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竹とんぼが空高く飛んでいく。

 さて、次はいよいよグライダーだが、俺は閃いていた。

 翼をPETで作れば軽くていいんじゃないか。

 とりあえず木工さんに機体をつくって貰う。薄板二枚とスペーサーのドンガラ細工だ。

 幅は狭くてもいいかと思ったが、思いついて5センチ程の幅でつくって貰った。

 寝そべれば、なんとか妖精さんがもぐり込める大きさだ。

 そして翼。

 木工さんが細長い蔓を細工して組み上げたフレームに、PETの薄膜を先生たちが綺麗に張り付けていく。

 翼と機体そして尾翼を組み上げてバランスをとれば、翼幅1メートルほどのグライダーが完成。

 主翼前方の重心点でささえると、ピタリと止まる。すごいバランス。


 いつの間にか侯女ちゃんとメイドちゃんが机の縁に身を乗り出すようにしてグライダーを見ている。

 メリルちゃんたち妖精さんはグライダーの周りに集まって触りまくり、機体に乗ったりコクピットに入り込んだりしている。

 魔法使いに呼び付けられた若いの数人で、ダイヤモンド枝やナイロン生地を手にガヤガヤとやっていた一団も、いつしかこちらを伺っている。

 皆の視線から逃れるように、木工さんがジリジリと静かに席を離れていく…………


 さて、これのテスト飛行はどうしようか。

 果樹園の丘上とか良い感じの上昇気流がありそうだけど、あそこまでまた行くのは正直めんどくさい。


「こんな感じでフワーッと風を流せませんか?」


 翼を下から上に押し上げて、翼のたわみを確認しているメリルちゃんを呼んで、両手を前に差し出し、左下から右に向かって手を動かす。


「おちゃを、むらすほどの、じかんなら」


 メリルちゃんにお伺いをたてるとありがたい御返事。

 それじゃあ、どこか広いところで滑空テストといきましょうか。

 丁度イケメンが再登場したので、50メートルくらいの長さがとれる場所を教えて貰う。


「くるまを、ひいていた、きいろい、いきものの、くんれんばしょが、よかろうと」


 ああ、チョコボの。

 いわゆる馬術練習場が近くてそこそこの長さがとれるらしい。

 魔法使いの先導で、グライダーを手に馬術練習場へと移動開始すると、メイドさんを始めとする皆もゾロゾロと移動。

 イケメンが戻ってきたクロスバイクに乗ろうとしてお付きの人ともめてたけど、木工さんが速攻でミニサイクルのチェーンを修理することで、ミニサイクルに跨って走り去っていく。


 工作室の裏手に出て、雰囲気のある林を抜けると目の前に空き地が広がっている。ここが馬場らしい。

 馬場ではミニサイクルで先行していたイケメンが、人手を使い馬場の備品を片付けていた。

 風避けにもなっているのだろう、馬場は舘側に鳥舎?馬房?、長手方向を木立があり、横風は心配しなくてよさそうだ。


 開けた奥から来る風も今はない。妖精さんが流してくれる風は馬房に遮られていい上昇気流を生んでくれそうだ。

 俺は馬房前、馬場の長手方向の端に陣どり両手をあげてグライダーを構える。

 ふと後ろを振り返り馬房の中をのぞくと、チョコボがこちらを伺っていた。


「じゃあ、フワーッと、あっちからこっちに風を流してくださいな」


 先生が頷き、炭玉を操っていた妖精さんが馬場の向こう側へ飛んでいき、やがて凪いでいた風が、ふんわりと流れてくる。

 俺は徐々に強くなるその風の流れに乗せるようにして、差し出すようにグライダーを放つ。


「おお、うきましたな」


 風に乗って、グライダーが滑空する。


「これで、いかがでしょう」


 メリルちゃんが手を振ると風が下から上に流れ、グライダーが5メートルほどの高さまで浮きあがる。


「おおっ」


 という喚声が、イケメンを始めとした見学者から声が洩れた。

 グライダーを追いかけて、侯女ちゃんが走っていく。

 ああ、そんなに上を見ながら走ったら危ないよ。と思う間もなく案の定コケ、それにも負けずすぐに起き上るとグライダーを追いかけていく。

 侯女ちゃんを追って走る衛士、足早に追うメイドさん。居合わせた皆が一斉にグライダーを追って馬場を移動していく。

 随分と長く感じたが、実際には10秒たらずかもしれない。

 グライダーはゆっくりと滑空を続け、やがて高度を落すと馬場の向こう端へと降りた。


「かぜにのれば、どこまでもとびますか?」


 グライダーのもとへと駆けていく皆の後を追ってのんびりと歩く俺に、先生が聞いてきた。


「あんな動力もない機体でも、人をひとり乗せて500キロ。首都までの半分くらいは飛ぶそうですよ」


 ほほぅ。と感心した様子の先生。

 ふと気がつくと少し先、ミニサイクルでグライダーのところまで行って戻ってきたイケメンと、先を歩いていた魔法使いが、俺を待っている。


「*****」

「*****」

「*****」


 魔法使いが先生に何か話しかけ、先生が応える。


「ひとも、そらをとべますか?と」


 なるほど。俺はウンウンと頷いて言った。


「動力付なら、×△*ほどの大きさの機体に100人乗って、国の果てまで飛びます」


 グライダーの落下地点まで行く頃には、木工さんがグライダーを拾いあげ、機体の状態を細かくチェックしていた。

 落下の衝撃でバラバラになっているかと心配していたのだが、意外にも壊れている様子がない。妖精さんが良い感じに受け止めてくれたらしい。

 嫌にきれいに飛んでいるなとは思っていたが、妖精さんが風をきっちり制御していてくれたせいなのかも。

 もう一度飛ばして欲しいと騒ぐ観客に、手近にいた魔法使いのお供を手招きし、トラブル対応用に持っていた薄板を使って飛ばし方のレクチャー。

 といっても俺も別に判っているわけではない。吹いてくる風の強さを板の持ち上がり具合で判断して、失速しないように水平方向に押し出すことを心がけただけだ。

 正味は妖精さんが適当に気流の方を調整してくれたのだろう。

 身振り手振りを交えた、先生と魔法使いを介しての伝言ゲームで程良く教える。

 あとは気流制御の魔法で適当にヨロ。落ちたら君達の理解不足のせいってことで。


 無事初飛行を済ませた俺は、グライダーを魔法使いのお供に渡し、持っていた薄板を弄びながら考える。

 木工さんを手招きし板を小さく切って貰い、さらに見ぶり手振りを駆使して、板を互い違いで翼の形に削って貰う。

 出来た羽の真中に軸を通して貰えば竹とんぼの完成だ。

 竹トンボの軸を両手で挟み、一気に手を擦り合わせると、ブーンと音をあげて竹とんぼが空へと駆けあがる。

 皆がグライダーに気をとられているかと思っていたが、俺の動向をチェックしていた人も何人か居たらしい。


「おおっ」


 と喚声が、再びあがった。

 竹とんぼは5メートルほどの高さまであがり、ヒュルヒュルと侯女ちゃんの方へ落ちていったのを、お付きの衛士の一人がハシッと受け止めた。

 ねだる侯女ちゃんに、衛士がしばし竹とんぼを検分したのち手渡すと、侯女ちゃんが竹とんぼをもって走ってくる。

 竹とんぼを手にピョンピョン飛び跳ねる侯女ちゃんに、ジェスチャーで簡単に回し方を教える。

 衛士の一人が軽く飛ばして安全性を確認し、侯女ちゃんに手渡すと、竹とんぼをうれしそうに構え、ビュンと飛ばした。


 竹とんぼが空高く飛んでいく。


 メリルちゃんを始めとする妖精さんたちも、クルクルと一緒になって飛びあがっていく。

 俺が飛ばすよりも遥かに高くまで飛んでいくのが納得いかない。

 木工さんの周りでゴソゴソとやっていた衛士たちの間からも、何機かの竹とんぼが飛びあがる。

 竹とんぼなんてちょっとナイフ捌きがうまければ、あっという間に作れてしまう。

 ただ、こちらはさすがにバランスが悪いのか、明後日の方向に飛んでいってしまうが。


「あぁ」


 再びあがった喚声に、馬房の方を向くと、フワリフワリとグライダーが飛んできた。

 衛士とメイドさんの一行は、竹とんぼをいじりながら、グライダーの飛ぶ姿をじっと観察している。

 イケメン侯子はミニサイクルに跨り馬場を縦横無尽に走りながらグライダーを追う。

 その間を侯女ちゃんが竹とんぼを追って馬場を駆け巡り、拾ってはまた飛ばすのを繰り返している。

 さて、まだあと一つくらい、何か作れるかな。

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