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“かっちゃん”

 朝の訓練は終了しているみたいで、練兵場では機動隊の人達がのんびりと身体を動かしていた。

 運動後のクールダウン見たいなことなのかも知れないが、普段運動というものに縁遠い俺には、ただぶらぶらしているようにしか見えない。

 装備とか見たかったんだが、ぶらつく隊員のひとと結構距離があって良く見えない。

 身体を乗り出すようにして柵に捕まってのぞき込んでいると、脇の建物から一人、俺の方へと駆けてきた。

 柵の横木に上がってのぞき込んでたのはまずかったか?


「おや、マチあるきのときに、ともをされたかた、ですな」


 逃げるわけにもいかず、柵から降りてそしらぬていでいる俺に、メリルちゃんが話しかけてくる。

 えっ? そうなの? あの三人のうちの誰か?

 誤魔化すように明後日の方を向いていた俺は、メリルちゃんに言われて駆け寄ってくる隊員の人に視線を戻す。

 をお、もう目の前にいたよ。


『おはようございます。******』

『おはようございます』


 仕草とともに挨拶の言葉をかけてくるので、俺も胸元で手を重ねる挨拶の仕草をしながら挨拶を返す。

 女の人だ。街歩きで護衛についていた女の人?

 美人さんでスタイルがいいのは同じだけど、随分と顔の雰囲気が違わないか?

 化粧か? 化粧なのか? 女は化けるっていうしな。化粧って凄い。


「*****」

「なにか、ミたいモノは、あるのかと」


 俺が女性の化粧に関していささか失礼な感想を思いいだいていると、メリルちゃんが彼女の言葉を訳してくれる。


「その黒い甲殻と警棒が見せてもらいたいんですが」

「*****」

「*****」

「*****」

「ボウは、さわっては、イケナイそうです。きょかが、ヒツヨウだと」


 警棒は凶器扱いか。なんか玉とか飛び出すし、そりゃそうだろう。

 持たされてもビビルだけだしな。


 彼女は自分の衣装に付いた甲殻をきょろきょろと見回した後、さすがに着たまま俺に見せるのはまずいだろうと思い至ったらしく、少し離れたところで俺たちのことを伺っていた一団に声をかけた。

 呼ばれて、フル装備のままでいた若い一人が走ってくる。

 そして彼女は若いのからヘルメットを奪いとると、俺に手渡してきた。

 大学時代に使っていたシールドとバイザーのない、ちょっと古い型のオフロードバイク用ヘルメット。

 表面はプラスチックに似た素材感だが、なんとかいう生き物の甲羅らしい。

 この甲羅とドラゴンの皮とゴムっぽい樹液の積層構造と言っていたが、それほど厚みがあるではなく。

 ウレタンではないだろうが、似た感じの少し柔らみのある素材が中に張り付けてあるのもバイク用ヘルメットそのものだ。

 重さや触った感覚も、ほとんど変わらない。

 頭部を衝撃から守ると言う機能を追求すれば、まあ、同じものが出来上がるってことか。


「動力で走る自転車に乗る時被るヘルメットと言うものと、ほとんど変わらないです」

「どうりょくで、はしる、じてんしゃ、ですか?」


 俺の感想、そこに突っ込むか、メリルちゃん。


「ピストンの往復直線運動をコンロッドとクランクで回転運動に変えて、」


 メモ用紙に簡単な図を描いているところで、護衛の美人さんが警棒の手元を割って掲げてくれる。

 一旦メリルちゃんへの説明を止めて、美人さんの手元を凝視。

 ゴム弾と爆破魔法の詰まったカートリッジを割った中に詰めてって、まんま元込め式の銃じゃないか。

 銃身でブッ叩いて大丈夫なんだろうか。

 ああ、やはりあまりよろしくはないのですか。


「そうそう、このピストンの頭部分で爆発を起こしてピストンを押し下げるんですが、」


 ゴム弾を飛ばす爆破魔法というのが使えないかと思い描きながら燃焼室の説明を再開すると、フムフムと頷いていたメリルちゃんから一言。


「その、おしさげるちからは、かっちゃん、で、よいのではないですか?」

「かっちゃん?」


 なにそれ。


「“かっちゃん”というのは、マホウをコめた、にまいのイタで、あわさると、はねるのです」


 どうやら磁石に似た性質を持つ魔法石らしい。


「ジシャクとちがい、くっつかないと、はねないのです」

「ピストンのヘッドに使えそうな感じがしますね」


 燃焼しないから冷却系とか密閉とか考えなくていいから、随分簡素化できるんじゃないか。


「おこさまが、よろこびますが、カチャカチャとうるさいだけで、すぐに、あきられます。あと、すぐに、かたほうが、どこかへ、いってしまうので」

「ああ、子供向けのおもちゃなんだ」

「カチャカチャうるさいので、“かっちゃん”といわれます」

「かっちゃん?」


 俺が掌をパチパチと合わせながら“かっちゃん”“かっちゃん”と言っていたら、どうやら“かっちゃん”の部分は聞きとれたらしいく、ケイトさんが首を傾げている。


「***かっちゃん***」

「かっちゃん***」

「***かっちゃん」


 メリルちゃんとケイトさんの会話に、護衛の美人さんとメットを貸してくれた機動隊の二人も加わって“かっちゃん”“かっちゃん”やっていたが、やがてメットの人が何処かへ走っていく。


「なにか、かっちゃんをツカった、ドウグが、あるそうです」


 戻ってきたメリルちゃんが俺の頭に乗っかりながら言った。

 それを取ってきて見せてくれるらしい。



 機動隊の彼が抱えてきたのは、太い鉄パイプとそれを支える二脚。ありていに言うと迫撃砲だった。

 カチャカチャと組み立てた迫撃砲。妖精さんがパイプの中をのぞき込んだり、中に入り込んだり。

 砲身にそんなことして危なくないのか。


「このソコに、かっちゃんの、かたほうが、ありますですか?」


 砲身の口で戯れる妖精さんを押し退け、メリルちゃんが底をのぞき込む。


「あれ? ありませんな」


 底にはかっちゃんが入っていなかったらしい。

 のぞき込んだメリルちゃんが首を傾げている横で、機動隊の青年がポケットから丸い魔法石を取り出した。


「*****」


 機動隊の青年が、取り出した魔法石に砲弾の底をあてがう仕草をして、砲弾を動かす。

 砲弾の底が魔法石に触れると飛んでいくという説明をしてるようだ。


「*****」


 説明を続けながら彼が砲身に魔法石をセットしようとするのに気がついた俺は、砲口でバタバタしている妖精さんズをヒョイッとつまんで引き寄せる。

 そして一歩下がり。


「*****」

「もうすこし、さがるようにと」


 5メートルほど離れて観察していると、機動隊の青年が、砲身に砲弾を落しこみ、


 ヒューン


 風を切る音を立てて砲弾が飛び上がる。

 高さは、ビルの5階くらい。距離は20メートルくらいだろうか。

 思ってたより飛ぶな。

 これはエンジンの動力に期待できるんじゃないか。

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