にも入ってきているらしい。
「学校、見る、しない、ヨイか?」
一応それが建前だったよな。と思い聞いてみた。
「*****」
「*****」
「*****」
すっかり忘れていた模様。
ヒューさんが目を見開いて「オー!」とか言ってる。
魔法使いも苦笑いだ。
さて俺は机に並んだ料理を観察。
ステーキかな?
なんの肉だろう。哺乳類っぽい赤身のぶ厚い肉だ。
「*****」
「*****」
「■■×△*の、胸の、肉を、焼いたモノ、だそうデス」
料理を並べてくれたメイドさんのする説明を、メリルちゃんが翻訳してくれる。
「■■×△*?」
■■×△*って何だっけ?
「大きな敷物にしていた、モコモコです」
メリルちゃんが両手を大きく広げてる。
ああ、初日の夕食時に部屋に敷いてあったアレか。
フォークで押えてコテを滑らせると、柔らかな感触でスッと切れる。
旨そうだ。そして実際に美味い。
味付けは塩と若干の香辛料のみの直球勝負でこの美味しさ。
就職祝いで連れて行ってもらった高級ステーキハウスのA5肉に負けるとも劣らない。
このくらいのお肉は、庶民でも祝事くらいなら食べることが出来る価格なのだろうか。
俺は日本でもめったに食べられない高級なお肉を堪能する。
気が付くと、侯女ちゃんとヒューさんの間に、小さなお菓子の絵がちりばめられた、おシャレ雑誌のグルメページに付いている様な手描きマップが広げられている。
なにこれ?
「おかし、食べル店、地図デス」
ヒューさんが留学時代に仲間と作ったグルメマップらしい。
文化調査の課題で作った?
一緒に作ったという数頁の綴も見せてもらう。
まるで大学の文化系ヲタクサークル発行の小冊子。
これ印刷物じゃんか。
そういえばヒューさん、コピー魔法使ってたっけ。
結構上手なイラストがついていて、秋葉原の全年齢向け同人誌書店で見掛けたことがある感じ。
学園祭?で売って好評を得たそうだ。
まんまイラストレータが作るグルメ同人誌か。
なんだか文化のレベルが日本と全然かわらない。
これも科学技術の差が魔法で嵩上げされて、人の暮らしの豊かさが、日本とあまり変らないからだろう。
アッパークラスに紛れ込めた身としては、召喚してもらって正直ラッキーなんだが。
インド転勤になってシェフ、メイド付の家を支給された友人が、危くて街を歩けないっていってたのを贅沢だと思っていたが、こっちの方が断然上だよな。
iPhone勇者とか今時のラノベ主人公世代だとネットが無いとかSNSで繋れないとかショックがデカいんだろうが、俺は携帯のアドレス登録も数件レベルな人間だったから。
あ、このお菓子、なにかの文物を象った和菓子みたいで美味しそうだね。
予約必要なの? 残念。という話をメリルちゃん挟んで二人にしたら、魔法使いが任せてください。と、頼もしい言葉。
侯女ちゃんとメイドちゃんの追加で明日の昼に王都まで人を走らせるので、それに託してくれるらしい。
まあ一箱くらいならなんとでもなるでしょうとのこと。
さすが侯爵家。
「*****」
「*****」
「*****」
ヒューさんも、王都の友人に色々手配を頼む手紙をしたためたらしい。
さっきイケメン事務所から走って戻ったのはそのためだったか。




