自然充電式個体電池
「ふぁーぁー」
思いきり大あくびを漏らす。
今日は朝からいっぱい働いたし、お昼も食べて、なんだか眠くなってきた。
「ふぁー、眠い、ふぁー、あ?」
あがが、大きく開いた口を妖精さんがのぞき込んできた。
なにやってんだ。噛んじゃうところだよ。
「*****」
「*****」
「*****」
「ヤスム、しますか?」
ヒューさんのありがたい言葉にコクリとうなずくと、手を引かれんばかりの勢いで作業場から連れ出された。
というか、気がついたら実際にケイトさんに手を引かれ、ヒューさんには肩を押されている。
美人二人に挟まれて、若干目が覚めてしまうのは仕方ない。
本館へ渡り、グルッと裏へと回り、二階へと上がる。
そうして辿り着いた先は、南国リゾートホテルのロビーようなオープンホール。その先のテラスにしつらえられた東屋だった。
部屋へ戻った方が近かったんじゃないかと思ったが、この時間だと清掃とかしてるのかも。
テラスの先を覗くと、そこには果樹園に行く途中にあった渡り廊下の掛かった池。
そしてその先には、丁度良い高さで果樹園のある丘が借景となって広がっている。
東屋はテラスの手擦り寄りにある、キングサイズベッド程の大きさで、ソファーで埋め尽くされた、薄布張りの建物で、ありていにいうと天蓋付きのお姫様ベッドだった。
ソファーへとのぼると、高級織物っぽい、少し厚手で柔らかい素材のブランケットをメイドさんに渡される。
そのままブランケットを被るようにしてゴロンと横になる。
温かな日射しとブランケット。心地よくも涼しい風。
とりあえず一時間寝よう。
耳元でごそごそという物音がし、枕元がフワフワと跳ねる感触に目を覚ます。
頭上にあった太陽はほとんど位置を変えていないことから、まださほど時間は経っていないようだ。
ゆっくりと身体を起こすと、先生を始めとする妖精さん。
「おはようございます」
ぺこりと頭を下げてご挨拶。
「おお、おめざめですか」
先生がなにやらゼンマイの付いた木箱を手に飛んでくる。
その後ろから来る妖精さんが持ってるのは、妖精さん作の太陽電池パネルか。
「これで、はかれるそうです」
ドヤガオで木箱を差し出してくる先生。
え? なにが?
と考えている隙に、太陽電池パネルの端子に先生が木箱から垂れた紐を繋ぐ。
ヒュンと木箱に付いたゼンマイの先端が振れた。
「ああ、電圧電流計」
「*****」
「*****」
「*****」
なんかまた新しい、ゆるふわ可愛い系の妖精さんが登場しメリルちゃんに話かけて
「あっちとこっち、でんきのサ?を、しめしている、そうです」
この変な道具は電圧計らしい。
そう思って見れば、木箱の裏にU磁石と思しきものが付いていて、その間にコイルを巻いた棒が刺さっている。
折角の魔法世界なのに、魔法要素がかけらもないのが残念なくらいの出来だ。
「ここが、ソーラーチャージャーの、あたいでした」
先生の指さす先、木箱に小さな印がついている。
もう計ってきているらしい。
「でんきのサは、おなじでした。でんきのナガレは、こちらが、すこし、ちいさい」
電流計も作ってきたっぽい。
「で、こちらの方が、エレクトリックマスターさんですか?」
ゆるふわさんに会釈しながら、メリルちゃんに尋ねる。
「ですです。でんきの、ちからを、はかる、ほうほうは、サミカが」
「サミカ?」
「こちらは、サミカ、といいます」
メリルちゃんの紹介に、ゆるふわっとした笑顔で笑い掛けてくるサミカちゃん。
すごいホンワカ癒し系キャラ。
電気のことならお任せらしい。
じゃあ先生のiPhone充電も出来たんじゃないかと聞いたら、へたに電圧掛けて壊すと大変なので嫌がってたそうだ。
それが俺のソーラーチャージャーがあったことで、じゃあまずはどのくらいの電圧、電流が必要なのか計る計器を作りましょうって、作ってくれたのだとか。
「*****」
サミカちゃんが、コイルを指さしてなにか言ってる。
「デンキのトオるセンを、シロいネバネバで、オオえるのが、とてもヨイそうです」
白いネバネバ?
白いネバネバってのは、どうもナイロンとかのポリマーのことらしい。
すごいな、これ。電磁誘導がわかってるってことだろ?
俺はその電圧計を貸して貰い、クルクルと回しながら出来栄えを観察する。
………???
もしかして、このコイル部分でモーターできるんじゃないか?
「もーたー??」
メリルちゃんも先生も、モーターって言葉をご存知ないらしい。
二人ならんで首を傾げる姿がラブリーだ。
「磁石があって、コイルに電気を流してやると……」
俺が説明を始めると
「ああ、このホウソクですな」
と、メリルちゃんが両手の指でそれぞれ三軸を形作る。
俺を見上げ、指を曲げた状態で両手を差し出してくるので、ちょっとウェーイなポーズにも見えてしまう。テラかわいい。
そういえば、今朝がたフレミングの法則の話をしたっけ。
「*****」
「*****」
「*****」
「*****」
俺の話を先生が解説し、サカミちゃんがウンウンと頷き、ヒューさんがホウホウとメモをとる。
そうしている間にメリルちゃん他の妖精さんが、サカミちゃん指導の元、モーターっぽいものを作り上げていく。
妖精さんが磁石にバチンと挟まれる。磁石が結構強力だ。大丈夫か。ああ、怪我はしていないみたい。
組み上がったモーターの電極にサカミちゃんがエイっと魔法石を繋ぐと、クルクルと回り出した。
なんかアッと言う間にモーターが組み上がってしまった。直流式のブラシ付モーターだ。
電気は魔法石が周りから吸い上げてるらしい。
魔法石の回りに魔法で半透膜を構成して、周囲から電荷を集めて溜めこむのだとか。
えー、それって自然充電式の個体電池とか、無給の燃料電池ってことなんじゃないか?
そんな発電機が出てくるなんて、ソーラーパネルいらなかった?
対抗して?三極式モーターの構造と動作の仕組みを解説する。
クルクルと回りながらコイルを巻いていく妖精さんがラブリー。
まあなにはともあれ、蒸気機関どころかガソリンエンジンもスッ飛ばしてEVの時代が来ちゃうかも。
夢が広がるなぁ。




