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妖精の目と耳は誤魔化せない

 立ち上がり、軽く身体を伸ばしながら、控えているメイドさんに合図を送ると、脇からメイドちゃんが声を掛けてくる。


「*****」

「おふろに、いっているあいだに、このコミックを、こうしに、みせても、よいかと、いっておられますな」


 メイドちゃんが、用紙に出力したコミックをイケメンに見せても良いかというので許可をする。

 まだ翻訳が道半ばも大概だけど。

 日本風のコミックという文化が無いみたいだから、紹介くらいにはなるのか?

 メンドクサイことにならないといいのだが。


「タブレットからの出力は、誰でも出来ますか?」

「まあ、それなりの、さいがあれば、さほど、こんなんでもないかと」


 なるほど。画面コピーはそんなに難しい魔法じゃないのか。

 それなら、もしイケメンが他の出力を望むようなら、人手を用意してもらって、いっそ電子書籍全部の出力をしてもらうのもあるか。

 ……エロイのはどうしよう。

 はやく魔法を覚えたい。



 メイドさんに案内されたのは、昨日街歩きから帰ってきた時に連れていかれたリフレクソロジーの部屋だった。

 そういえば、食事前に風呂は入ったっけ。

 今日は椅子ではなくベッド仕様の台に、全裸になってうつぶせに寝るように指示される。

 日帰り温泉のあかすりか、スパの施術みたいだな。

 簡易パンツなどはないっぽい。

 とりあえず、腰周りにタオルだけ掛けさせてもらう。

 これ、普通は全裸で施術してもらうの? マジで?


 肩腰まわりを重点的にマッサージしてもらう。

 力の入った凝りをほぐす感じではなく、ホットストーンでなぜられているような温かさを触られている場所に感じる。

 とても気持ちいい。

 なにか魔法の道具でも使っているのだろうか。身体の外からではなく、精霊さんマッサージのような、身体の内側から何か働きかけがあるようなマッサージ。

 終わったら道具を見せてもらおうと思っていたのだが、いつの間にか眠ってしまい、起こされた時には全ての片付けが済んだ後、すでに身体をバスタオルで拭かれた後だった。



ボーッとした頭でフラフラとメイドさんについていくと、リビングっぽい部屋の奥、テラスにしつらえた10人掛けくらいのコの字をしたソファーに案内される。

 真中のやや奥寄りにイケメンが座り、奥の翼に魔法使いとその部下らしき二人。

 真中のテーブルに印刷されたコミックを広げ、なにやら談笑している。

 お供の二人は、さっきの三人とは顔ぶれが違う気がする。一人は女性だし。さっきの三人はまだ論文作成中なのだろうか。

 あと、エマさんと見知らぬ妖精さんが二人コミックの上を飛んでいる。


「あれは、やしきのにわに、いるものたちですな」


 林の中で光ってた妖精さんたちか。

 妖精もコミックなんて読むんだ。

 というか、なんでここに既にいるんだ? 情報早いな。

 先生の言ってた「妖精の目と耳は誤魔化せない」ってのは、あながち誇張でもないのかも知れない。

 妖精さんにお奨めすべきコミックってなんかあったかな。

 ラブライブのコミカライズは持ってないけど、女子高生がよさこい踊るコミックならiPadに入ってたかも。

 よさこいを踊る妖精さん。ラブリーでいいんじゃないか。

 ——あとメイドさんにはサンバを。



 俺は邪魔にならないよう、手前のソファーの外寄りにそっと座り、メイドさんから飲物を受けとる。


 ゲホ、ゲホ、ゲホ。


 まさかの炭酸飲料。

 ケイトさんを始めとしたメイドさんたちのサンバ大行進を想像してたら、とんでもない爆弾が来たよ。。

 ちょっと酸味のある、柑橘系の炭酸飲料だ。レモネードっぽい。


「しゅわしゅわですな」


 誰が教えたんだろう、そんな言葉。iPhone勇者か? ちょっと学が足りないんじゃないか、iPhone勇者。ゆとり世代か?


 そんな話をメリルちゃんにしながら外を眺めていると、ゲフンゲフンというちょっとワザとらしく咳込む声がする。

 だよね。絶対コミックの件で用事があって待ってたんだと思ってはいたんだよ。

 仕方がないのでイケメンたちの方へ席を少し動き、広げられたコミックに相対する。


「*****」


 バサリと広げられたコミックを指さしながら、イケメンがなにか言っているのだが?


「*****」

「*****」


 生憎と何を言っているのか分からないので、メリルちゃんにお任せし静観する。

 そうして時々メリルちゃんを介してされる質問に答えていく。

 大きく身体を動かし、身振り手振りで説明するメリルちゃんがとてもラブリーなのだが、イケメンには見えてないのが残念。

 魔法使いと、そのお供の女性には見えてるっぽいが、もう一人の男性には見えてない感じ。

 見えていないとすると、一概に“魔法使いは全員妖精が見える”というわけでないってことか。

 それとも無表情キャラなのか。

 いや、そんなはずはない。あんなラブリーな生き物を見てニコリともしないとは人としておかしい。



 質問の大部分は、さっき部屋でメリルちゃんに説明した範囲に収まっているようだ。

 あまりメリルちゃんからの問いかけがないので、ついおかしなことを考えてしまう。

 15歳くらいの女の子が“一人で夜営”するというのに驚いているらしいが。

 確かにあっちの世界でも、日本以外の国ではダメだろうと思う。

 あと、描写されたテントやキャンプイスの類にも興味があるようだった。

 化繊とかないとこれだけ軽量コンパクトなのは作成が難しいということかと思ったら、ポールに紐が仕掛けてある方が興味を引かれたようだ。

 簡単な構造図を描いて、金属管を二本と紐を用意してもらう。

 お供の女性の方が、少したてつけは悪いものの、金属管をあっさりと作成。

 さらにこの女性魔法使い、ゴム紐も作ってしまった。

 『魔法学校の実習レベル』とは思ったけど、マジそんなレベルで作れるとは。

 魔法、恐るべし。早く覚えたい。夢が広がリング。

 金属管の中に紐を通して畳んだり組み立てたりを実演して見せると感心した様子。

 なまじ魔法が使える分、こう言う機構も魔法で何とかしてしまおうと考えて難しくしているらしい。


 コミックという文化にも興味を持たれたようで、さらなる出力を依頼されたので、すでに出力してあるキャンプ物の残りとあと一作程度を出力することに。

 人手は用意してくれるらしい。

 OLが会社帰りに居酒屋へ行くのか、姉妹がご飯を作るグルメものでも出力すればいいかな。

 グルメコミックってレシピも載ってるし、分かり易いと思うんだが。

 でも良く考えたら、人手が使えるのってコピーの魔法くらいで、翻訳作業は俺とメリルちゃんがやらないとダメなんじゃないか?

 しかたない。この国の言葉の勉強にもなるだろうから、ちょっと気合いを入れて頑張ってみるか。



 冷えてきたのでイケメンにおいとまして部屋へ戻る。

 明日は金属加工と細工の職人さんが来るので、自転車の作成をするのにつき合うのだと。

 それって俺がつき合う必要あるのかなぁ。

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