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都で不審者の尋問に立ち会うの?

 イケメンの話にメリルちゃんとヒューさんが頷いている。


「フシンシャ?と話す、タチアイが、欲しい?」


 メリルちゃんが首をかしげながら言うには、『都に迷い込んだ日本人らしき不審者を尋問するのに立ち合って欲しい』らしいんだが。

 なにそれ、ちょっと怖いんだけど。

 冗長な伝言ゲームを経た話なので誤解や誇張もあるだろうけど、人付き合い苦手な俺には相手が誰であれ面倒な話だ。

 だって、見付かったのが話のわかる妙齢の美女なら、もとから俺のところに御鉢が回ってくるわけ無いじゃん。

 ポケッーと座り、うんうんと適当に頷いていたら、明日、侯爵に戸籍をもらって、明後日には出立する事になっていた。

 明後日出立?スピード感が半端ない。

 移動に4日もかかるので、そのくらいの感覚で動かないと、アッという間に一カ月が過ぎてしまうみたい。

 幸いなことに、ヒューさんも一緒に行ってくれるそうだ。

 一年ほど前まで都の学校に留学していたそうで、土地感があるらしい。

 俺みたいな変なおっさんを押し付けられても嫌な顔ひとつみせずに色々親切にしてもらっているので、ヒューさんが居てくれるとホッとする。

 目の保養になる美人のうえに、適度な残念さに親しみが持てるし。


 チリンチリンチリン


 ちょうど話が一段落ついたらしいところで、唐突にイケメンの事務机の上からベルの音が響いた。

 首を回すと、側に座って事務作業をしていた、まだ二十前っぽい女の子がイケメンの机に駆け寄りなにかを取り上げるところだった。

 受話器?


「電話ですナ」


 メリルちゃんが受話器までスーと飛んで、暫く観察して戻って来る。

 受話器はこの間食堂で作っていた、剥き出しのスピーカーとマイクを棒で繋いだだけの簡素な作り。


「ココと、門と、侯家事務所、ヅナグ、しました」


 電話器の辺りを指差し、そのまま何処か二箇所に指先を動かしながら、ヒューさんが教えてくれる。

 指差した方角に、門と、家業用の事務所があるのだろう。

 しかし、昨日の今日でもう電話を引き始めているのか。

 ほんと仕事が早い。

 3拠点を繋ぐのには、屋敷のメイド詰所に交換所を作って、メイドに交換手をさせているそうだ。

 敷地内に何箇所か引いて、そのあとなるべく早く侯爵様の官舎まで回線を引くつもりらしい。


「りれー、むつかしいデス」


 ダイヤルで番号を送る仕組みは、もう目度が立ったとか。

 リレー式交換機の仕組みなんて知らないよ。



 なにかイケメンに仕事がはいったらしいので、我々は退出。

 廊下へ出ると、ヒューさんは待機していたケイトさんに何かを告げ、先に行ってしまった。


「都へ行く、支度、するそうデス」


 あー、女の人だからね。

 しかし、急に決まった10日がかりの旅行とはいえ、俺には準備するものがない。

 なにも持ってないから。

 ところでメリルちゃんは一緒に行くよね?


「都ノ地は久しぶりなので、楽しみデス」


 俺の頭の上で、他の妖精さんたちとはしゃいでいるメリルちゃん。

 最近俺に付いてまわっている庭の妖精さんたちも何人か付いてくるらしい。

 道中、魔物が襲ってきたり野盗が出たりすることはまずないらしいけど、心強い限りだ。


「ケイトさん、まえ、都行く、あるか?」


 ぽてぽてと歩きながら、メリルちゃんの口写しで先を行くケイトさんに尋ねる。

 最近口写しならなんとか意志が示せてる気がする。

 ただし、ほとんど単語の意味は理解していない。


「*****」

「*****」

「*****」

「*****」


 案の定、何を言われているのかはさっぱりだ。


 メリルちゃんによると、ケイトさんは三年ほど前に、家の仕事に付いて都まで行ったことがあるそうだ。

 都の学校には行かせて貰えなかったと、残念そう。

 今度の旅でも一緒に行くよう、すでに上司から言われているらしい。

 ちょっと楽しそうなんだけど、ラノベなんかだとボロい幌馬車で野宿旅だよな。

 そこのところ、どうなのよ。

 え?

 街にでかけたときよりも遥かに高級な馬車を三台連ねて、衛士の護衛付き?

 侯家の看板背負って旅をするのにボロい幌馬車で野宿とかあり得ない?

 途中宿の手配に、もう先行して人が走ってる?

 バックパックを背負っての東南アジア赤貧バス旅行をイメージしてたら、高級サルーンバスで行く名門旅館に泊まる豪華旅行だったようだ。

 それはちょっと、いや、かなり楽しみかも。

 メイドちゃんと侯女ちゃんも、いずれ都の学校へ行く下見に良い機会なのだけど、急な話で都合がつかないだろうとのこと。


 しかし都とは言っても、もともとさほど力のない貴族家が仕切っていることもあり、官公庁関連がほとんどで観光施設は期待薄らしい。

 ただ、さすがに公用とはいえ人が集まることもあり、グルメには期待できるそうだ。

 むしろ料亭とかお座敷とかあったりするんだろうか。

 あるいはキャバクラな箱物とかノーパンなしゃぶしゃぶ屋とか、ちょっといかがわしい接待用のお店。

 行ったことないんだよな。

 連れていってくれる人がいなそうだけど、ワンチャンないかな。


 それより都へ行く途中に風光明媚なところがあるようだ。

 壮大な高原、深い渓谷、見晴しのいい高台。

 往路は最短ルートを進む手筈だが、復路はちょっと回り道して観光しながら帰ります。と、楽しそうなケイトさん。

 都までの往復はそれなりに需要があるので、旅行案内てきなものも揃っているとのことで、準備しますと。

 4日もかけて官公庁まで出向いたあげく、不審者の尋問に立ち会う、みたいな話っぽくてテンション低かったけど、労苦を補うくらいの楽しみはありそうだ。

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