「ケーブルカー、つくる、しましょう」
魔法石駆動の空気浮揚式鉄道が実用に供するには、積載重量と魔法石の大きさを見積もって採算を考えるとか、どうやって止めるのかとか、考えなきゃいけないことは色々あるだろう。
まあ、その辺りは適当にお任せするとして。
とりあえず、お昼にしよう。
メイドさんも『はやく食べろ』って何気なく視線で語ってるし。
お昼は、またおにぎり?
今日のおにぎりは、海苔のかわりに緑の葉っぱが米を包んでいる。
ここの人たちがおにぎり好きなのか、俺が日本人で米ラブだと思われているのか。
濡れたタオルで手を拭い、しっとりとした緑の葉に包まれたおにぎりを手にとる。
葉が食べられるタイプの桜餅の桜の葉っぽい。
この葉っぱごといくみたいだ。
そしてそのままガブリと食らいつく。
ん? んん?
中が甘い。
具はしょっぱめの何かと思ってかぶりついてみたが、なんと甘い。
かじり後を覗くと、中に入ってるのは緑色い……餡?
甘い餡に少しモチモチとした米の食感。
どこかで味わったことのある味わい。
ああ、おはぎだ。
口をモグモグとさせながら得心する。
「これは、おはぎという食べ物に似てますね」
おにぎりのかじり口をのぞき込んでいるメリルちゃんに話しかける。
「砂糖で煮た豆を餡と言いますが、粘り気の高いお米を荒く突いて固めて、餡で包んだオヤツです」
「*****」
「*****」
「*****」
「さくらもち、だそうです」
「桜餅?」
これは握り拳ほどの大きさがあるが、もっと小さければ、確かに道明寺はこんな感じか。
でも葉っぱに桜っぽさがないがな。
むしろ、塩漬けした紫蘇の葉に近い味がする。
この紫蘇の葉風味で、グッとおかず感が上がっている気がする。
でも餡と米の比率では、おはぎだけどね。
まあ美味しいからいいか。
俺向けに気を使って日本食っぽいものを出しているのかもしれないが、ヒューさんとか魔法使いとか特に躊躇する様子もなく食べてるから、割りと普通に食べられている食べ物のようだ。
あたりを伺いつつコップに入った飲物を一口。
うーん。
コンソメ出汁の味噌汁?
和食というよりも、ヌーベルキュイジーヌって感じ。
おはぎ二個と野菜味噌スープを堪能しホッコリ。
あと何するんだっけ?
「ケーブルカー、つくる、しましょう」
ああ、ケーブルカーね。
線路と貨車があれば、ケーブルカーは簡単なもんだ。
40°くらいの傾斜を板で作って貰い、線路を二本貼る。
荷台が平らになるようにスペーサーを挟んで台車に車軸を取り付ける。
これを二台作り、紐で繋いで、板の上につけた滑車に掛ける。
片方に適当な錘を乗せ、もう片方にはアルミ缶?をセット。
アルミ缶?
へえ、なんか深絞りっぽいことやってるな。
坂上の台車に載ったそのアルミ缶に水を注ぐと、やがて錘の乗った台車がゆっくりと上昇してくる。
「ここで荷物を下ろして、缶から水を抜けば。貨車が下へさがります」
「なるほど、イリグチのサカなら、ミズは、つかいホウダイですからな」
ヒューさんが台車のアルミ缶から水を抜いてるんだが、魔法を使ってるのか、缶の上から水が溢れ出てくる。
「あげる、おろす、オモサおなじ。まわすチカラすくないデス」
板の中ほど釣合のとれたところで缶からの水抜きを止め、滑車をくるくると回すヒューさん。
「*****」
「*****」
熊の人に板を立てたり寝かしたりして貰いながら、俺、メリルちゃん、ヒューさんの三人でケーブルカーの模型でごちゃごちゃ喋っていると、後ろから魔法使いの人が何か話掛けてくる。
「ハシラ、タテるします。エベレータなりますか?」
俺は頷くと、親方に1メートルほどのH型鋼材を二本二組作って貰い、板から3センチ程の高さに支え棒で張って貰う。
鋼材の窪みに車輪を填めて台車を挟み込めばエレベーターだ。
しかし、ここじゃエベレータって名前になっちゃうな。
ついでに吊り下げ式モノレールも作ってみる。
空を走るアドベンチャー要素で受けたが、動力があの馬車を引いてたサイとかだと、使えないじゃん。
改めて部屋を見回すと、ところ構わず作品で溢れている。
メイドさんが何を片付けて良いものかわからず諦め気味だ。
自転車が五台ずつ。線路と一編成の客貨車。空気浮揚式鉄道の実験線路と試験車両。
ケーブルカーにエレベーター。そしてモノレール。
男子大好き働く乗物大集合だ。
俺は一切手を出してないけど。
異世界物で金属加工といえば鍛治屋ドワーフの鍛造だけど、これだけ金属加工物溢れる中、これまで一切金属を叩いてないのが笑える。
あれだ、異世界物の金属加工は日本刀の刀匠にイメージ引きずられ過ぎ。
実際には板バネを整形熱処理したヤツのほうがよく切れて使えたらしいし。
この世界は戦争が絶えて久しいそうだし、鍋釜作るんじゃ鍛造より鋳造か絞りが発達するよな。




