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密輸した珍獣?

 普通の服は縫ってるらしい。

 服には案の定中古市場があって、謎接合だとサイズ調節が大変だから。


「アカ布にキン糸の服。一番エライ服デス。こっち、三番くらい」


 一番偉い服って何ぞや。と問えば、礼服のなかで一番格式の高い燕尾服みたいな立ち位置の服っぽい。

 この家の当主である侯爵様と公式に面会するような時に必要らしい。

 三番目ってのは、もう少し下の子爵とか騎士爵とかとの公式な場や、超偉い人と非公式に合う場で着るのだとか。


「スグに、侯爵と会う、ありマス。コセキ、貰うデス」


 どうやら、近いうちに三番目の服を着て侯領の官邸?へ行って、侯爵様から戸籍を授けて貰うらしい。

 そうだよ。今はまだ戸籍もなんもないんだ。

 今の俺の立場は、『密輸した珍獣とかそんな感じで、侯領での飼育許可証を貰う』のだとメリルちゃんがかましてくれる。

 それも言い得て妙というか。しかし、それをたとえるなら飼育許可をもらうのはイケメンか侯女ちゃんで、俺がもらうのは鑑札だ。


 とはいっても、侯爵様と面会とかはっきり言ってめんどくさい。

 お役人様に書類回して判子突くだけじゃダメなの?


 侯爵と面談して、その場で俺は、『この地の領主である侯爵家に招かれた、日本からの渡界人、山内陽一』という正式な名称と戸籍を貰えるとのこと。

 侯爵家に“招かれた”ってところで微妙に立場が高くなるらしい。

 そのためにも、一応当主である侯爵様から直々に名称授与の書類を渡される必要があるそうだ。


「失敗召喚に対する、誠意ですナ」


 メリルちゃんや、話を聞いていた妖精さん一同が頷いている。

 それじゃあまあ、致し方なし。


 少し身体を動かして、サイズの微調整。

 紋章官のおばさんにOKをもらい、朱地に蒼糸で刺繍の施されたそこそこ派手な三番服はこれで完成。

 ヒューさん、ケイトさん始め、服屋の人もおばさんも、作りに問題がないかをジャッジしているだけで、似合う似合わないをジャッジしている人が居ない気がするんだが、大丈夫なのだろうか。

 今さらデビュタントして、居並ぶお嬢様、御婦人方に『まあ、ステキ』とか言って貰えるとは思ってないけど。

 官邸の廊下を歩いてる最中に、職員の女の人に『プー、クスクス』とかされたら死ねる。


 そんなこんなで山盛りの服の丈合わせ終了。

 仮縫い服の丈合わせが、こんなに疲れるとは思わなかった。

 ソファーにドサリと腰をかけ、メイドさんから貰った乳酸菌飲料のような飲物を飲んでいると、マダムから『服飾文化について是非お話を』といわれるが、どうやら裏で取り決めができていたらしく、形式的に了承してのビジネスランチ。

 あれよと言う間に服が片付けられ、テーブルがセットされ、少し離れて長机が置かれた。

 すぐに簡易な調理器具とパン等の食材を抱えた一団と伴に、揚々とシェフがやってきて、長机の向こうにスタンバイ。

 シェフが手招きするので長机に向かう。

 パンと具を選べといっているらしい。

 今日の昼御飯はサンドイッチを作るのか?

 ヒューさんに聞くとそうだと言う。


「マダムと、話す、スルとき、絵描く。しながら、食べれマス」


 ああ、マダムと話をするときに、絵を描いたりしやすいように考えられているらしい。

 俺は鳥を蒸したの(っぽいの)とレタス(の様な葉物)を食パン(らしき物)で挟んだサンドイッチ。

 それからロールパン(らしきもの)にハムとスクランブルエッグを挟んで貰う。

 鳥っぽいのは、トカゲとかワニとかそんなのかもしれない。

 卵もなんの卵かは分からない。

 とりあえず身体に毒でなくておいしければへたに追求はしない。

 それがインド旅行したときに学んだ、物をおいしく食べるコツ。

 あ、あとなんかお薦めで二個ほどお願いします。


 注文から戻ると、四角いテーブルの一辺に座らされ、その両脇にマダムとヒューさんが座る。

 狭いテーブルなので、マダムの圧が強い。

 さっそくマダムから俺がもともと履いてきたズボンのジッパーについて聞かれる。

 店で見かけたのはやはり俺のジーンズだったようだ。

 ジッパーの仕組みは割と簡単で、スライダーの構造も大学の授業でやったのを覚えてる。

 しかしマダムの聞きたいのは構造よりも利用するシチュエーシヨンぽい。

 ついでにマジックテープにも言及しておく。

 あとパンツ(下着)のゴム。

 これはゴムをヒューさんに錬金してもらいつつ、ゴム紐の説明。

 最近のボクサーパンツはナイロン糸らしいけどな。

 こちらは、袖口やジッパーと組み合わせて上着の裾に着けて防寒性能を上げる等の使い方を紹介。、

 ヒューさんによると、ジッパーはもう侯爵家傘下の工房で試作が始まってるらしい。

 専用の工房を新しく立てて、軍でも採用する話まで進んでいるのだとか。

 ゴムはその他の有機材料と一緒に魔法学校の研究室で色々と研究をやることになったらしい。


「先生も、なんかやってましたナ」


 メリルちゃんが言ったそばから、先生達がやってきた。

 マダムへの説明で、コミックスの登場人物が着ている服のデザインが参考になるかと思って、メイドさんにiPadを取ってきて貰ったのだが、それに付いてきたようだ。

 妖精さんはマダムには見えない様なので、先生には軽く挨拶だけ返してマダムとのお話を続ける。

 電子書籍リーダーでコミックを探していると、なぜか女性ファッション誌(水着特集)が。

 イヤー、ナンデカナ。

 しれっとした顔 (のつもり)で女性ファッション誌を表示して、夏のオシャレコーデページを表示。

 案の定マダムが食いつくので、妖精さんにコピーを取ってもらう。

 先生をはじめとする妖精さんも覗き込んで、あれがいいだのこれがいいだの騒いでいる。

 妖精さんもファッションには興味があるらしい。


「ワタシも、絵、写す、したいデス」


 あ、ヒューさんもコピーが欲しいの?

 どうぞご自由にコピーお取りください。

 そう言うとヒューさんは自分で画面のコピーを取るのだが。

 あれ? なんかモデルさんの顔がヒューさん寄りになってない?

 なるほど、これが意図する方向に現象が曲がる効果か。

 ちょっと違う?

 ですか。

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