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物理現象の観測は、魔法パワーが邪魔

 なんとかかんとか果樹園を抜け、でかい池を舘から挟んだ庭園まで戻ってきた。

 もう今日一日の運動は済ませた気分なんだけど、今何時頃かな。

 俺の独り言にメリルちゃんが空を見あげ、片手を上、片手を右少し下に。


「はちじまえかと」


 まだ二時間経ってなかった。

 体感時間に比して、お日様の角度が低いとは思ってはいたんだよ。


 庭園を抜け、池を跨ぐ渡り廊下の途中にある東屋で、メイドさんがスタンバイ中。

 この時間だし、イケメンとお嬢様はすでに朝食を済ませているのだろう。今日はここで一人で朝食をとればいいようだ。

 ベンチに座るとすぐに差し出された飲物は乳酸菌飲料っぽい。

 お湯の入った大きなタライが用意され、靴を脱いで足をつけろと。

 土埃を洗い落とし、ふくらはぎのマッサージ。気持ちいい。

 水圧マッサージの魔法は、メイドさんの握る円盤状の丸石に仕込んであるようだ。

 メイドさんの手捌きを見ていたいのだが、チラチラと胸元が目に入るのでためらわれる。

 声をかけて円盤を見せて貰うか悩んでいるうちに朝食の用意が整いリフレセット退場。

 ああっ、次の機会には見せて貰おう。


 ピクニックバスケットというよりもむしろ岡持ちのような箱に入れられて届けられた今日の朝食は、大雑把にいえば、レタスとスライスチーズと薄切りの鳥肉をフランスパンに挟んだバゲットサンドだった。

 それもトーストしたての熱さ。

 トロッととろけたチーズが食欲を唆る。

 メイドさんに持参の岡持ちを見せて貰うと、内部に棒状の魔法石が上下に二本づつ仕込んであって、それはまさにオーブントースター。


「この魔法石は、加熱用ですか?」


 メリルちゃんに尋ねつつ、箱の蓋を開けて内部を観察しながら持ち上げてみる。

 オーブントースターに比べるとずっと軽いし電源もいらないし、超便利。


「あかよりあかいねつをはなち、なかまでこんがりです」


 赤より赤い? もしかして遠赤外線仕様ってやつか?

 どうやら朝食のホットサンドは石釜焼き風らしい。


 朝食を食べ終えて食後のお茶をのんびりすすっていると、池の魚にチョッカイをかけていたメリルちゃんが戻ってくる。

 木工の人が来るのは昼過ぎだし、まだ結構時間があるけど、どうしようか。

 魔法の修行を一時間くらいするのはどうかな。


「よういちさんは、はじめてですから」


 うーん、と頭を傾げ、質問する俺の身体をペタペタと触りながらメリルちゃんが


「からだが、まほうのちからにおどろいて、はんにちほど、おやすみがひつよう、かもしれませんな」


 魔法の修行は明日からか。

 と、メリルちゃんが舘の方に顔を向けた。


「せんせいが、おいでになられた、ようです」


 それじゃあ一度部屋に戻ろうか。とカップを置いて立ち上がろうとすると、ものすごい勢いで舘の方から3体の妖精さんが飛んできた。


「#!!&%」


 先生をはじめ、妖精さんたちが荒ぶっておられる。


「$$!#!””」


 対するメリルちゃんも、一歩も引かない構え。

 うわっ。妖精さんズがギンッとこっちを睨んだ。

 えー。なんで!?


 まあまあと落ち着かせて話を聞くと、先生はチャージできないことを怒っておられたわけではなく、メリルちゃんの残したあまり品のよろしくない文字がNGだったらしい。

 ケイトさんも苦笑いしてたもんな。

 しかしメリルちゃんのお怒りもわからないではないので、先生にはとりなしをしておく。

 あのソーラーチャージャーは最大出力5Wあるから、このくらいの天気であれば、iPhoneなら2時間くらいで充電できるはずなので、次からは充電終わったらちゃんとiPadに繋ぎ直しておいてくれと。

 とは言っても、ソーラーチャージャーが一台しかないのは心許ないのは確か。

 しかりと頷く先生。

 そして先生に付いてきた妖精さんが、背中に背負っていた黒い薄板をドヤ顔で差し出す。

 なんとシリコンの単結晶基板だと。

 昨日、俺たちの外出中に、ソーラーパネルを先生なりに観察して用意していたらしい。



 妖精さんとのやりとりを見ていたケイトさんに、工作室と言う建物へと案内された。

 午後の作業で使う予定の建物だそうだ。

 大きめの教室くらいで、畳一枚分くらいの机が二台と大工道具やらが工作台が整えられている。

 移動の間にメイドさんにお願いして、iPadとソーラーチャージャーを持参いただく。


「単結晶シリコンの基板に、N型シリコンとP型シリコンを構成して」


 部屋の隅、日の当たる休憩スペースのようなところに陣取り、電子書籍化してあった半導体関係の教科書を開いて、大学で受けた講義を思い出しながら、ソーラーパネルの構造を解説。

 前の机に置かれた俺のソーラーチャージャーに群がり、指さしなどしながら俺の解説に頷く妖精さんズ。

 ソーラーチャージャーの充電端子にはちゃっかりiPhoneが繋げられている。


「これは、けっしょうが、ばらばらですな」


 ソーラーチャージャーのパネルを観察していたメリルちゃん。


「生産性を無視できるなら、厚膜の高純度単結晶シリコンが変換効率はいいんじゃなかったかな」


 妖精さんの理解力が半端ない。というか、妖精さんはシリコンの結晶構造とか電子の移動が見えてます?

 科学実験とか捗りそうで羨ましいんだけど。


「ようせいが、みていると、いとするほうこうに、げんしょうがまがるので、ていりょうてきな、かんそくが、むつかしいのです」


 なるほど。妖精ともなると魔法の行使が当たり前過ぎて、物理法則の観測中にも魔法が干渉しちゃうのか。

 普段から素で飛んでるしな。

 だから、そこそこ便利だけど妙に垢抜けないというか、科学的知見があやふやなんだ。

 魔法パワーも善し悪しだ。


 俺の半導体概論の解説にしたがって、お供の妖精さんの手により、クリーンルームも炉もないのに、ソーラーセルが出来上がっていく。

 妖精さんが何かの粉を撒きつつ水切りワイパーのようなものでシリコン基盤をなぜるだけで、基盤にダイオードが形成されていくのだ。

 金属結合とか共有結合とかを熱エネルギー使わないであれこれしちゃう感じか。なるほど。


 え? もう出来たの?


 妖精さんと同じくらいの大きさをした、ソーラーセルらしきものが、先生の手によって掲げられる。

 でもこれ、制御回路とかないけど、過電流とか過電圧とかだいじょうぶかな。

 単純な構造なんで効率が低いから、パワーが多過ぎることはないと思うけど。

 先生が作成したソーラーセルの出力端子とソーラーチャージャーの出力端子に棒のようなものをあてる。

 そうして、しばらく棒を眺めていたかと思うと、「まあこんなもんでしょう」とのたまう。

 いやでもちょっとと、電圧と電流に関しても講義。

 お互いに自分の機器は壊したくないんで、先生がエレクトリックマスターな妖精さんに相談してみるとのこと。


 しかし、折角作ったけど、iPhoneの充電以外に使い路あるのか?

 電化製品程度の道具なら魔法石で実現できているし、電子機器クラスになるとレベルが違い過ぎて手も足も出ない。

 残念だけど、他の使いみちは思い浮かばないなぁ。

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