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2次会のカラオケノリで盛り上がってるんだと

 ボンってなるという言葉にちょっとビビってしまうが、えへへと笑うメリルちゃんのゆるーい態度に肩の力が抜ける。


「それでは」


 という合図とともに、メリルちゃんの触れる指先が微妙に温かくなり、なんか白い靄の様なものが両手を包むように表面を伝わってくる。


「え? これ大丈夫なの?」


 俺の問いに鼻歌を歌いながら『では、少しユルめますか』と軽い調子のメリルちゃん。

 白い靄が若干薄れ、靄に包まれたというより日焼け止めをたっぷりと塗りたくった感じに。


「この白いのが、魔力の道なんですか?」


 温めの炭酸泉に浸したような、ちょっとシュワシュワとした温い感覚が手を伝ってくる気がする。


「たんなる、ビジュアルです。今日は、みなさん見ておられますノデ」


 え? ただのエフェクト?

 メリルちゃんの言葉を通訳しながら、ヒューさんがエェッ?と驚いた顔で俺の腕をガン見する。

 先生の解説に奥の方でブフっという吹き出す声がする。

 部屋全体的に張り詰めていた雰囲気が、一気に弛緩した。



 なんとなく温かい流れがメリルちゃんのなすがまま体の中をぐるぐると巡る。

 特に気もちが悪くなるわけでも良くなるわけでもなく、昂揚感に包まれるわけでもなく。

 からだがぐねぐねと揺すられる感じがしてくる。

 深夜通販でみかける振動式のダイエットマシンを付けてるとこんな感じなんじゃないだろうか。

 どのくらい経っただろうか。大きな欠伸を連発し、ぼんやりと気怠くなっていく。


「今日はこれくらいにしますか」


 少し寝てたかもしれない。メリルちゃんの言葉にハッとする。

 ワッと拍手がわき上がる。

 この世界でも拍手があるんだと、やけに巡りの悪い頭で、ぼんやりと思った。

 特に何かが丹田を巡るとか、チャクラが開いたという感覚はない。

 まあ、丹田とかチャクラとかが何なのか知らないけど。

 ぐねぐねと身体を揺すられる系のマッサージを受けた様直後というか。

 気分は良くも悪くないが、ただぼんやりとして頭が回らない状態だ。

 魔法使いの大御所達は、おっさんがマッサージされる姿を見てただけで、なにか役に立ったのだろうか。

 それなりに納得顔なので好としよう。

 入れ替わり立ち替わりで妖精さんが俺の顔を覗き込んで、額に軽く触れていく。

 両腕を支えていた根枝がシュルシュルと引き上げられて、ゆっくりと腕が降ろされる。


「ダイジョブですか?」


 ヒューさんが気遣わしげに聞いてくるが、大丈夫と気怠く返事をする。

 観客の視線を浴びながらも、欠伸が出てしまう。

 軽い貧血か低血糖ってこんな症状じゃ無かったっけ?

 正面に座る心配顔の侯女ちゃんと目があったので、にへらっと笑ってみせる。


「****」

「****」

「****」


 医者だろうか、白い、足首まである貫頭衣っぽい服の女性が近くに寄ってきて、俺の体温やら脈やらをぺたぺたさわって調べながら、なにか言っている。


「ヨワイ、魔法、ヨウ。あります。すこしヤスム、ダイジョウブ、です」


 初めての魔力に酔っているらしい。


「なんか、部屋中に薄い精霊さんが溢れてる感じがする……」


 目に見えているのではない様なんだが。

 “透明”な霧というか靄というか。

 神殿の泉から湧き出す白い光とか、果樹園のパワースポットから吹き出る土色の光の透明版って感じの何かが、部屋に溢れているのが判る。


「それが魔力です」

「しっかり感じておられる様子」


 呟く俺に、メリルちゃんと先生がやってきて、そう言うのだが。

 単に眩暈がしてチカチカしてるだけの気もしてきたが、今の所はメリルちゃんたちを信用するしかないか。

 それにもまして、腰に力が入らない。

 さっさと引き上げてしまいたいのだが、立てない。

 っていうか、腕にも力入らないじゃん。

 一日動けないって、このことか。


 ソファーの向こうに立っていた観客たちは三三五五帰って行き、しばらく居座って先生と話をしていた魔法使いの大御所達もイケメンに促されて去っていった。

 最後まで残っていた心配顔の侯女ちゃんも、メイドさんに促されて出ていった。

 残っているのはヒューさんとメイドさんが二人。ひとりはメイドちゃんじゃないか。

 あと大勢の妖精さん。

 ただし、妖精さんは俺を気遣うとかではなく、人数と広さを生かして踊りの練習を始めている。

 なんだか大勢でワチャワチャ踊っているので、4人×5チームくらいで場所を入れ替わりながら踊るなんとか48とかブロードウェイミュージカルの様な踊り方を教えると、なるほどと頷いてすぐにまとまって踊り始めた。

 コーラス・ラインのラインダンスか、ウエスト・サイド・ストーリーの有名な最初のダンスシーンを教えられたらよかったんだが。残念。

 その間にも俺はズルズルとソファーに倒れ込み、ゴロリとしてしまう。

 ちょっとお行儀の悪い姿だが、ヒューさんからもメイドさんからも特にお叱りの言葉もなく、いつの間に持ってきたのか、メイドちゃんにタオルケットを掛けてもらえすらしている。


 新作ダンスを決めポーズで締めたメリルちゃんが、そのまま俺の前まで飛んできた。


「全然動ける気がしないんですが。これ、大丈夫なんですか?」


 俺の質問ににへらと笑い、ペタペタと俺を触るメリルちゃん。

 ようするに魔力という新しいレイヤーを認識したことにより、情報過多で脳がショック状態になってるらしい。

 緊張状態なら身体が硬くなるんじゃないかと思うんだが、そういうものなのだそうだ。


「しばらく、身体がナレるのを、待ちましょう」


 ということらしい。

 身体を慣らすのには、程良い魔力濃度の場所にいるのが良いらしく、実はその魔力濃度の調整に妖精さんたちが残ってくれているらしい。

 それはありがたいことだ。

 2次会のカラオケノリで盛り上がってるんだとばかり思ってた。


「ヒテイはデキませんな。一石二鳥デス」


 “2次会のカラオケ”を説明すると、メリルちゃんがニヒヒと笑った。

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