流行りの魔法杖はサイリウム?
奥の高級宝飾っぽいのは恐れ多いので、まずは傘立てに刺さっている杖とかのところへ行ってみる。
古木の枝か根の形を整えた風の、120センチくらいの、いかにも魔法使いの杖って感じの一本を手にとって、
重い。超重い。それにバランスが酷い。頭が重過ぎ。
こんなの片手で支えられない。
というか、重くて傘立てから引っこ抜けないレベル。
これを片手で振り回して「風よ雷よ」とか、どんなマッチョだ。
どうりでハリポタの杖が、タクトくらいしかない筈だよ。
「つえなんて、かざりですからな」
杖の頭に乗っかってウムウムとつぶやくメリルちゃん。
飾り……。
「つえをつかうのは、げんしょのむかし、まほうをつかうかたがたが、えだにまほうせきをうめてふったら、かっこよかったのが、はじまりですな」
格好良かった……。
またまた不穏当な発言。
「古い樫の枝に魔力が流れ易いとかは?」
「しょくぶつは、ほそながいせんいしつからなっているので、まほうをながすにはよいとされますが、」
要するに、植物の繊維質構造は一定方向に魔法を流すには確かに効果があるが、実際に魔法を発動するのはエネルギー体である魔法石で、それを制御する魔法式は杖を握った手から杖の表面を伝わるだけで、内部の材質には関係ないってことらしい。
埋め込んだ魔法石と繋がりが出来ると、むしろ繊維質を介して魔法が洩れ出てしまうとか。
「まほうをはなつだけなら、こちらのけいぎんが。なぐりあいもあるなら、こちらのはがねがよろしいかと」
メリルちゃんが、壁に掛かった幾つかの杖を指し示してくれる。
軽銀てアルミのことだっけ?
あと殴り合いってどゆこと?
「このすこしおたかいのは、まほうせきまわりのはがねがけっしょうのほうこうもばらばらで、もれにくいですな」
どうやら、杖、というか魔法石を填める魔法具?の善し悪しは、魔法石が何個填められるかと、それぞれを干渉なく扱えるかってことにあるらしい。
何個填められるかは物理的スペースの問題で、それを干渉なく扱えるかどうかが、表面の模様に寄って変わるようだ。
あと、魔法石をはめ込んだ部分の結晶や繊維の方向が変な方向に揃っていると、魔法が洩れやすいので良くないとか。
魔法洩れにアモルファス材とか挟んだらどうだろう。
パスケースにICカード干渉避けとかいう薄板が挟まってた筈だが、あとで見て貰おう。
メモ帳を取り出し『アモルファス』とメモ。結構メモが増えてるな。
「せいぎょしきのながれるどうろのできで、つえのせいのうはきまります」
俺がメモをするのを待って、ケイトさんを交えてのメリルちゃんの説明が続く。
性能を決めるのは、表面に刻まれた制御魔法式の導路の出来云々。
一方で魔法具の値段は性能以外に、刻まれたデザインの善し悪しとか、工房や細工師のブランド価値で大幅に変わるらしい。
ブランド云々はケイトさん情報。
メリルちゃんは、「にんげんさんのかちかんはおもしろいですな」とか言ってるけど、ラブライブにはまる妖精さんの価値観も似たり寄ったりだと思う。
結局、魔法の杖は、争いの多かった昔はともかく、今となってはブランド物の鞄とか時計とかと同じ扱いのようだ。
そして、でかい樫の杖とかは、古くさいらしい。
まあ、あれだけ重くて扱い辛ければ、廃れるのもしょうがない。
最近の若者に流行ってるのはこちらです、と連れていかれたところにあったのは、
「これってサイリウムじゃねーの?」
親指ほどの台座の先端に細長い魔法石を繋いで、三本程度を指の根本に挟んで振るとか、オタ芸やってるんじゃないんだから。
「はつどうぶはせまいほうがいりょくはありますが、じみになりますからな」
もともと戦争とか魔物退治とかをガチでしてた時代は、効率優先で、魔法の収束率が高く発動部の狭いものが好まれていたらしい。
でもそういうのはレーザーポインターと一緒で、見ために派手さがないため、誰が魔法を使ってるのかわからないのだ。
それで、自分の功績をアピールするためとかもあって、見ため派手なサイリウムみたいな光り方をするのが好まれるようになってきてるんだと。
まあ今時、戦争も魔物退治もないらしいんで、本音ベースでは、魔法使いアピール(カッコいい=モテたい)100%らしい。
「どらごんとて、のうかんをつらぬけばしにますが、わざわざまほうのつるぎでたたききるのはかっこいいからです」
まあ、レーザー一発で打ち抜けるなら、硬い皮をチクチクやる意味はないよね。
「せんそうまっき、おたがいのあしもとに、すなじごくをつくりあって、ひどいありさまでしたな」
大軍が押し寄せてくる先に、いきなりの土魔法で落し穴+砂を詰めてあり地獄&生き埋めとか、酷過ぎる。
「でも、実際に仕事してるのは魔法石に詰まった魔法エネルギーで、魔法使いは何を?」
「はんようのまほうせきにつめられたちからを、どうふるうかは、まほうつかいのせんすにかかってますな」
ほほう。
「せいかつようのまほうせきは、はつどうないようが、まほうせきにきざまれていますが、このあたりのは、はんようなので、つかいてしだいです」
電灯とかウォシュレット用の魔法石は、そのものが用途別になっていて、直に魔方陣が刻んであるってことか。
家電品はホントに家電品だったらしい。
あっちがランタンだとすると、こっちはモバイルバッテリーな認識でOK?
あれ?
魔法石の数と制御魔法式の導路細工が重要なら、杖よりも盾みたいな方がいいんじゃない?
「それはこちらにありますな」
と連れていかれた先にあったのが、
「手鏡……」
カッコいい魔法使いアピールは無理そうな、手鏡みたいなもの。
魔法石が入り乱れるでかい盾もあったけど、その重さにびくとも動きませんでした。




