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ちょっと昭和ちっくな事務所

 醸造処にもどると、レールの上には3連の貨車。いつの間にか貨車が増えてた。

 試運転も終ったらしく、どうぞと案内される。

 いつのまにか乗ることが当然になっている。

 貨車の横に立って丘を見下ろす。

 もう誰か乗って降りた?


「ほーほーほー」


 鳴き声っぽいと思ったら、運転の猿の人が俺を見てなにか言っている。

 大丈夫だと言っているらしい。

 乗ることを決意し、俺はさりげなく上側になる運転席寄に位置取るのだが、妖精さんたちが一番下側に乗るんだとおっしゃる。

 ヒューさんが下りの最前列を希望しているようなので、その前に妖精さんたちだけで勝手に乗ればと思うのだが、妖精さんたちが俺を取り囲んで下側の貨車へと誘導する。

 俺の頭に乗っていたメリルちゃんも何時の間にか前に乗ろうと下側の貨車で手招きしている。

 妖精さんたちの様子を見て、ヒューさんもニコニコ顔で俺に席を譲ってくる。

 そこはもうちょっと残念そうにしてくれていいんだよ?

 メリルちゃんが、なにか事故があってもフォローするからと言うのだが、フラグじゃ無だろうな。


 しかたないので一番下側の貨車に乗り込む。

 下り最前列?のフレームには妖精さんがずらりと並ぶ。

 その後ろに俺。

 1メートル程の箱に体育座りすると、上りと違って後ろにヒューさんが居ないせいか少し足が伸ばせる。

 足を伸ばして出来るだけ後ろへ。

 妖精さんがもっと前へと呼ぶけど、ムリ。勘弁して。

 手足を伸ばしてなんとか格好をつけるが、どうも落ち着かない。

 というか、怖い。

 乗車位置ではほぼ水平なんだが、座ると見える先はもう坂。

 感覚的にはスキーのジャンプ台に立った気分。

 それか絶叫系ジェットコースターとか。

 行ったことも乗ったこともないけど。


 うわ、動き出した。

 発車の合図くらい欲かった。

 ゆっくりと下っていく。

 あれ?

 下りはゆっくり?

 歩くのと同じくらいの速さ。

 もっと転がり落るように走っていくのかと思ってたけど、ちゃんとブレーキをかけてるっぽい。


「ブレーキは大丈夫なのか?」

「猿の人、ガンバってますナ」


 俺の呟きに、運転席の様子を覗いたメリルちゃんが答えてくれるんだが。

 猿の人の脚力まかせらしい。

 あまり知りたい感じの答えではなかった。

 でもスピードがないので、寂れた遊園地のジェットコースター感覚ではある。

 距離も然程ないので、何事もなく丘下に到着。

 貨車から這うようにして足場に移り、地面に降り立つ。

 まあ農産物の運搬や作業員の移動程度なら十分使えるんじゃないか。

 ぶるった足を伸ばしながら、鷹揚に頷いておく。


「******」


 すると早速ケイトさんがやってきて、なにか言っている。


「侯子、呼ぶ。待ってるデス」


 イケメンが呼んでいるらしい。

 なんだろう。

 まあ逃げるという選択肢はないし、呼ばれているなら行きますか。


 館へ戻ると浴室へ案内され軽く手足を洗う。

 イケメンが待っているからと、かなり簡単だ。

 急ぎの用なんだろうか。

 次に案内される部屋は、侯子の執務室らしい。

 館から回廊を経て別棟へ渡る。

 三階建ての大きな建物だ。

 事務棟らしい。

 これがこの侯都の庁舎となるようだ。

 侯爵様の居る官舎では侯爵領全体を見ていると。

 なるほど。

 侯爵が知事でイケメンが市長的な立ち位置なのか。


 「どうぞこちらへ」と案内されたのは、事務棟の奥にある一枚の扉。

 外資系管理職のような個室かと思ったらまさかの大部屋だ。

 左手の壁際にイケメンが座り、その前にずらりと長机を並べて30人ほどが書類仕事にはげんでいる、ちょっと昭和ちっくな事務所。

 オフィスではなく事務所な感じ。

 そのまま扉をくぐり、部屋の奥、イケメンの傍らにあるソファーへ導かれる。

 俺はソファーに腰掛けぐるりと部屋を見回すが、メリルちゃんは執務を続ける職員の机まで飛んで行き、わがもの顔で机を歩き覗き込んでいる。

 機密情報とか大丈夫なんだろうか。


「妖精から、かくす、ムリ。かくす、寧ろ、広がる、デス」


 そういえば、先生が『俺に悪巧み仕掛けようとしたらすぐわかる』とか言っていたっけ。

 この部屋は総務、経理的な部署で、他にもインフラ部門とか、普通の市役所にありそうな部門がこの建物に入っているらしい。


「自転車とか飛行船の開発もここで?」


 もしこの建物でやっているなら、帰りにちょっと覗いていきたいかな。


「アレは、侯爵家の、仕事デス。ベツの、建物、ありマス」


 へー。官民を分てるんだ。


 さほど待つこともなく、イケメンがやってきて、机の上に紙を広げる。

 手紙っぽい。

 メリルちゃんもすぐ気が付いて戻って来てくれる。

 そしてイケメンがなにか説明を始めるのだが、相変わらずさっぱり判らない。

 メリルちゃんがフムフムと手紙を読み、イケメンの言葉に頷く。


「都へ、来て欲しい、ようですナ」

「え? なんで?」

「都で、日本のかた、らしき人が、見つかった、ようですネ」


 どうやら俺が召喚された時を同じくして、都で日本人らしき人が発見されたらしい。

 迷子として保護された?

 不審者として捕まえた?

 よく判らないのだが、都の市場で不審者を保護したら日本人らしく、日本語の話せる人を募集する通達が全国に向けて出されたらしい。

 じゃあ、俺じゃなくてもいいじゃん。と思ったら、入れ違いで俺を召喚してしまった連絡が都に出されているらしく、無視するのは不味かろうと。

 まあ都見物はしたかったし、別に行ってもいいけど?

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