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リアルお猿の電車

 俺もこちらの世界の服飾の歴史などをマダムから学びつつ、小一時間ほどして解散となった。

 メイドさんに確認してもらうと、果樹園のモノレールも試運転が始まっているらしい。

 急いでいかなきゃ作業が終わっちゃうか?

 おー! と騒ぎ立てる妖精さんをぞろぞろと引き連れ、ケイトさんの案内で果樹園をめざす。

 え? その前に着替えろと?

 へやの隅に、メイドさんが着替えを持って待ちかまえていた。

 埃まみれになるから作業着に着替えてから行くらしい。

 メイドさんの後ろには、いつの間に用意したのか、目隠しの衝立が設置されている。

 しかし衝立の陰に入るとメイドさんも一緒に付いて来るんだが、一体誰の目から隠すためなんだ。

 妖精さんたちも衝立の上に座って俺の着替えを暇そうに見てるし。



 庭の池に架かった回廊を渡り、その先の庭園を抜けて、果樹園の下縁へとたどり着く。

 下縁に沿ってずずっと進んだ先、醸造所を真下へと下った辺りに人が集まっている。

 あそこがモノレールの下側起点らしい。

 目を凝らすと、下側起点から醸造所までレールが伸び、そのうえを動く木箱らしき物が見える。

 起点から醸造所へとゆっくりと動く木箱を目で追いながら作業現場へと近づいていくと、なにか文字の書かれた黄色の横板を張ったハードルが設置されていた。

 横板の上で小さいながら目につく赤い光が数個点滅している。


「赤い魔法石ですな」


 メリルちゃんがピカピカ光っているのは赤い魔法石だって言うんだが、それって自光するルビーってことじゃないか?

 良く見ると、確かに俺が買って貰ったのと同じような、単三サイズの魔法石が板に刺さってる。

 板には「工事中につき関係者以外立ち入り禁止」と書いてあるらしい。


 ハードルの前で待っていたメイドさんにヘルメットを渡された。

 門の脇に居た機動隊の人が被っていたヤツに似ているが、こちらは額のところに小さな鍔が付いている。

 色が地味なのが残念。

 ケイトさんやヒューさんは女性なのでこういうヘルメットを被るのは躊躇するのかと思い気や、ごく普通に被ってる。

 二人ともこんなヘルメットを被ることがままあるらしい。

 とはいえ、ヒューさんはホントに気にしていないようだが、ケイトさんはやはり髪型とか気になる様子。

 ふと気付くと、メリルちゃんやエマさんを始めとする妖精さんたちもヘルメットらしきものを被っている。

 そこらへんの葉っぱで自作したらしい。

 胸を張ってドヤってるんだけど、メチャ可愛い。

 特に効果のあるしろものでは無いらしいが。

 顎紐を留めるのにモタついていると、ケイトさんがググッと近付いてきて留めてくれる。

 うわー。顔が近い。わー。睫毛長いなぁ。なんかいい匂いがする。

 異世界ラノベならここでご馳走展開があるんだろうが、残念ながらそんなものはない。

 まあいいさ、俺の心のメモリーに大事にしまっておこう。

 しっかりヘルメットが装着できているのを確認して、脇に避けられたハードルを越えていくと、木工さんが駆け寄ってきてぺこぺこと挨拶してくる。

 他に作業している人達は、初見のような気がする。

 その中から一人、優男ぽい人が前に出て挨拶してきた。


「*****」

「建物を造る系の親方だそうです」


 たぶん親方というより、現場監督か設計技師って感じだろう。

 後ろに画板の様な物を首に掛けたアシっぽい人を連れている。

 正直何言ってるかさっぱり分かってないが、ヒューさんと親方の会話を分かった振りしつつ、徐々にモノレールへと近づいていく。


 レールは箱型をした金属製で、金属の支柱が横から刺さって支えている。

 レールの上に波板が付いているのは、急勾配用の歯だろうか。

 つい不用心にレールを観察していると、グイッと肩を引かれた。

 そのまま後ろによろけると、背中になにか柔らかな感触。

 おお、目の前に箱車がレールを下ってきていた。

 振り向こうとすると、直ぐ横にケイトさんのお顔。

 どうやらモノレールの貨車に弾かれそうになった俺をケイトさんが助けてくれたようだ。

 そしてこの柔らかな背中の感触はケイトさん。

 振り向きかけたときは頬やら唇が触れ合いそうになるし。

 イヤー、この感触、一生忘れないわ。

 ではなく。

 ケイトさんにペコペコと頭を下げておくが、感謝の意は伝わっただろうか?

 そして改めてモノレールに目を戻す。

 妖精さんがフラフラと飛んでくるのだが、どうやら貨車に弾かれたらしい。

 そして直ぐに貨車の下に潜り込んでいく。

 メリルちゃんやエマさんも貨車の下回りを覗き込んでいる。

 これ、動力はどうなってるんだろう。

 くるりと貨車の前に回り込むと、フィットネスバイクみたいなのが先頭に付いている。


「*****」

「*****」

「*****」

「ウエ登ル、サルの人、こぎます」


 そう言ってヒューさんが貨車を指し示す。

 ちょうど貨車の中から、1メートルくらいしかない小柄な猿の人が、俺たちを覗き込んでいた。

 彼?が、このペダルで歯車を廻し、レールの波板を進んでいくらしい。

 なんという力ワザ。

 リアルお猿の電車か。

 しかし自転車なんて、つい昨日見せたばかりなのに、アッと言う間に応用が進んでいる。


「運ぶ、ふえる。丘のウエ、水車ツクリます」


 荷物の量が増えてきたら、いずれ水力で牽引する事は考えているらしい。


 猿の人が休憩している間、貨車にズタ袋をみんなで載せる。

 採取した果実を想定した重りらしい。

 そして重りを載せ終わると、猿の人がフィットネスバイクに跨り勢い良く漕ぎ始める。

 結構なスピードで、急勾配をモノともせず登っていく。

 大したパワーだ。

 イヤー、なにかアドバイスがとか、とんだ上から目線だったな。

 あれ? ズタ袋のうえに妖精さん?

 果樹園組の妖精さん、半分くらいが貨車に乗って手を振っている。

 これに乗って帰るらしい。

 俺も手を振って応える。

 今日は色々ありがとうございました。

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