魔法式フットマッサージャー
舘正面のロータリーに到着。
箱馬車が止まるとともに、スーっと座面が下がる。なるほど。
扉が開き下車すると、メイドさんが二人待ち構えていた。
ケイトさんの先輩らしき二十代と、なんか十代前半のお子様っぽいの。
二十代と思しき方はケイトさんと打合せをしているが、十代前半と思しきのは、俺の前でなんかわたわたしてる。
俺を見て、客室を見て、メリルちゃんを見て。
メリルちゃんを見て?
このお子様メイドちゃん、俺の後ろからフヨフヨと漂ってきた妖精さんズが見えてる?
「*****」
「*****」
メリルちゃんが前に出て挨拶をすると、メイドちゃんが何やら応える。
「*****」
「*****」
「*****」
「よういちさんは、なにか、にになるものを、かわれましたか?」
「にになるもの?」
「たぶん、かかえるほどの、にもつのことかと」
俺は記憶をそらんじながら、ポケットに手を入れ、魔法の杖と魔法石を掌に広げる。
「今日は最初の市場でおかしと、魔法具を少しだけだったかと」
「*****」
「*****」
メリルちゃんの回答にコクコクと頷いているメイドちゃんに、ケイトさんから声がかかり、メイドちゃんは箱馬車の後方へ駆けていく。
振り返ると、馬車の後ろ、座席の下にトランクがあったらしい。男性の使用人が何やら荷物を取り出している。
なにを買ったっけ?
取り出された小さな樽にエマさんがフワフワと飛んでいくので思い出した。
市場で味噌とか買ってたっけ。
メイドちゃんがクッションのようなものを受けとり戻ってきて、年嵩の二人に指示を仰いだのち、メリルちゃんに話かけた。
「*****」
「*****」
メリルちゃんがフムフムと頷き
「しょくじのまえに、ゆあみをどうぞと」
なるほど、外出から戻ったらまずはお風呂か。
というわけで、ケイトさんとわかれ、メイドちゃんと浴室を目指す。
「*****」
「*****」
「*****」
「*****」
俺を案内しつつ、メイドちゃんと妖精さんズが盛り上がっている。
話に交ざれずちょっと寂しい。
まあ、例え会話が可能だったとしても、JK、JCトークにおっさんは交ざれる気はしないが。
「そのには、でかけたときの、ふく、だそうです」
メイドちゃんの抱えているのは、神社のスパで着替えた服らしい。
メリルちゃんが、時々俺に話題を振ってくれる。
ちょっとドジッ子だけど、妖精さんはみんな、気が利くいい子たちだ。
舘の中を暫く歩いて、浴室についたらしい。昨夜の浴室とは別のところな気がする。
メイドちゃんにうながされて扉を潜るとやはり昨晩より少し狭い部屋で、部屋の真中にオットマン付きのリクライニングチェアー?がデンと置かれ、その向こうの幅の広い樋にお湯が流れている。
「しゃつとずぼんをぬいで、そのいすにすわるようにと。したぎは、つけたままで」
いわれるまま上下のシャツとパンツを脱いで下着姿となってリクライニングチェアーに座る。
メイドちゃんが服を片付ける変わりにバスタオル?をくれるので、とりあえず足元から腰のあたりまでかぶせる。
しかし、「まずは風呂だ」って言われたはずなんだが??
妖精さんズが樋にながれるお湯と戯れる姿にホッコリとしつつ、リクライニングチェアーの心地良さに意識を持っていかれそうになっていると、洗濯ものを抱えて奥の扉へ入っていったメイドちゃんが、俺より少し若いくらいの女性を2人連れて戻ってきた。
二人はホットパンツにTシャツと言ったいで立ちで、ヘチマタワシのようなものを持っている。
そして俺の左右の腕に一人づつスタンバイ
これは、あれだ。リフレとかって奴か。
二人は桶で樋からお湯を汲み、俺の肘から先にザバザバとかけて、手に持ったヘチマタワシを石鹸でブクブクと泡立ててから、丁寧に肘から先を指の間まで洗ってゆく。
二人とも結構お湯を被ってるはずなんだが、服が透けない。
妖精さんズも気になっているのか、二人の服を観察している様子なので聞いてみたところ、どうやら“防水の加護”とやらが付いているらしい。
何と不粋な。
いや、そんな詳しく説明してくれなくても。
濡れ透けを期待したのは確かだけどさ。
お姉さんのそんなとこ触ったりしたら、なんか俺が触ってるみたいに思われるじゃないか。
両手とも拘束されているからアリバイはあるけどな。
てなやりとりをメリルちゃんとしている間に、二人組は足元へとまわり、こんどは膝から下をザバザバとお湯かけ。
洗い終って、足の裏をフニフニされたので、足つぼマッサージかと身構えるもそんなことはなく、心地よいマッサージが足裏からフクラハギにかけて施される。
ちょっと街へ買いものに出かけた程度でこのサービス。
天国じゃん。
フワフワと良い気持ちになって脱力していると、フクラハギに掛かる力加減が、人の手にはあり得ない複雑な様相を帯びてきているのに気がついた。
体を少しばかり起こして足元を見る。
お姉さんの一人が俺の足先に座って、掌を足にあててる様なんだが……。
おぉ、なんかお湯の塊が足を包んでウネウネと動いている。
マッサージチェアーの足揉みローラーッぽい動きで、見ためはスライムが巻き付いてるみたいだ。
妖精さんズも感心した風に眺めている。
「りゅうたいせいぎょの、まほうですな」
俺が不思議そうに見ているのに気がついたメリルちゃんが寄ってきて、足元を指さして教えてくれる。
「あしおきに、じんがあるようですが、なかなかに、たくみなあつかいです」
オットマンにマッサージの仕掛けはすでにあるのか。
足揉みはあまり使ったことないけど、この水圧式のは妙な硬さがなく、すばらしい。
そして、お姉さんは一流の魔法使いのようだ。




