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懐中電灯ストラップ付き

 さあ、これで石も決まって、と杖のデザインに思いを馳せようとしたら、カウンターの上にずらりと青い魔法石が並べられた。

 え? なに?

 妖精さんズが早速石のまわりを飛び回り、ペタペタと触りながら何やら品定めを始めている。


「どれもいしのむきはそろっていますな。このくらいのいろめのいしは、もれにくいですが、こめにくいです。こちらはもれやすいので、ひもちはわるいかと」


 石の向き? 結晶方位のことか?

 あと色が薄いとか濃いとか。色ムラがどうとか。

 決まったのは石の色だけだったらしい。


「俺がムムムと魔法を込めて、エイヤッとやるのには、どれがいいですか?」


 自分でも嫌になるほどアレな質問だ。適当過ぎるぜ。

 そしてそんな俺の適当な質問に、メリルちゃんとエマさんが腕を組んでムムムと考えはじめ、そのまま二人はスーと近寄ってきて、おもむろに俺の頭に手を充てると、なんかムニャムニャとつぶやく。

 妖精教師さんがそうやって、俺に才能があるとか見極めてたっけ。


「このくらいの、いろめのいしで、」


 カウンターに並んだ、サファイアならお値段で上位二割には入りそうな色合いの魔法石を示しながらメリルちゃんが言う。


「はじめは、よういちさんのおやゆびのさきくらいで、じゅうぶんでしょうが、じきに、ゆびいっぽんぶんくらいは、かるくいくのではないでしょうか」


 エマさんに指示されてか、店員さんがメリルちゃんの示した色目の魔法石を十本ほど出してくる。

 きっちりと長さの揃った円柱状の魔法石。太さが3サイズあるみたいだ。

 長さといい太さといい、まさに単三か単四の乾電池。

 こうして加工されたのを見ると、ただの色つきのガラス棒って感じで、宝石というイメージは一気になくなった。

 なんかグッと身近になって安心する。

 でも、多分かなりお高いんだと思う。店員のやる気が違うから。


 その中の一本をエマさんが叩いている。


「どれもそれなりのしなですが、エマがすすめるしなが、いちばんよさそうですな」


 頷きつつも「エマもなかなかみるめがありますな」と何故か上から目線のメリルちゃん。

 俺は選んで貰った魔法石とその隣の魔法石をまじまじと見比べるが、まったく違いがわからない。

 選んで貰った奴の方が色が均一な気もするが、単に光の加減のせいとも思えるし。


「はつどうたいは、うすめでよろしいかと」


 発動体?


「そちらのいしは、ためるにはよいですが、だすにはむきません」


 どうやら呪文一発でスパッと魔法を打ち出すなんてのは上級者の技のようだ。

 俺みたいな初心者は、普段地道に充魔しておいて、必要な時に発動用の魔法石を介して打ち出すんだと。

 メリルちゃんと話している間に、透明なおはじきのような魔法石が、ジャラジャラとカウンターに並ぶ。

 もちろん善し悪しなんてさっぱりなので、メリルちゃんとエマさんにお任せ。


 選んで貰った蓄魔用の魔法石と発動用の魔法石を眺め、俺は半紙一枚とり出し一本の杖を描く。

 底のついた円筒形の筒にバネを詰めて、蓄魔用の魔法石を筒に入れて、発動用の魔法石で蓋をする。

 ようするに、魔法石を電池に見立てて、発光部を発動用の魔法石にした、ポケットサイズのLED懐中電灯だ。

 握り易いし、発動のイメージも湧き易いし、良いんじゃないか?

 ついでに蓄魔用の魔法石と発動用の魔法石との間に物理スイッチもつけてと。


「こんな杖はないですか? これが蓄魔用で」


 俺の説明に、ほうほう、と頷くメリルちゃん。

 その説明を横で見ていた店員さんが、丁度俺の考えていたようなポケットサイズの懐中電灯っぽいものを出してきた。

 やっぱりあるんだ。

 いや、そっちのカラフルなのはNGでお願いします。

 頭に星型の飾りのついた“魔法少女の杖”っぽいのは断って、シンプルなミニマグっぽいのを受けとる。

 その魔法少女スティック、絶対に召喚者の発案だろ。

 下げられていく派手な杖を横目に、ミニマグ型杖をチェック。

 んー。これははめ込み式か。一度組んだら分解しにくい仕様だな。ON/OFFスイッチも無いし。


 どうやらこういうものを買う人はデフォで魔法が堪能なせいか、蓄魔用の魔法石を交換するとか、ON/OFFを物理スイッチでやるとかは考えていないっぽい。

 蓄魔用の魔法石を収める本体と発動用の魔法石を収める頭を、ねじ止めにするだけで交換できるのに。

 ああ、でも持ちながら充魔出来るならスマホと一緒で蓄魔用の魔法石は交換できなくてもいいのか。

 何回でも繰り返して使えるって言ってたし。

 しかし俺は充電を忘れがちなので、モバイルバッテリー持ちの、デジカメは乾電池仕様派だったんだよ。

 まあいい、魔法石の交換と物理スイッチが必要かどうかは、俺の魔法の技量を確認してから考えよう。

 案外、異世界パワーで超強力な充魔能力とか、変幻自在な発動能力とかあるかもしれんしな!

 ね、メリルちゃん!


 ……なんかメリルちゃんの目線が生温かくも優しげなのが心に刺さる。


 選んで貰った魔法石と杖を組み上げているのを待つ間、さらに数個づつ、魔用の魔法石と発動用の魔法石をバラで買って貰う。

 魔法の運用に関しては、いくばくかのアイデアがないでもない。

 こいつらで試作、実験して、一山当てたいものだ。

 この世界には特許制度とかあるのかな。

 まあ、なくても侯爵家の看板があれば、そうそう残念なことにはならないだろう。

 夢が広がる。


 組上がった杖がトレーに載せられて恭しく差し出されてきたのをみて、ふと思いついて、手首を通す紐を杖のお尻につけて貰った。

 皆には「そんなの杖じゃない」と微妙な顔をされたけどね。

 でも、仕上がった紐を手首に通して杖を構えて見せると、「意外と便利そうだ」と納得された。


 随分と時間が掛かったけれど、初心者用の魔法杖セットとバラの魔法石を数個買って貰い、高級魔法道具の店を後にする。

 早く帰って魔法の詰め方を教えて貰わねば。

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