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糸電話

 なおも続ける侯女ちゃんの言葉をメリルちゃんに翻訳してもらい、適当に頷くなどしつつ時間を持て余していると、メイドさん登場。


「*****」

「まだ、しばらく、じかんがかかる、そうです」


 メイドさんの言葉にテンションがだだ下がりな侯女ちゃん。

 クッションにグダーと持たれかかってしまう。淑女としてどうなんだろう。

 イケメンの仕事が終わらないらしい。

 昼間作ったものの対応であちこちと連絡をとりあってるの?

 早速あちらこちらへと人が走り回ってると。リアルに。

 それは申し訳ないことをした、のか?


「そういうときには、電話があると便利なんだけどね」

「でんわ、とは、なんですか」

「電話っていうのは、遠くの人と話しをする道具で、」

「ああ、“すまほ”とやらのことですな」


 俺の説明にすぐに応えるメリルちゃんだが。


「スマホも電話の一種だけど……」


 俺は何と答たらいいか考えながら、ふらふらと視線を漂わせる。

 と、クッションに埋もれながら、ちょっとふてくされた様子で飲物の入ったカップを口元でくるくる回している侯女ちゃんが目に止まる。

 そうだ。糸電話を作って見せよう。侯女ちゃんの気分転換にもなるだろうし。


 メモ用紙に絵を描いて、メリルちゃんに使い捨てのプラカップっぽいものを2個作ってもらう。

 糸はメイドさんに片ことの口コピーでお願い。すると淑女の嗜みなのか、待つまでもなく裁縫セットが出てくる。

 あっという間に道具が揃う。

 あとはメリルちゃんにお願いして糸をプラカップの底に張り付けてもらい、片方を侯女ちゃんに渡し、部屋の端に立たせて、もう片方はメイドさんに持たせ、部屋の反対端に立たせる。

 一旦侯女ちゃんの元へと戻り、侯女ちゃんの耳にプラカップの口を当てがい、メイドさんにカップを口に当て話してもらうようジェスチャーで示すが残念ながら理解されず。

 メイドさんの元まで戻り、キョトンとしているメイドさんの口元にカップをあてがうと「おはよ、ございま、す」と言ってみる。

 俺の言葉に応じてカップに向かって話し掛けるメイドさん。

 びっくり顔でプラカップをガン見する侯女ちゃん。

 俺がメイドさんの耳にカップを押しつけると、侯女ちゃんがカップに向かって話し掛け、メイドさんは驚いてカップを投げ捨てた。


 侯女ちゃんのカップに張りついて音を聞いていたメリルちゃんとエマさんがブーンと飛んでくる。

 凄い凄いと喜んでもらえている。

 俺はメイドさんの投げ捨てたカップを拾い、恐縮するメイドさんの耳に再びあてがいながら、糸電話の仕組みをメリルちゃんに解説。


「カップが拾った音声の振動をカップの底で受けて、糸に振動が伝わり、反対側のカップが震えて音声が再現されるんです」


 だから糸の振動を押えてしまうと音は伝わらないんですが、カップの底に工夫をして、振動を電気の強度に置き換え……

 俺の説明に、電気学のわかるメリルちゃんが頷いているので、俺は一つ提案してみる。


「音声の振動を魔法か電気の強弱に変換するような魔法具は作れないですか?」


 俺の提案にメリルちゃんは「うーん??」と首を傾げ、そのままくるくる横回転をしながら何事か思案をはじめる。

 聞いているのかはわからないが、とりあえず、フレミング右手の法則を紹介し、コイル型とコンデンサ型マイクの仕組みを解説。

 やがてメリルちゃんの回転が止まり、


「いしは、おもちですか?」


 メリルちゃんはフムフムと頷き、俺の取り出した魔法石を三分割すると、そのうちの二つをエイヤと叩いて平板に加工する。

 平板にのした魔法石に難しい顔をしながら図形を刻み、魔力を込めてるっぽいメリルちゃん。

 その間に残りの一個をエマさんが糸状に伸ばして行く。

 なんでサファイアが叩くと潰れて、引っ張ると伸びるのか、さっぱりわからない。

 とりあえず、魔法万歳。


 なにか堪能した感の溢れる侯女ちゃんとメイドさんが戻ってきたので糸電話を受けとりメリルちゃんに渡す。

 侯女ちゃんの下がっていたテンションは再び急上昇で、目論見通りだ。

 と、メリルちゃんが、プラカップの底に貼った糸を剥し、作り終えた魔法石と魔法糸に付け替えて、俺に渡してくる。

 受けとったプラカップの片方を耳に当て、もう片方を口に当て、「あー、あー、マイクテスト」とべたな言葉を発すると、だらんと垂れた糸を通して、耳元から結構しっかりとした声が聞こえた。


 改良型糸電話が、糸が垂れても、糸を物に当てて曲げても話し声が通じることを理解した侯女ちゃんとメイドさんは、糸電話を受けとるとなにやら話しながら扉の外へと旅だっていった。

 そんなに長い糸作ったの?

 舘の反対側までいける?

 そうですか。


 床に座り、ローテーブルに広げた紙に受話器と送話器によるハンドセットの図面を起こし、さらには交換手による電話交換から、番号とリレーによる交換機の仕組みをメリルちゃんに解説している辺りで、侯女ちゃんとメイドさんが、イケメンと共に戻ってきた。

 手にしたプラカップ片方と俺を交互に見てため息をつくイケメン。

 ?? なんかやらかした?

 俺の傾げた首にあわせて一緒に首を傾げるメリルちゃんとエマさんがチョー可愛い。

 妖精さんたちの可愛らしさにほっこりしつつイケメンを見上げていると、イケメンはプラカップに口をあて、耳にあて、口にあてるを繰り返す。

 程なくして、そろそろ腹が減ったなと感じはじめたあたりで、ゲッソリした表情の魔法使いと、ケイトさんが登場。

 魔法使いも俺の顔を見ると、深いため息をついた。


「*****」


 なにか言いたそうな魔法使いを制して、イケメンが一言。


「しょくじに、しましょうと」


 なんか良くわからんが、とりあえず食事だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] エンジニアが魂燃やすと知識チートってやつかな? 長い目で技術の獲得を目指してた侯子は対応しきれてないと言う事か
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