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「マリョク、ふやす、ショクジ、そろえましタ」

 朝の目覚めは、正直なところあまりよろしくはなかった。

 寝不足のせいだ。

 遠足前の小学生かって話だが、興奮して眠れなかったのだからしかたない。

 庭の妖精さんズがエマさんと、天幕の中をフラフラと飛び回ってたのもあるけど。

 昨夜は最終的に、妖精さんズが不思議な踊りを俺の回りで踊っているのを見ているうちに寝てしまったが、あの踊りはスリープ系の魔法だったんだろうか。

 

 身体を起こして大きく伸びをしていると、扉が開いてメイドさんが洗顔セットを持って入ってくる。

 いつもながら実に的確なタイミングだが、覗き穴とかあるんじゃなかろうか。

 大あくびをかましながら窓際に用意された洗面器の前まで進み、お湯で顔を洗う。

 あー。ちょっとすっきりしたかな。


「よし、今日はいよいよ魔法デビュー」


 と密かに心を湧き立たせるも、メリルちゃんは特に気追った風でもなく、庭妖精さんたちとおしゃべりをしている。

 あれ?

 今朝は妖精さんが多くないか?

 ふわっと風を感じ、振り向こうとする俺の横を、窓から入ってきた影が横切る。

 テトラさんだ。

 俺の前で軽く挨拶をして、メリルちゃんたち妖精さんの輪に入っていく。

 テトラさん、今日は手足の指が長く伸びて、なんか木の根っ子っぽさに溢れている。

 この姿なら木の精霊とか紹介されてもなっとくだ。

 扉の開く音がするので振り返ると、ヒューさんが妖精さんたちを見てちょっと驚いた顔をしている。


「なに、ありますか? ヨウセイすごく、おおいです」


 確かに。いつの間にか10体くらいの妖精さんが、ベッドの上で座ったり転がったりしながらこちらを見ている。

 大きな祭とかで道や広場に浮かれて出てくることはあっても、それでもこんな風に妖精さんが“一同に集まる”ことはないらしい。


「今日の、テツダイに、テトラを、呼んだら、いっぱい、ツイテ来ましたな」


 メリルちゃんの日本語上達が凄くないか?

 普通に聞きとれるようになってきた。

 俺の聞きとり能力が向上したともいえるか。


「あさ、しょくじ、たべる、いきます」


 ヒューさんは、朝食に呼びに来たようだ。

 そういえばヒューさんの日本語も凄いよな。まだ習い始めて二日か三日くらいだろ?

 言葉に堪能な人の頭の中ってどうなってるんだろう。と、TOEIC400点の俺は思う次第だ。


「魔法の修行は、朝ご飯食べてからでいいんだよね」

「ハラが減っては、イクサがデキヌです。先生が来るのもまだ先でしょう」


 じゃあ、朝ご飯にレッツラゴー。

 我ながら、今朝はテンション高いな。

 俺が立ち上がると、メリルちゃんが呼んだのか、エマさんが一緒についてくる。

 あとの皆は部屋でマッタリと待ってるらしい。



 案内されるまま食堂へつくと、今朝はイケメンだけではなく侯女ちゃんもテーブルを囲んでいた。


「おはようございます。……『おはようございます?』」


 とりあえず日本語で挨拶をし、メリルちゃんからの耳コピーで挨拶を重ねる。


「おはよ..ご...ざいま.す!」


 侯女ちゃんが両手を振って、ニコニコ顔で挨拶してくれる。

 なにか良いことあったんだろうか。


「******」

「******」

「昨日のオチャカイで、タケトンボが、大人気だった、そうです」


 それはよかったじゃないか。

 俺がビッとサムズアップして見せると、え?という感じで首をかたむけながらも、侯女ちゃんもサムズアップ。

 妖精さんがやってるから大丈夫かと思ったんだけど、それほど一般的ではない様子。

 でもすごく可愛いから是非サムズアップをはやらせて欲しい。


「*****」


 なんかイケメンが言ってる。


「きょう、いつ、はじめるデスか?」


 ヒューさんにそう言われるが、どうなんだろう。


「先生はいつも10時くらいに来てると思うんだけど」

「今日も、そのくらいの時間に、来ると、おもいます。ジュウデンに」


 毎日充電か。

 通信機能はオフったはずなのに、ずいぶんとヘビーユース。

 妖精の里?で毎日ビデオ再生しながら踊ってるんだろうか。


「でも、昨日、太陽電池パネル作って帰りましたよね」

「んー、でも、いらっしゃるでしょう」

「じゃあ、先生が来て、お昼ご飯食べる少し前とかそんなくらいですか」

「おひる、ゴハン、マエですか?」

「そのくらいで」

「*****」

「*****」


 俺の返答にヒューさんがイケメンと協議中。

 その間俺は、メイドさんが運んできてくれた朝食セットに舌鼓を打とう。

 今朝はパンと野菜のスープ。それに果物。

 さっそく食事に手を伸ばそうとするも、パンの前でちょっと顔を傾げ、エマさんが手の平からビーム的な所作をしている。

 その傍らで、メリルちゃんがスープをチェック中。


「今日の朝ご飯は、魔力を多くハランでイますな」


 フムフムと頷くメリルちゃん。


「これは、エマを、連れて来る、ヒツヨウが、無かったですかな?」


 エマさんが何をしているのかと思えば、食べ物に魔力を注入しているのだそうだ。


「マリョク、ふやす、ショクジ、そろえましタ」


 一方で、俺が魔法の訓練を始めるので、今日の朝食は魔力を高める素材を使った特別品を用意してくれたらしい。

 精力増強に鰻の粉末を用意してたら、ニンニク増々しのカルビ焼きが出てきたみたいなコト?

 エマさんが俺を見上げて、ひと仕事したぜ感をだして額の汗を拭う仕草をするので、おそるおそるスープに手を伸ばす。

 具だくさんの野菜スープ。なんかヤバい味になってるかと思い気や、味は普通に美味しい。

 魔法パワーは特に苦みや辛みがあるわけではないようだ。

 身体がカッカと熱くなってくるわけでもないし。


「まだ、魔法を、感じていない、のでしょう」


 ということらしい。

 魔法が感じられるようになると、なんか胸アツなパワーが注入されるてくる感じがするのか?

 メリルちゃんと話しながら食事していると、エマさんがなにか合図してくる。

 指し示す方を見ると、ヒューさんがなにか口を挟もうとする様子。

 ??


「あー。おひる、ゴハン、アト、いいですか?」

「え? なにが?」

「マホウのレンシュウ。おひる、ゴハン、アト、いいですか?」


 どうも、魔法の練習は午後からにして欲しいらしい。


「……ハヤメでなら、よろしい、でしょう」


 うーんと一考したのち、メリルちゃんがウンウンと頷く。

 なんかこの間に不安を感じるな。

 ワクワクよりドキドキが上回ってくる感じ?

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