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言葉を理解するのに堪能な人

 ガタガタと音がする。

 うーんとうなりながら身体を起こし、音のする方に上半身を回すと、窓を開くメイドさんと目があった。


『おはようございます』


 数少ない語彙で挨拶。


『おはようございます。******』


 こちらに向き直り、胸元で手を重ねるメイドさん。

 挨拶の言葉だけはかろうじて聞きとれる。仕草を真似てもう一度おじぎ。たぶんこれが挨拶の仕草なんだろう。頑張れ俺。

 さらには片手を広げてなにか指し示している様子。

 彼女の手の先、窓際に小さな机とソーラーパネル。

 日の当たる場所に、充電台を用意してくれたらしい。

 ありがたい。


 メリルちゃんがニコニコ顔でiPadを叩くので、まずは充電。

 充電台の上には妖精さん作のパネルもある。さてこれはどうしようか。

 うーんと、メイドさんが持ってきた洗面器のお湯で顔を洗いつつ考え、ふと思い浮かんだ。

 別に電圧の値が分かんなくても、対向に繋いで流れる電流の向きだけ分かればいいんじゃないか?

 電流計、電流計? あれか。フレミングの法則。

 磁石とコイルとバネ。


「メリルちゃんは、磁石って知ってますか?」

「むろんです」


 メイドさんに手渡されたフカフカのタオルで顔を拭きながら聞くと、当然のようにご存知で。

 じゃあ、金属加工の職人さんに鉄をもらって、電流計作るか。


 食事まで時間があるらしいので、リビングに移動してメリルちゃんと電流計の検討。

 磁石についてメリルちゃんと会話するが、たしかに磁石と磁力に間違い無さそうだ。

 フェライト磁石は普通に作られ、使われているらしい。

 へー。磁化は魔法でやるの。


 フレミングの左手の法則が電・流・計だから……。

 電流計のポンチ絵を描いてみせると、メリルちゃんはすぐに納得する。

 鉄は手に入る。銅線もOK。銅線の被覆材であるウレタン樹脂の構造式は化学の教科書に載ってたはずだし、いけそうだ。

 あれ? 電流の流れる方向の検知だけなら右手の法則だけでもいいのか?


 俺とメリルちゃんで電流計の相談をしていると、机の上を紙の束が流れてきた。

 エマさんと、新顔?の妖精さん二人が、コミックの出力を持ってきたようだ。

 新顔さんたちは、もしかすると昨日テラスに居た妖精さんかも知れない。

 特に紹介もないので軽くおじぎだけする。

 ラノベとかだと自己紹介とかする流れなのかも知れないが。どうせ聞いても覚えられないし。

 そういえば、昨夜の魔法使いっぽいお姉さんの名前も聞かなかったな。

 特に敬遠されていることもないのだろうが、言葉の壁が厚い。

 敬遠されてないよね? なかったよね?


 まあいい。電流計はニケ先生材料込みで相談するとして、コミックの翻訳をやろう。

 朝ご飯までに2枚くらい出来るだろう。

 昨日の続きで、文字を俺が読み上げるとメリルちゃんがそれなりに翻訳し、文字を板書するので、コピーに書き移す。

 メリルちゃんの書く文字が小さくて目が痛くなるのが難点だ。

 そして文字が合ってるかをメリルちゃんが確認。

 結構手間が掛かる。


 予定の2枚を作業し終え、ソファーの背持たれに身体を預けたところでメイドさんが蒸したタオルをくれる。

 目を覆うようにタオルを載せる。気持ちいい。

 メイドさん、ナイスアシスト。


「*****」


 人の近付く気配と供に、声をかけられる。


「ケイトさんがコられましたが、あさごはんのしたくが、できたのではないですか?」


 目元が温まり、いい感じにうとうとし始めてしまったところにメリルちゃんの声。

 俺は目を覆っていたタオルを取り去り、うーんと伸びをして立ち上がる。

 さあ、今日の朝ご飯は何かな。



 ケイトさんに付いて歩き始めたが、エマさんがいないっぽい。

 肩周りに妖精さんが二人飛んでいる。頭の上にはメリルちゃん一人の感じ。


「エマさんはどうしました?」

「さきほど、かもしどころへ、いきました。あさから、きんべんなことです」

「そちらの二人は?」

「ついでに、さぎょうを、ケンガクしたいそうです」


 良く分からないけど、まあいいか。

 なにか手伝ってもらうことが、あるかも知れないし。


 妖精さん三人を連れケイトさんに案内されるままに付いていくと、始めに朝ご飯を食べた鍛錬場に近い東屋へと導かれる。

 テーブルの上には三人分の朝食が用意されていて、席に付いていた魔法使いの女性が立ち上がり、胸元で手を重ねる。


「おは..よ..ご...ざい..ます」


 をお、いきなりの日本語。


「おはよう、ございます」


 俺は挨拶を交わし、目を泳がせていると、どうやら座って良しのジェスチャー。

 とりあえず座って、我ながらダメな笑いを浮かべながら、メリルちゃんに助けを求める。


「*****」

「*****」

「*****」


 しばらく魔法使いの女性と話をしているメリルちゃん。

 その間、俺はテーブルに並んだ炊き込みご飯のお握り?をしげしげと観察する妖精さんの姿にホッコリしていた。


「こちらのかたは、あたらしいコトバを、りかいするのに、たんのうな、かただそうです」


 メリルちゃんに声をかけられ、ビクッとなりながら意識を戻す。どうやら寝落ちしかけてたみたいだ。


「言葉を理解するのに堪能な人?」


 なるほど、冒険活劇の言語学者とか、スパイものの暗号解析担当みたいな感じの人か。

 一昨日街へ出かける前の日本語アピールが効いたようだ。


「よろし..く、お..ねがい、します」


 早速日本語で挨拶してきた。すごい。


「しばらく、コミックのほんやくとか、おてつだいするそうです」


 それは凄い助かる。


「よろしく!」


 俺もいい笑顔で挨拶を返す。

 正直、メリルちゃんの字が小さ過ぎて、目が悪くなりそうだったんだよな。

 それに、ケイトさんといい、この人といい、かなりな美人さんだし、人生楽しくなるぜ。

 で、名前なんだっけ?

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